国際連合マーク障害者権利条約を考える      


■速報  国連・第3回特別委員会(ニューヨーク国連本部) 2004年5月24日〜6月4日(終了しました) 

 ○第3回特別委員会報告 Advance text of the report of the Ad Hoc Committee (A/AC.265/2004/5)

写真動画
第3回特別委員会 (右の写真は動画です)
写真
NGOコーカスの様子
ふじい かつのり
藤井克徳さん
たまむら くにひこ
玉村公二彦さん

藤井克徳さん (きょうされん常務理事、日本障害者協議会常務理事) ニューヨーク日記   きょうされんのホームページ
 **きょうされん大会を終えて5月31日からニューヨーク入りした藤井さん(同行する佐野さん協力)からメールlをいただきましたので掲載します**

●6月4日(最終日)
■7月中に意見集約、8月22日ミーティング
 最終日、朝のNGOコーカスミーティングの進行役は、レバノンのモハメド・タラウネ氏(最近まで「障害者の機会均等化に関する基準規則の特別報告者」の補佐をしていた)が務めた。主な話題は、@前日の「NGO排斥騒動」の評価、A条約における「女性障害者」の位置付け方、B第4回特別委員会(8月23日〜9月3日)へ向けてのコーカスとしての準備、などであった。
 開会は、少し遅れて8時45分となった。司会より、「昨日の結果をどう見るか」と口火が切られた。IDA(国際障害同盟)の主な顔ぶれから、直接または間接に接触したガレゴス議長や議長団(議長と4人の副議長で構成)の様子が伝えられた。出された主な意見は、「前日のガレゴス議長によるNGOを最終日の公式会議に参加させないとする提起は議長の本意ではなさそうである」、「いくつかの国が議長にプレッシャーをかけているようだ(トーマスRI事務局長からは米国、中国、フィリピン、インドなどの国名が挙げられていた)」、「議長はかなり苦しい立場にあるようだ。もしかしたら続けられなくなるのではという見方もある」、などである。全体としては、ガレゴス議長に対しては好意的な意見が多く、第4回特別委員会に向けては「NGOの立場をさらに強めていかなければならない」と合わせて、「議長を支えていかなければ」との見解で一致をみた。
 「女性障害者」の位置付け方をめぐっては、韓国のNGO代表から「固有の条項を追加すべきでは」との意見が述べられた。これを支持する意見はなく、出された何人かの意見は「女性や子どもの問題は非常に重要である。だからこそ、個別の条項に留めるのではなく条約全体に反映すべきである」というものであった。
 残りの時間は、第4回特別委員会への対応に振り向けられた。具体的には、8月22日(特別委員会開会の前日)のコーカスミーティングをどう開催するか、ということであった。決められたことは、ミーティングは「8月22日(日)」とし、時間は午後1時〜8時までとすることとした。内容については、条項別に詰めた検討を行なうこととした。それにあたっては、今回の草案文書を元にグループをつくって事前調整を行なうことになった。担当責任者を置いてのグループ数については、「19のグループに分けるのがどうか」というのがステファン(EDF事務局長)らの提案であった。これが支持されることになり、どのグループを誰が担当するか、この調整に入っていった。日本の参加者からは、DPI日本会議が「平等及び非差別(第7条)グループ」を、また長瀬さんが「教育(第17条)グループ」に入ることを表明した。なお、意見集約の期限は7月30日とした。
 この日のミーティングは朝の時間帯だけでは間に合わず、昼食時の1時30分から約1時間追加された。8月22日のことを確認し合って散会となった。日本からの参加者は、金、大窪、長瀬、藤井、佐野。
 
■一通り草案文書を審議して終了(第25条モニタリングを除く)
 第3回特別委員会の最終日は、定刻より少し遅れて10時25分のスタートとなった。開会冒頭から、「トラブル」発生。何となく、前日の「NGOの公式会議参加拒否議論」の流れが関係しているような雰囲気だった。
 前日の議長による最終日の予定は、第1条(目的)ならびに第2条(原則)について、第1週目の協議に続いて2回目の協議を行なおうというものであった。
 この予定に水を差したのはアフリカ勢であった。アフリカ諸国を代表する南アフリカ共和国から、冒頭でいきなり「まだ協議されていない前文を協議すべき」との意見が出され、これをめぐって応酬が続いた。EUやメキシコなどからは、前日に議長から提案があったとおり「第1条、第2条の協議を続けるべき」と主張がなされた。アフリカ勢を加勢する国も少なくなく、結局議長は休会を宣言。20分間ほど議長団で調整が図られ、11時半に再開となった。議長から、「第1条ならびに第2条の協議は行なわない。本日の協議は前文から入る」旨が述べられた。多少不満気な意見もあったが、これを支持する意見が続いたあと協議再開となった(議長にはかなり強い権限が付与されている様子で、表面的にはすんなりと再開した感じだった)。
 前文も段落ごとに各国からの発言を求めるという形で協議が進められていったのだが(一貫してこうした協議方式)、様々な意見が出され、まさに「延々と続く」、そんな印象であった。
 これ以降は特別混乱もなく、協議は17時40分に終止符が打たれた。議長より、第4回特別委員会が8月23日より開会されることが付け加えられ、第3回特別委員会の閉会が宣言された(拍手)。

 6月4日 Daily summary of discussions on 4 June 2004  


●6月3日
■「NGOの参加認めず」の議長見解撤回
 淡々と進められたこの日の協議だった。第23条(社会保障及び十分な生活水準)の残り分と第24条(文化的な活動、レクリエーション、余暇及びスポーツへの参加)までで12時半となった。このあと、争点の多い最終条項である第25条(監視)に踏み込むかどうか注目されていたが、事前の予想通り第4回特別委員会に持ち越されることが議長より告げられた。余った時間については、条文案にはなかったが、しかし、発展途上国を中心に関心の高かった「国際協力」に振り向けられることになった。この「国際協力」の協議については、昼食を挟んで16時40分頃まで続けられた。
 ドラマは、この時点で起こった。特別委員会のガレゴス議長(エクアドル)より、最終日に当たる明日のスケジュールと合わせて、次のようなことが告げられた。「最終日の協議は政府間で行ないたい。したがってNGOは傍聴を含めて参加できない」と。このあと、40分間余にわたって各国より猛烈な反論が続くのであった。
 まず先頭を切ったのが、EUを代表してのアイルランドであった。「議長のNGOが参加できないとの見解には驚いた。専門性や洞察性についてはNGOから学んできたではないか。まとめの協議にあたってもNGOの参加を認めるべきである」に続いて、「もしNGOの参加を認めないというのなら、先ほど議長より提案のあったファシリテーター(条項別のまとめ作業の担当国)の役割を降ろさせてもらう」(カナダ、この発言に会場から大きな拍手)、「ここまでNGOと一緒に協議をしてきたではないか。国内の法律や制度も共につくってきた。当然国際条約も力を合わせていきたい。NGOに扉を閉ざすのはおかしい」(ニュージーランド)、「本条約のスピリット(精神)からいっても、NGO抜きでの協議は考えられない」(タイ)、「すべての協議の過程にNGOが参加すべきでは」(イエメン)、「フレームワーク(大枠)づくりからNGOの参加が必要では」(イスラエル)、「NGOの参加問題についてはもう議論の必要がないのでは。当然参加すべきである。本条約の必要が提案された総会での議論を想起しても、また作業部会(2004年1月)の貢献からいっても参加できないなどは論外である。現に不参加を支持する国はどこもないではないか。本件についての討論を打ち切るべきである。」(メキシコ)、などからいずれも議長発言への反論が続いた。
 17時25分の時点で、議長より「15分間ほど休会したい。改めて、NGOの参加問題について結論を出したい」と発言があり、休会に入った。(休会直後より、会場内のあちこちで域内別、国別でミーティングが持たれていた)。
 結局、再開したのは35分後の18時ちょうどであった。ガレゴス議長より「18時になるとマイクもエアコンも切られてしまう。通訳も帰ってしまう。明日の特別委員会については、すべての人びとに開放する」と告げられた。会場から再び大きな拍手が起こり、この日の協議は終了となった。

■ NGOコーカスにメキシコ大使ゲスト参加
 毎日交替するコーカス(打ち合わせ)ミーティングの進行役であるが、この日はRI(リハビリテーション・インターナショナル)のトーマス・ラガウォル事務局長が勤めた。予定通り8時30分に開始した。
 この日の話題は、残り2日間についてNGOとしてどう対応していくか、第4回特別委員会への準備をどうするか、これらに重点が置かれた。また、ゲストとして参加してもらったメキシコ大使ならびに南アフリカ共和国大使などに、後半でスピーチをもらうことになった。
 モニタリングメカニズム(第25条)については、第4回特別委員会に持ち越されることになったとの観測で一致した。「持ち越されたことについてはよかった。しかし重要な問題でありコーカスとしても見解をまとめるべき」、ビーナス(DPI)などからこのような意見が述べられた。また、キキ(世界盲人連合)から「国際協力について情報があったらほしい」とあり、この日の後半で話題になった。
 コーカスとしての第4回特別委員会への準備については、その一環として特別委員会前日の8月22日に「コーカスミーティング」を開催することが確定的となった。会場はニューヨーク市内で、50人から100人規模。熱心な政府にも参加を呼びかけても、ということになった。このあと参加者から「当日だけでは不十分で、メールなどで事前の意見交換が必要では」、「広範囲に及ぶと収拾がつかなくなるので、メール利用はある程度絞らないと」などの意見が出された。進行役のトーマスより、最終日にもう一度8月22日の持ち方について協議する旨が述べられた。
 最後に、ゲストからスピーチがあった。まず、メキシコのアルバ大使から「段階が進むにつれ重要さが増している。各国政府の役割が大切になっている。」「協議の進め方としてグループ方式もあるが透明性を確保することが重要。協議の効率性もいいが、透明性を失ってはいけない。8月の第4回特別委員会は実質的な会議になると思う。もしかしたら、3月、5月、7月、こんなペースで特別委員会が開かれることになるかも。なお国際協力についてメキシコ政府は高い関心があり、独自のペーパーを提案したい。」とあった。また、南アフリカ共和国の大使からは「国際協力を重視している。このままではアフリカからは財政上の理由からNGOの参加は難しい。協力を考えてほしい。もし参加できたとしたらあたたかく迎えてほしい」との発言があった。
 日本からの参加は、前日に続いて長瀬、藤井、佐野。参加者数は約50人であった。

■会議の概要
○第23条(社会保障及び十分な生活水準)
・「モニタリングの活用を提案(ILO)」「社会保障の翻訳が違う(レバノン)」「これまで述べられてきたように、社会保障と十分な生活水準を分けるべきである。場合によっては、タイトル変更も必要だ。「生活水準」の方が大きな概念。(国内人権機関)」「重度・重複という文言を削除してほしい。概念が曖昧である。(世界精神医療ユーザーサバイバーネットワーク)」「重度・重複は削除、医療モデルになってしまう。(DPI世界会議)」

○第24条(文化的な活動、レクリエーション、余暇及びスポーツへの参加)

・「宗教に関する記述をここに入れるべきではないか(ケニア)」「ここでの権利は、明確ではないが、内容は重要だと考えている。文化的な活動への参加は、インクルージョンの実質化でもある。」「『国際法の規定を尊重』という文言を、『国際法の規定に従って』と変更すべきである。アイデンティティに関する記述は第2条に入れるべきである。日本では障害のあるなしに関わらず、スポーツアクティビティに参加している(日本)」「ケニアの意見を尊重したい。宗教や宗教的活動を重視することを入れるべき。(バチカン)」「EUではなくアイルランドとして、ケニアの発言尊重宗教の大切さに同感したい。」「ケニアの意見をサポートしたい。モスクや教会はアクセシブルではなく、問題だ。いくつかの宗教団体によっては、障害者が参加しにくいところがある。(ウガンダ)」

■日本セミナー開催
 6月3日(木)13時15分から14時45分まで、会議室AにおいてJDF準備会主催のセミナーが開催された。参加は全部で約50人、海外のメンバーが日本人参加者の倍以上であった。
 司会は東大の長瀬さん。前半は、JDF準備会の東弁護士、ESCAPの長田さん、オーストラリアのアンドリュー・バーンズ教授、インド国内人権機関のアヌダラ・モヒット氏の4人が「合理的配慮」をテーマにそれぞれの見解を述べた。
 後半は、今回の特別委員会において日本政府を代表して発言している外務省の角参事官から、あくまで個人の見解と前置きされた後、合理的配慮についてのコメントがなされた。
 角参事官は合理的配慮について、「ガイドライン的なものになるのか、それとも法的根拠となりうるのか、そもそもその範囲を誰が決めるのか」と問題提起をした上で、「合理的配慮については当初はガイドラインとしてスタートすることになるのではないか。ただし、時間の経過の中で法的根拠となりうる可能性はある。あくまで、何をもって『合理的』なのかがはっきりすればの話であるが。」と述べた。
 その後、GO・NGOともに活発な意見が出され、「合理的配慮」を条約の中に位置づける必要性があらためて認識された。

 6月3日 Daily summary of discussions on 3 June 2004


●6月2日
■NGOコーカスミーティング
 この日も朝8時半からNGOコーカス(コーカスとは、組織体同士のつながり)のミーティングが行なわれた。国連本部地下一階のルームAには、8時20分の時点で馴染みのステファン(EDF事務局長)やフランク(オーストラリアの障害NGO)が到着していた。
 コーカスミーティングの性格は、「NGO戦略会議」といった趣で、それぞれがロビー活動などで得た情報の交流を主体に進めるのであった。フランクの進行役によって進められたこの日のミーティングはいくつかあったが、たとえば@「モニタリングメカニズム」(草案第25条)の協議に際しNGOを排斥しようとする動きが見受けられるが、これにどう対処すべきか、A今後のNGO活動にアラブやアフリカなどをどう巻き込んでいくか、などが話された。
 とくに明確な結論が出たわけではないが、@については「問題のある国」に対して徹底したロビー活動を行なうことを確認し合った(具体的には、中国、パキスタン、インド、イランなどに対して)。Aについては、ミーティングに参加していたレバノンなどからアラブの動きが伝えられ、アフリカを含めコーカスとしてもアラブやアフリカ諸国との交流を深めていくことが方向付けられた。
 なお、意見交換の過程で、第3回特別委員会終了直後から本質的な動きが展開されるのでは、との観測が出された。ステファンより、GOの動きに対応していくための一つとして、来る第4回特別委員会(8月23日〜9月3日)の前日に当たる8月22日(日)にコーカスとして集まるべきでは、こんな見解も示された(これについては確定はしなかった)。
 公式スケジュールが始まる10時直前に終了した。日本からの参加者は長瀬、藤井、佐野であった。参加者数は開始直後は20人程度であったが、終わりごろには50人余になっていた。

■会議の概要
○第21条(健康及びリハビリテーション)
・昨日に続いて、GO(ILOなど国連機関含む)およびNGO(リハビリテーションインターナショナルなど)の大多数は、健康とリハビリテーションを分けた条文とすることを支持した。

○第22条(労働の権利)
・「競争力のない人も一般労働市場においてサポートされる文言を(チリ)」「(すでに採択されている)ILOの条約を参考にすべき(シエラレオネ)」「原案を支持、ただし政府の責任と企業の責任を明確に(韓国)」「ワークショップを奨励、その生産性の促進を(バーレーン、EDF)」「実効的な法律整備、罰則規定が必要(ナミビア)」「treatmentやabilityといった文言を削除(南アフリカ共和国)」「(障害のある人の)家族に対する雇用の保護も必要(イスラエル)」「『合理的配慮』は難しい、新しい概念であり、これが法律的根拠になるのか、またはガイドラインに留まるのか、これの行方によって今後の対応を考えたい。また、(h)の「法律を通じて」は削除、(j)の『職場及び労働市場における障害のある人に対する固定観念及び偏見と闘うこと』は労働の場に限定して掲げる内容ではないので削除(日本)」「この条文をもっとシンプルに(ニュージーランド)」「『公共部門』だけではなく、民間における雇用についても言及を(レバノン)」などが出された。
※ニュージーランド、EUなどからペーパーあり。
○第23条(社会保障及び十分な生活水準)
・どの国も社会保障の必要性を認識してはいるものの、各国の社会保障システムに大きな違いがある中で、まずは意見を出し合ったに留まった。もともと社会保障という概念があまりに大きいだけに、どう収束していくのかは不透明。

 6月2日 Daily summary of discussions on 2 June 2004


●6月1日 
 第1週目の玉村リポートにもあったが、この日の国連での登録手続きも随分と時間がかかった。受付コンピューターのダウンに見舞われ、会議場に入れたのは11時30分を回っていた(午前中の協議は1時までで、それでも1時間半ほどは聞くことができた)。
 会議場に入った時の印象であるが、第1回目(2002年)や第2回目(2003年)の特別委員会と比べて人数が多いということであった。まず参加国数については130ヵ国から140ヵ国とのことで、第1回目の倍以上になっているのである。また、傍聴者数も多かった。70余の傍聴席は満員で、これも第1回目がガラガラであったのと比べるとだいぶ違う。韓国などは26人という大傍聴団を送ってきた。全体として、GO及びNGOともに関心が高まってきたのでは、そんな印象を受けた。
 なお、国連での登録手続きに先立って、朝8時半から日本のNGOによるミーティングがグランドハイアットホテルのロビーで行なわれた(このホテルは、我々のホテルよりもはるかに立派な構えだった)。第1週目からの参加者(東さん、金さん、長瀬さん、崔さん、宮本さん、大窪さん、川島さんは先に会場に行っていた)と第2週目からの参加者(嵐谷さん、日英通訳の城田さんと堀さん、藤井、佐野)との顔合わせ、そして第1週目の概要が伝えられた。

 6月1日(火)の協議の概要は次のとおりである。
○第17条(教育)
・前週の残り未報告国分の発言が数ヵ国続いた。
○第18条(政治的及び公的活動への参加)
・条文の重要性を強調した上で、障害者団体だけではなく、あらゆる団体に参加することを盛り込むことが主張された。
○第19条(アクセシビリティ)
・「条約の内容が細かすぎて逆に制限列挙的になっていないか(アイルランド)」「条文に類似するものが多い(カナダ)」「あらゆる障害のアクセスビリティ(クウェート)」「パブリック(公共)とプライベート(私的)の違いがはっきりしない(イスラエル)」などが出された。日本からは「政府がアクセスビリティについてできることはアドバイスのみ」「パブリックの意味がはっきりしないので、これをはっきりするには、政府所有の建物だけではなく、『公的な利用を目的とした建物』とした方がいいのでは」が出された。
○第20条(人のモビリティ)
・移動のための措置について、「効果的な」という文言を「適当な」にすることを提案する国が相次いだ。第19条と同様に第20条でも、この2つの条文を区分けする必要があるのか、という意見も多かった。概して、条文の内容を下方修正する意見が多かった。
○第21条(健康及びリハビリテーションに対する権利)
・発言したほとんどの国が「健康」と「リハビリテーション」を分けるべきであることを提案した。リハビリテーションはもっと大きな意味を有するものであり、むしろ定義の項に含むべきでは、という意見もあった。これについては、残り数ヵ国の発言を余して時間の関係で翌日に持ち越された。

■議長主催のレセプション開催
 公式スケジュールが終了した後の午後6時から、特別委員会の議長であるエクアドルのガレゴス大使主催のレセプションが行なわれた。NGOを対象としたレセプションには、IDA(国際障害同盟)のメンバーを中心に国際的な主な顔ぶれが揃った。日本からは、東さん、嵐谷さん、金さん、藤井、佐野が出席した。議長に労をねぎらい、また久々のリーダーたちとの交流は楽しかった。

 6月1日  Daily summary of discussions on 1 June 2004


●5月31日(月) 休日
 ジョン・F・ケネディ空港は小雨に煙っていた。東京をたつ時の気温が今年最高の31℃で、ニューヨークの17℃は季節が2か月ほど逆戻りしたような感じだった。現地時間で5月31日夕刻5時30分に到着後、早速市内のホテルに向かった。この日の米国は、戦争にちなんでのメモリアルデーで、日本でいう祝日にあたった。そのせいか、渋滞時間帯にもかかわらず車は順調に流れ7時ちょっと前にはホテルに着いた。第2週目に入った国連の特別委員会であるが、米国のメモリアルデーによって、この日は休会であった。
 軽い夕食を済ませた後、ホテル内で第1週目の特別委員会の動きを復習した。去る1月の作業部会での検討を元に取りまとめられた草案に基づいて、逐条協議(1ヵ条ずつ時間を区切って協議)が行なわれ、既に17条(教育関連)の途中まで進んでいる様子だった。25条項から構成されている草案からすれば、ほぼ3分の2までたどり着いた感じである。かなりのスピード協議であることは間違いなさそうだ。残りの条項の協議と合わせて、最終の(第3回特別委員会としての)取りまとめがどのような形で行なわれるのか、第2週目の見どころはこの辺ということになろう(藤井克徳)

玉村公二彦さん (奈良教育大学助教授、奈良県障害者協議会副代表) 現地レポート
 **速報性を重視していますので、まちがい等があるかもしれませんが、その点はご容赦ください**
 **玉村さんは5月30日に帰国し、31日朝、「午後は講義があるので、、」といって京都に向かいました。ありがとうございました**

●5月28日 特別委員会 5日目 玉村メモ

NGOコーカス 8:30〜
・メキシコの大使、南アフリカのコーディネータが来て、現在の状況やネゴシエーションなどの状況について話す。文書に基づいてネゴシエーションがなされ、narrowing がなされている。NGOからの要望(すすめ方、モニタリングなど)も出されていた。ワーキンググループ報告、発言の調整についてはなかった。
・議長から、昨日の発言が33回あり、討議に3時間要したが、しかし、その内容はくり返しが多いとの注意があり、今回から代表5分、NGO3分の発言時間制限が加えられた。しかし、実際は守られていなかったが。

○第15条「地域生活における自立した生活及びインクルージョン」

・タイトルについて「自立した地域生活」「インクルージョンと地域生活」「コミュニティにおける自立生活の権利」などへの変更の提案あり。
・ニュージーランドは、「コミュニティにおける生活とインクルードされること(Living and Being Include in the community)」とタイトルをし、(a)どのように、どこで、だれかと生活するのかを決める、(b)「障害のある子どもはその家族と生活するか、それができたときは、別の家族の状況の中で生活する」を挿入、(d)コミュニティサポートサービスは、障害のある人の自律、個人の尊厳を認識して提供されるなどの提案を行った。
・日本は、(a)(b)(e)と(c)(d)を区別して記述するよう提案した。
・NGOの意見は、自立生活について強い支持を行い、家族や地球の中で生活することを主張した。Inclusion International や国家人権委員会は、ニュージーランドの提案を支持し、どこに住むかの選択やパーソナルケアの選択などを主張した。精神障害の人についての強制収容の問題についても強い批判が出された。
○第15条の後、16条障害のある子どもの前に、新条項として「障害のある女性(Women with disability)」を入れるという提案が韓国からあった。
女性については特別のケアの問題があると主張。
・南アフリカ、ケニア、セルビアモンテネグロ、ウガンダ、特別報告者、世界ろう連盟、ESCAP、ランドマイン・サバイバーネット、世界盲人連合などが支持(特別な条項とすべし)
・EU、ヨルダン、シアラレオネ、イエメン、ノルウェーなど特定のグループについては前文にいれるとして特別な条項は必要ないと批判。
・タイなどは、合理的に考えるとEUの主張に賛成だが、特別の困難をもっているということでどこかでふれられなければならない。気持ちの面では新しい条項をつくることに動いている、と複雑な気持ちを指摘。
 →この問題はつぎの16条(子ども)についても関連して問題となる。
○第16条「障害のある子ども」
・EUは「本条は、子どもの権利条約の第23条にすでに含まれているものに付け加えるものはないと考える。本条の価値は疑問。本条約はすべての障害のある人に適用されるべきであり、障害のある人の中のカテゴリー間で区別をつけることは好ましくないと考える。そうすることが、一定のカテゴリーの人がその他の人よりも少ない権利しか与えられていないという印象を与えることになるからである」として本条を削除する提案をした。子どもについての言及は、前文で行うというものであった。
・日本もこれに賛同(子どものことは重要だとしつつも、5以外は特別なものではなくバラバラである)。ニュージーランドは作業部会では時間がなく子どもの権利条約からの切り貼りで作成されたことを指摘。一方ウガンダ、パレスチナ(紛争下での子どもの問題)、インド(女性は特別な条項はなくてもよいが、子どもは必要)、ケニアなどは、特別な条項として残すことを支持。さらに、カナダは新しいパラグラフを入れる提案。メキシコはカナダに賛成で、子どもの権利条約をよりふくらませてポジティブなアプローチをすべきとした。
・EUは、子どもの権利条約23条だけが、障害のある子どもの権利ではなく、子どもの権利全体が障害のある子とも適用されることが必要で、それを特定の権利だけに限定するとなると反論。
・NGOは、16条をより豊富化するよう求めた。
DPIは、16条に書いていないことにも留意すべしとし、セーブ・ザ・チルドレンは、子どもの最善の利益や意見表明権が守られていないとして、EU案への強い反対を行った。Inclusion International も子どもの権利条約だけでは不十分で、16条は特に必要とした。WFD(世界ろう連盟)はろうの子どものコミュニケーションの問題を指摘し、前文に入れると、様々な問題があり長くなりすぎて拘束力が弱まるとしてEU案を批判。世界人権機関も子どもの権利条約では、人権は十分守られていないとして16条を保持することが大切とした。
○第17条「教育」
・全体として、教育を子どもだけに限定すべきでないとして、「子ども」を「障害のある人」に修正する意見は大多数。
・タイトルを「教育と訓練(education and training)」とすべきと、オーストラリア、南アフリカ、モンテネグロ、ウガンダ、トリニダートトバコ、イエメン、リビアなどが指摘。ヨルダンは「教育、訓練、生涯学習」という提案もあった。なお「教育と訓練」についてはILOも支持。
・EUの提案(提案書あり)は、11点の修正提案であるが、主要なものとしては以下のものである。
 @パラグラフ1「この権利を漸進的に・・・達成するため」を削除。「子ども」を「人」に。
 Aパラグラフ2で endeavour to を挿入して、「確保するよう努める」と努力義務規定にしたこと。
 Bパラグラフ2−a can choose(選ぶことができる)を can avail of(利用することができる)としたこと。
 Cパラグラフ3 「一般教育システムがいまだ障害のある人のニーズを適切に満たしていないところでは、締約国は代替的な教育の形態を促進するために適切な手段をとるものとする。本条の下で提供されるいかなる代替的な教育の形態も(次のようなものとしなければならない)」に変更。
 DパラグラフC 「十分な説明に基づく自由な」を削除
 Eパラグラフ4 「締約国は、障害のある人が多様なコミュニケーション様式を用いた教授を選択できることを確保するため、適切な手段を取るものとし、教師が違ったコミュニケーション様式を用いることを確保することによって、障害のある就学者(student・生徒・学生)に対し質の高い教育を確保するものとする」に変更。
・日本政府は、基本的にEUの提案を支持した。加えて3−e の最後に、「upon careful consideration of the best interests of students with disability(障害のある生徒の最善の利益を慎重に考慮した上で)」を付加し、限定を加える提案を行った。
・その後中国からも提案書が出されたが、主には教育の目的として発達等を明確にするものであった(ニュージーランドも中国と同じような提案をしていた)。
・NGOとして、世界盲人連合はIDAの意見を調整し、質の高い教育をすべての障害のある人に提供すること。障害の多様性や異なったニーズに対応すること。教育には高いプライオリティがあることを強調(ワーキンググループの提案書あり)、その他、世界盲ろう連盟からは教育がなければコミュニケーション、発達、情報もないことになるとして教育の重要性を強調。
*教育の条項の議論は、時間切れでNGOの発言など、次週(6月1日・火曜日)にまわされることになった。
 月、火、水と順調にすすんできた討議だが、木、金と細やかな修正等も含めて時間がかかっている。第1週として予定されていた第18条までの討議は消化できずにもちこしとなった。次週は月曜日が休日なので実質4日間となる。条約として成案となる地ならしとしての今回の特別委員会のゆくえ、8月に予定されている特別委員会、その後がどうなるか不明である。


○昼 リハビリテーション・インターナショナルの主催で「Young People and Families Speek UP!」として「権利条約に子ども、青年、家族の視点を含みこむ」というランチセッションがあった。話題提供者はカナダ地域生活協会の青年部会の議長と障害のある青年、その親、そして法的視点からジェラルド・クインの4名。
 議論の中では、ケニアなど途上国の子ども、青年の問題、インフラの整備がなされていないことなど、母親の立場から切実な声があがっていた。

 5月28日 Daily summary of discussions on 28 May 2004


●5月27日 特別委員会4日目 玉村メモ
昨日までスムーズに進んできたが今日は、各国の発言が多かったのかなかだるみ?なのかはわからないが各条審議に時間がかかった。12条に続き、13条、14条で終了。各条の検討は文言の挿入や変更や削除などが中心で、技術的な問題が多かった。
*今日の各条項の審議が長すぎたので、明日から1条、1時間半に制限されることになった。

9:00〜 NGOコーカス
・情勢について:メキシコを中心にした南アメリカ、アジア、南アフリカなどの途上国中心にEU案に対する批判の集まりがあり。
・各Working Group から報告、進展状況について(教育のWGのペーパーはできたなど)

10:00〜
○第12条「暴力及び虐待からの自由」
 ・・・昨日の続き
・中国、カナダ、ノルウェー、EU、フィリピンから発言あり。主なところはメキシコの修正案に賛成するもの。
・NGOからの発言  全体として12条の支持。ハラスメント、経済的搾取、子どもが暴力虐待にさらされている問題、精神障害者の収容反対などが指摘される。
*昨日の討議での修正提案(第1条から11条)のプリントが配布されたが、その中に、EUの提案などが入っていないとの指摘があり、取り扱いについてのやりとりあり。
 議長としては透明性のある討議を進めていきたいが、提案については事務局に各代表から指摘を伝えて欲しいと要望。なお、このファースト・リーディングを終えたところで集約して、非公式のコンサルテーションをしたいとのこと。

○第13条「表現及び意見の自由、情報を利用する機会」
・各国から細かな文章の修正、挿入、削除の提案あり。「代替的及び拡大的な意志伝達様式(alternative and augmentative communication modes)の表現をどうするか修正などがあった
 (玉村注 AAC(補助代替コミュニケーション手段)というわけではないようだ)。
・その他「公共の情報(public)」は広いから、「official」に変更(EU)。できないところもあるかもしれないので「適当なステップをとって〜する」と表現(日本)など。
NGO
・「表現の自由」と「情報アクセス可能性」を区別して、後者をより強調するために別の条項へ移動「national Institute of Human Right」.
・WDF(世界ろう連盟) 手話も言語。言語の定義を検討し、national Language としての手話を強調。第一言語として子どものコミュニケーション手段として位置づけること。家族などにそのような正確な情報が行き渡っておらず、手話が口話を妨害するといった誤解などがある。表現の自由にとって手話は重要で社会的発達や平等の参加につながる。異なる文化として尊重を。
・Disability Australia  点字、手話などのAACで市民的権利の行使を。オーストラリアは手話を公用語として認めていないが、国際的規範として示して欲しい。
・Inclusion International  自己決定が必要。個人のニーズにあった平易なことばで、一貫性のあるものとして示される必要がある。テクノロジーで情報がきちんと届けられるように。
・Save the children  子どもは表現ができない場合がある「ege-approprid(年齢に適合した)」表現、情報の利用を。また時間延長も必要。
○第14条「プライバシー、住居及び家族の尊重」
・第14条の議論はかなり長いものだった。様々な国での結婚の形態、家族の制度の違いもあるし、言葉での表現の仕方での指摘もあった。sexuality、婚姻、家族をつくるなどのところで指摘があったり、養子縁組などの国によってのやり方の違いもあるようだ。なお「強制された不妊手術」として" forced" を入れる提案などもあった。
NGO
・カナダコミュニティリビング協会  知的障害のある人たちの家族をもち結婚生活をすること。プライバシーや住居の重要性、sexualityは基本的権利など知的障害のある人たちが同じ権利を持つことを強調。
・Disability Australia  プライバシーと個人的関係を区別すること法的機関にアクセスできるようにすることなど。
・サバイバーネットワーク  精神の人たちの市民的権利が剥奪されている問題。interdependanceの強調。
・Society of Catholic Social Scientists ?
・DPI 家族の法的保護。例)フィリピン:障害のある女性の場合、結婚、家族を持つことなどが制限されているなどの問題がある。
*議長から第14条だけで3時間討議してしまった。予定よりも遅れたら、明日から1つにつき1時間半に制限する。
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○この日の昼
 ランドマン(サバイバーズ・ネットワーク)とリハビリテーション・インターナショナルの主催でランチ・パネルディスカッションがあった。 ”リハビリテーション””障害者の権利条約”の発展(開発)におけるリハビリテーションの理解というもの。世界銀行の障害と発展(開発)アドバイザー・Judithさんの司会。
話題提供者は3名。Nara Groce(Yale school of Public Health),Plamenlco Prignica(Land mine survivors Network),Lex Frieden(Rehabilitation International)。「ピア・リハビリテーション」「ハビリテーションとリハビリテーション」など話題提供があり、参加者から質疑が出され討論があった。(4F・代表のダイニングルーム、西テラスにて)

 5月27日  Daily summary of discussions on 27 May 2004


●5月26日 特別委員会 第3日目 メモ
■昨日までのまとめ(5/26朝)
 審議はかなり早いスピードで進んでいる。予定では、24、25の2日間で第1条〜第6条まで行うことになっていたが、すでに第8条の審議まで来ている。全体としては、各条項の修正提案が出され、若干かみ合ったやりとりまで行って、条約作成の交渉的なものとなっている。
 すでに審議の終わった条項については議論を入れたペーパーが配布されつつあり、またホームページ上でも審議の記録(議事録)が公開されはじめている(なお、本日朝にはDaily Summaryがプリント配布されていた。)

9:00〜 NGOコーカス
・ヨーロッパの動き(EU)、ロビー活動の報告。
・Working Group の予定(モニタリング、教育)
・発言(DPI JAPAN 発言予定)
・その他。車イスのモビリティについての検討の方向など意見交換。

10:00〜13:00
第8条[生命に対する権利]
…昨日の続き
・2〜3カ国。
・NGO…生まれる前の子どもの生命の問題、子どもの生存、地雷等は別条項になどの発言あり。
○第9条[法の前における人としての平等]
 主要にはカナダの提案、EUの提案がなされた(内容略)。日本は、知的障害やコミュニケーション障害のある人の司法手続きにおいて、コミュニケーション等のバリアを払拭し、理解の下で裁判を受けることを提案(政府委員となった東さんのインプットで提案)。後にNGOから支持が多かった。
 ILOはガイドラインを提言すべきとした。ESCAPはバンコック草案のRemedyについて指摘。
 NGO…Inclusion International、Save the Children、DPI、Blind Union、WDF(ろう連盟)、それぞれの立場(障害)の状況を踏まえて意見の主張あり。
 特別報告官、不十分な表現もあるとの指摘。
○昼休み…NGOのWGなどあり。
3:00〜
○第10条[身体の自由及び安全]

 身体の自由はほぼ支持され(パラ1)、パラ2が修正案が出される。自由を奪われた場合の、それが起こった時点での権利(NZ)、日本も司法に訴えることが可能な方向で検討すべし。刑事裁判の問題(オーストラリア)などを指摘。
 NGOは、収容や収容施設の問題を提起。精神障害のある人の収容や拘束の現実と人権保障を主張。DPI JAPAN(宮本)はパラ2は、自由を奪われてもやむを得ないという認識・誤解を招くおそれがあるため削除し、抜本的修正を提起(議事録が楽しみ!)。
○第11条「拷問または残虐な非人道的な若しくは品位を傷つける取り扱い若しくは刑罰からの自由」
 EU、カナダ、日本、パラグラフ2の「また」以下、強制的な介入及び施設収容化からの保護の削除。インドは11条として案の統合を提案。
 NGO、精神医療のユーザーとして、様々な否定的な経験があり、それがトラウマとなっている。強制的介入は一種の拷問で、自己決定の能力がないとして、治療という形の拷問となっている。
○第12条「暴力及び虐待からの自由」
 EUの提案・・・強制的介入、収容、原則としては法律違反。しかし、例外的な場合もあり、法的な基準は必要。
 中国・・・強制的介入、収容の問題はどう取り扱うか検討の必要ありとした(別条項でも可)
 日本もEU案に賛成
 →この議論は明日に継続
 本日は自由権のところで出席の国が少なかった。条項の修正は、テキストを忘れてきたため、フォローができない。DPI日本会議の国連での発言はよい経験になったと思う。
 会議終了後、午後7時より、宿泊ホテルロビーで、金さん(政府代表団オブザーバー)を中心にまとめの会議あり。司法手続きの日本提案は、昨日からの東さん(NGOの政府委員)の角参事官(日本政府代表)へのやりとりの成果。みなで意見交流。

 5月26日 Daily summary of discussions on 26 May 2004


●5月25日 特別委員会 第2日目 メモ (NY 23:58)
○9時〜 NGOコーカス
 5/23の運営委員会の際に決まったtopic以外でも、各条項に即して(すべてではないが)コーディネーターが決められ、working groupでの検討ができるように手配された。同時に審議の場でのNGOの発言についても責任分担ができるように意志統一があった。NGOとして定義の必要性の有無を調べるアンケートもあった。

○10時過ぎから会議
○第4条[一般的義務]←昨日の続き
 EUの修正提案のpaperが出て、昨日からの議論を受けてアイルランドが「強い条約」(非差別の実現)をつくるという観点から補足説明。昨日の第4条をEU案はうすめるという発言に対して、「非差別」中心でその実現を現実的なものにすることを強調。
 その他、第4条を維持することを主張する国もあり。NGOは、条約は非差別だけでない(リハビリテーション・インターナショナル)、国際協力の必要など(オーストラリアNGO)などがいわれる。この点で、バンコック草案の復活も主張された(タイ、インド、コスタリカなど)。また「家族」の参加などの指摘もあった。
◎議長から、第1条、第2条の修正案(各国の主張のまとめ)のペーパーが出された。これから、終わった条項については、次の日に修正案やコメントを付加するpaperが出されてくることになる。
○第5条[障害がある人に対する肯定的態度の促進]
 部分的修正の提案もあったが、基本的には原案。ポジティブな表現に全体としてすること。日本も第5条の重要性を指摘し、このままで通すことを主張。
 NGOからは、Save the Children Allienceから、子どもに焦点をあてて行くこと、家族の中での態度の形成などについても指摘があった。
○第6条[統計およびデータ収集]
 基本的にはこの条文は支持されていたようだ。障害者の統計データによって政策の設定なども可能になる。しかしプライバシー保護の問題、各国で障害統計が異なっているのでもっと大綱的にするなどの提案もあった。
 EU(アイルランド)は、人権問題に関する条約であるので政策立案とは別問題と主張もしたが情報収集については是認。
 NGOなどは政策をつくるだけでなくfollow upも、モニタリングと評価もとの指摘もあった。さらにインターナショナルリハビリテーションセンターなどは、世界的な基準はあるとした。DPIもProgramの評価に大切と主張。特別報告官は、統計がないと政策etcが豊富化されないと述べた。
○第7条[平等および非差別]
 EU案(7条中心に4条5条を統合→新3条へ)について、メキシコは、社会的文化的権利の強調(非差別・平等)、メキシコ国内法も非差別を規定していること、平等と非差別を分けることなどの点でEU案を評価した。また、差別について、「直接的差別」はよくかけている、間接差別については若干の問題アリとした。それを受けてアイルランドは、パラグラフ3(…は含まない)は直接差別を許し得るので削除し、逆にreasonable accommodation(合理的配慮)として障害者サービスを広く含め、さらにaffirmative actionを入れるという方法も他の条約にもはいっていると指摘。日本も3は悪用されるので付加的な文案を入れることを提案。
 その他、直接差別と間接差別の区別などいろいろな議論があった。全体としてはBは削除、affirmative actionやreasonable accommodationの強調、「不釣り合いな負担を課す場合」の修正などが問題提起された。
 NGOからは、「非差別は平等を実現する方法」であり、reasonable accommodation(合理的配慮)がないときは差別である、disproportional burden(不釣り合いな負担)への疑問、direct/indirect差別の区別、使用者の証明義務、特別措置(割当雇用も含む)の提起などがあった(EDF)。
○第8条[Right to life  生命に対する権利]
 基本的には現行の条項がよいとされた。第2パラグラフに、武力紛争、自然災害、内戦などから生命を守るための措置をとるよう付加の提案あり。日本は第2パラグラフを入れることによって第1パラグラフの精神が別のところにいってしまう可能性があると指摘し、別の条項で検討するよう指摘。
 NGOは、生まれていない子どもの障害の問題、遺伝子検査、染色体検査などをどう考えるかを提起(インクルージョン・インターナショナルなど)。

○その他
●昼1:15-2:45 The International Disability Allience(IDA)のランチミーティング。
[テーマ]「なぜ障害者にとって自己決定は重要か?どのようにして条約が自己決定を可能にするか。」
[話題提供者の所属団体]
・Mental Disability Rights International
・Canadian Association for Community Living
・Swedish National Association for Social and Mental Health
・Disabled People International
・World Federation of the Deaf
・Inclusion International
・Province of British Columbia
・World Network of Users and Survivors of Psychiatry
・World Blind Union
 精神的障害、視覚障害、聴覚障害、知的障害のリーガルアドボケイトの立場から経験を語り、自己決定の重要性を指摘。
●NGOコーカスの教育ワーキンググループが6時15分〜あり。

5月25日 Daily summary of discussions on 25 May 2004


●5月24日 特別委員会(第一日目)メモ ニューヨーク 06:03発
 国連のNGOの受け付けのコンピューターがダウンし、長時間足止めされる。特別委員会は10時から予定されていたが、NGOが議場には入れたのは11時半頃だった。すでに会議は始まっており、第1条の審議がなされていた。あとで聞くと前文はNGOがいないためメキシコの提案があり省略(先送りか?)されたとのことであった。条約の審議の内容(印象に残ったもののみ)は以下の通り。
○第1条[目的](途中から入場で十分聞けていない)
 protect, promote, support などの用語も入れて、簡潔、短く表現すべきとの指摘あり(リトアニア、フィリピン)。EUを代表したアイルランドは、人権規約や子どもの権利条約ですべての人の人権が保障されているので障害者の人権もその中に入る、equality(平等)をどう位置づけるのかと問題提起した。
 NGOのコメントは、effective(効果的に)を入れるべしとのこと。
○第2条[一般的原則]
 アイルランド(EU)、(c)について、full and effective participation and inclusion...[全面的かつ効果的な参加とインクルージョン]に変更。(b)の非差別は、適切な処置をとることで実質的に非差別がなされなければならないと指摘。国際協力も原則に入れろ、との指摘もあり。affirmative action (差別撤廃)も現状を改善するためには必要と、マリ、ケニア、スーダンなど途上国中心に言われた。その他、重度重複の子どもの問題に注意を払うべきである(インド)、self determination(自己決定)、gender(ジェンダー)、人間の尊厳についても入れるべきとの指摘あり。
 日本も、「バリアフリー環境の実現」を入れ、社会的な面だけでなく、精神的な面でも、社会の改善をする必要を指摘。インドもsocialモデルという観点から、バリアフリーやアクセシビリティ、affirmative action を入れることを述べた。
 また、搾取、虐待、ニグレクトなどからの保護。特に女性、子ども、重度重複の場合などに配慮すべきとの意見もあった。
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 1時閉会。1時15分〜、議長とNGOの会合あり。NGOから会議の進め方について質問や要望(聴覚障害者のアクセス)などについて出され、議長が答えていた。1時間程度、2時再開。
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○第3条[定義]
 定義という形でおくのではなく、当該の用語が出たところで定義をすべきとの意見があいつぐ。EUはこの条項は必要ないともいう。「障害」についての定義は社会モデルでとか、「障害のある人」の定義は必要との指摘もあり。
 日本政府は、「障害」「障害のある人」の定義は困難で、国によって異なり、法的義務も出てくることで、各国政府に負担を課すことになるのではないかと述べた。
 いずれにしても、第3条については先延ばしになった。
○第4条[一般的義務]
 EUを代表してアイルランドが大幅な修正を提案、第4条、5条、7条を統合し、第7条[平等及び非差別]を中心に新しい第3条(EUは定義の第3条はいらないとしていた)を構成するというものだった。これについては、paperや電子媒体の準備がなされていないので議論は混乱。
 「main streaming」は法律用語ではないとか、サブパラグラフに障害者をエンパワーするパラグラフをつくる(日本)とか、「国際協力」を入れるとかの議論があった後、EUの修正提案が配布された。
 議長の時間の思い違い(1時間早く終わってしまいそうになった)もあり、休憩時間がとられ、その間にEU案に目を通す。再開後、EU案で「一般的義務」がなくなることについて、レバノン、クウェート、イエメンなどから草案のままの方がバランスがとれていると批判。メキシコはEU案に重大な懸念を表明。消極的で制限的であると批判。NZは中立的立場から保留。EU(アイルランド)は作業部会はあくまで部会であって、条約はすべての国で決めることであり、大幅な変更あがってもよいと反論。EUの提案の検討には時間が必要という国もあり。NGOはEUの案はせまく制限的であると批判。この条約で「非差別」だけに限定するのは問題があるとした。
 いずれにしてもEUの提案は、4条、5条、7条すべてにかかってくるので、明日もこの議論が続くことになる。
 なお、議長は、実質的な条約の交渉となっていることを指摘していた。

 5月24日 デイリーサマリー/24 May 2004 - Daily summary of discussion at the third session


●5月23日(ニューヨーク 13:18発)
10時〜13時 NGOコーカス運営委員会がグランドハイアット(日本からの傍聴団宿舎)内で開催され、日本から玉村公二彦(JD)、宮本泰輔(DPI)、長瀬修(育成会)が参加しました。NGOコーカスは、各NGO間の意見を調整して、まとめていくことが大きな役割といわれています。
NGOコーカス運営委員会 協議事項
 @作業部会(1月以降)の諸情報、A論争点について(NGOの合意形成を含む)、B条約草案の豊富化の文法論
 C政府等の対応
@では、EU、南米etcの状況が示された
A論争点について
 i)NGO内で意見の調整ができていない部分、政府との間で論点になっているものとを峻別すること
 ii)個々の論争
  ・definition(定義)
  ・education(教育) NGO内でのinclusive education と special education for the blind / deaf の意見の相違
  ・self determinatin(自己決定)
  ・health と rehabilitation の区別
  ・reasonable accomodation(合理的配慮)
  ・monitoring(モニタリング)、international cooporation(国際協力)
  ・statistics(統計)
  ・gender issues(ジェンダーの問題) など
 iii)個々の論点について小グループで討議、NGOの意見表面のたたき台をつくる
  本日の会議ではそれぞれのコーディネーターが決まった。
B特別委員会でのロビー活動
  ・昼休み各国政府を招いてのロビーミーティング
  ・事前のmorning meeting、後のafter meeting etc                                                                       

■関連資料
障害者権利条約に関する国連総会アドホック委員会における条約作成のための議論概要(外務省)
第3回国連障害者権利条約に関する特別委員会(2004.5.24〜6.4)報告(DPI日本会議)
   
団長である角参事官の特別委員会における発言の要旨紹介、代表団内での意見交換内容を可能な範囲で報告
作業部会草案の重要条項についての意見提起(案)(JDF準備会障害者権利条約専門委員会)
国連・第3回特別委員会 デイリーサマリー(5.24-6.4)(英文)
障害者の権利条約特別委員会の報告(日本障害者リハビリテーション協会)
特別委員会への作業部会の報告(英文)
国連「障害者の権利条約」関連邦訳資料 (全日本ろうあ連盟)
びわこミレニアム・フレームワーク
国連障害者の権利条約特別委員会傍聴団報告 「アジア太平洋障害者の十年」最終年記念フォーラム組織委員会
「国際生活機能分類−国際障害分類改訂版−」(日本語版)
世界保健機構(WHO) ICF
・国際機関等による決議、勧告、宣言
(日本障害者リハビリテーション協会)


国連本部
国連本部(ニューヨーク)の今の様子(ライブカメラ)


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