150衆議院 内閣委員会 2000/11/07

平成十二年十一月七日(火曜日)
    午前九時二分開議
 出席委員
   委員長 佐藤 静雄君
   理事 大野 松茂君 理事 阪上 善秀君
   理事 平沢 勝栄君 理事 持永 和見君
   理事 荒井  聰君 理事 山元  勉君
   理事 斉藤 鉄夫君 理事 塩田  晋君
      岩倉 博文君    岡下 信子君
      谷川 和穗君    谷田 武彦君
      近岡理一郎君    根本  匠君
      二田 孝治君    森  英介君
      山本 明彦君    井上 和雄君
      石毛えい子君    生方 幸夫君
      中田  宏君    楢崎 欣弥君
      山田 敏雅君    山花 郁夫君
      白保 台一君    若松 謙維君
      佐藤 公治君    松本 善明君
      矢島 恒夫君    植田 至紀君
      原  陽子君    北村 誠吾君
      粟屋 敏信君    徳田 虎雄君
    …………………………………
   国務大臣         堺屋 太一君
   沖縄開発政務次官     白保 台一君
   文部政務次官       松村 龍二君
   厚生政務次官       福島  豊君
   通商産業政務次官     坂本 剛二君
   郵政政務次官       佐田玄一郎君
   労働政務次官       釜本 邦茂君
   政府参考人
   (内閣審議官)      藤井 昭夫君
   政府参考人
   (内閣審議官)      古田  肇君
   政府参考人
   (内閣審議官)      平井 正夫君
   政府参考人
   (文部省初等中等教育局長) 御手洗 康君
   政府参考人
   (郵政省電気通信局長)  天野 定功君
   参考人
   (IT戦略会議議長)   出井 伸之君
   参考人
   (慶應義塾大学環境情報学部教授) 村井  純君
   参考人
   (慶應義塾大学大学院経営管理研究科教授) 國領 二郎君
   参考人
   (全国障害者問題研究会事務局長) 薗部 英夫君
   参考人
   (トキワ松学園横浜美術短期大学講師) 福冨 忠和君
   内閣委員会専門員     新倉 紀一君
    ―――――――――――――

    午前九時二分開議
     ――――◇―――――
○佐藤委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、高度情報通信ネットワーク社会形成基本法案を議題といたします。
 本日は、本案審査のため、参考人から意見を聴取することにいたしております。
 本日御出席の参考人は、IT戦略会議議長出井伸之君、慶應義塾大学環境情報学部教授村井純君、慶應義塾大学大学院経営管理研究科教授國領二郎君、全国障害者問題研究会事務局長薗部英夫君、トキワ松学園横浜美術短期大学講師福冨忠和君、以上五名の方々であります。

 (略)

○佐藤委員長 ありがとうございました。
 次に、薗部参考人にお願いいたします。

○薗部参考人 まず初めに、こうしてパソコンの画面を液晶ビジョンでスクリーンに投影することができるようにしていただき、委員長初め委員の皆さん、また、きのうからお手間を大変おかけしました事務局の皆さんに心から感謝申し上げます。
 さて、私は、障害者の権利が守られ、ああ、生きていてよかったと実感できる社会の実現を目指す立場から、IT基本法について意見を述べさせていただきます。発言はスクリーンの画像と一緒にさせていただきますが、皆さんのお手元には既にプリントした資料もお配りしていますので、後ほど御参照ください。
 まず、現状と問題点です。
 ITは、障害者には無が有になる希望の道具です。しかし、厄介なのがパソコンで、インターネットも同様です。テレビのようにはすぐには使えない。何もしなければただの箱です。さらに、障害があることでさまざまなバリアが山積します。障害種別や程度の違い、日常生活の状態の違いも大きく、さらに相談、習得の場がほとんどありません。
 次に、具体的に現状を紹介させていただきます。
 これは足でタイプしている場面です。論文一つ書き上げると、疲れで一週間は歩けなくなってしまう。それでも自分で原稿が書けるってすばらしいと言う大阪のある研究者です。タイプの際の足首にかかる負担は、手首の数倍です。
 次に、唇で電子メール。お父さんとメールで話ししたよと多摩地区の高校生です。彼は、唇の先でキーボードをタイプします。エンジニアで出張が多く、会話の機会の少なかったお父さんもうれしそうでした。
 ヘッドギアで入力作業、もっと働ける場が欲しい。江東区の障害者作業所にて写させていただきました。筋ジストロフィーという筋力が低下していく病気の彼ですが、できる力で入力します。でも、重度の障害者を受け入れる企業は少数です。月収五千円という小規模の障害者作業所が圧倒的です。
 ピンディスプレーと音声合成があれば。画面のテキスト文字を指先に、ピンが上下して、点字で伝えることができます。画面のテキストを音声合成装置が読み上げます。すると、働けます。全盲のエンジニアの職場進出のうれしいニュースが続いています。
 次に、知的障害者のテクノロジー活用の例です。スウェーデンでは一九九一年から研究プロジェクトに取り組み、我が国でも最近実用化されました。お札や硬貨などの絵や写真を見ながら一対一対応させたりすることで、簡単につり銭がわかるシステムです。ただし、値段は一台百十万円です。
 自作の補助具もそれぞれが工夫しています。この方の場合、割りばしに指サックをつけた補助具でマウスを操作します。しかし、ごらんのようにワープロでインターネットをしていますが、速度は遅過ぎます。在宅の彼の期待は、インターネット授業の受講です。
 しかし、マウスの操作は不随意の動きがあるととてもつらいものがあります。四十歳あたりからの二次障害と言われる不随意の運動の無理の重なりによって新たに生じる障害の不安もあります。医療など専門機関との連携がとても大切なのです。
 新潟の鈴木正男さんから、電子メールで意見をいただきました。三十歳ごろ、足で文字を書けなくなったので、足でキーボードを打ってワープロを使い始めました。四十二歳で障害が重度化して座ることができなくなり、寝たきりとなりました。もうだめかと思いましたが、科学技術の進歩を思うと、どんな障害があっても入力できる機器は開発できると信じることにしました。今は、あきらめるのではなく、人を介してもいいからと考えて、介護人と二人三脚で自分のホームページをつくり、介護情報を発信しています。
 事例の最後は、福井にお住まいの長谷川清治さんの例です。重度の脳性麻痺者です。体の緊張が強く、歩行が困難で、重い言語障害もあります。わずかに動く一本の指でパソコンを操作します。ベッドが生活の場です。長谷川さんはインターネットを使いたいと願いましたが、近くに彼が学べる場はありません。そういう意味では、教育も福祉も医療もみんな必要なのです。彼は各地に出かけていって学び、インターネットの使い手となりました。すると、教えられるばかりでなく、自分も何かの役に立てるかもしれないと気持ちが変わりました。助けてから助け手へと、この夏、長谷川さんの介護ボランティアや先生、施設職員やエンジニアなど十名ほどで、パソコンボランティア福井を発足させました。長谷川さん自身が助け手となったのです。
 こうしたたくさんの人たちの願いや希望にIT基本法はどうこたえているでしょうか。
 情報バリアフリーに関する四つの課題について述べさせていただきます。
 まず、情報、コミュニケーションは人権です。同年齢の市民と同じ人権を保障するとした障害者の権利宣言は一九七五年です。さらに、一九九三年には、国連は、どのような障害の種別を持つ人に対しても政府は情報とコミュニケーションを提供するための方策を開始すべきであると障害者の機会均等に関する基準規則で明確にしました。以後、アクセスの保障は世界のメーンテーマです。
 我が国では、情報アクセス、情報発信は新たな基本的人権と郵政省電気通信審議会が指摘しました。それは、身体障害や知的障害、精神障害などすべての障害者を対象に権利として位置づけると、高齢者初めすべての人々が利活用できることにつながるからです。人間は、ITから恩恵を受けるという受け身の存在ではなくて、よりよく生きるためにITを道具として活用するものだと思います。この視点が基本法は明確ではないと感じます。
 次に、緊急改善の三事項です。
 一つは、日常生活用具にコミュニケーション機器を。ITの時代にパソコンがノーは時代錯誤でしょう。現行では、重度障害者に電動タイプライター、ワードプロセッサー給付はありますが、パソコンは認めません。パソコンは多機能だからというのが理由です。科学技術の日本だからこそ、最高のものを障害者にと発想を変えてほしいです。
 さらに、公的機関にいつでも利用できる通信環境を。筋ジストロフィーの患者さんたちなど、病院で暮らす人たちがいます。携帯やPHSは病院では使えません。数日入院しただけでも大変なことなのに、そこで暮らす人たちを忘れてはならないと思います。また、北欧では図書館がインターネット利用の拠点でした。さらに、養護学校を含めた学校に通信環境は必須です。公民館も施設も、地域の公的な資源に通信環境を徹底することで利活用は飛躍すると思います。
 同時に、人的サポートの体制です。通信環境が整備されても、相談できる人のサポートが必要です。そのため、障害がわかって、かつテクノロジーもわかるという専門家の養成が急務です。公的機関にだれもが使える通信環境が整い、そこに専門家が行政の責任で配置ないしは養成されるならば、そこのボランティアも力を発揮しやすくなります。
 三番目に、国の責任です。
 通産省の情報処理機器アクセシビリティ指針は力作と言えます。しかし、連邦政府が購入、用いる機器は障害者でも使えるものでなくてはならないというアメリカのリハビリテーション法に比して、強制力がありません。企業任せでなく、国のリーダーシップをぜひ見せてほしいと思います。
 郵政省は、この五年間、調査研究会を組織し、地域での人的支援、ホームページのアクセシビリティーを強調しています。これも通産省と同様です。さらに、公的情報のアクセシビリティーの徹底、また、中長期的整備目標と財政計画をつくり、しっかりと総括が必要ではないでしょうか。IT補正で六十億円分のパソコンを福祉施設に配ると聞きますが、障害者の願いは、いつでも使える通信環境の整備と人的サポートこそ国としてやってほしいことなのです。
 最後に、最大のポイントです。調査、研究、開発、決定への当事者参加をぜひお願いしたいと思います。
 以上、ITはすばらしい可能性を持っています。それゆえに、どのように重い障害があっても人生は自由ですばらしいと実感できるように、もっと本格的な、すべての人のためのIT基本法を希望します。
 以上です。(拍手)

○佐藤委員長 ありがとうございました。
 次に、福冨参考人にお願いいたします。

○福冨参考人 おはようございます。福冨と申します。
 (中略)
 まず、情報格差、いわゆるデジタルデバイドというものの解消に関する具体的な施策を早い時期に立案すべきではないかということです。
 法案の方にも、すべての国民が情報通信技術の恵沢を享受できる社会の実現、あるいは利用機会などの格差の是正といったユニバーサルサービスとしての高度情報通信ネットワークがあまねく国民に提供されて、そこで発生するデジタルデバイドを是正していくということが理念として盛り込まれてはおります。しかし、これは具体的にどういう方法で是正されるのかということは、重点計画として明らかになるのかもしれませんけれども、現状でははっきりしておりません。
 さきの沖縄サミットでも、グローバルな情報社会に関する沖縄憲章、いわゆるIT憲章の中で、発展途上国と先進国の間の情報格差を是正していくということをうたわれておりました。しかし、実際には既に、年齢、地域、収入、あるいは先ほど薗部先生御指摘の身体的条件などによる国民の間、国内の情報格差というのは広がっているというふうに考えられます。
 具体的な例で言いますと、民間のシンクタンク、野村総研の九九年の調査では、パソコンの個人利用率、これが、最大である四十代男性三八・九%に対して、五十代の女性は七・四%という、大体五倍ぐらいの開きがあります。こういうのをデジタルデバイドと言って構わないかと思います。
 この格差は、情報機器などの操作などのリテラシーの向上だけでは埋まらないわけです。例えば、現在の官邸のホームページ、ウエブの内容というのは、最も普及しているインターネットツールでありますiモードなどの携帯電話から読むということはほとんど不可能に近いです。こういった端末機が今後改善されていくとしても、まとまった文章の閲覧とか発信には、やはりパーソナルコンピューター、パソコンのようなものを使うか、それと同等の機器を開発していくほかないわけです。
 ところが、そのためには、法案がうたうような低廉な料金のネットワーク利用条件の整備といったことでは足らないというふうに考えます。現在でも、機器と接続環境を整備するだけで一人当たり最低十万円ぐらいの出費というのが必要なわけで、これは、学生であるとか低所得者の方には決して低い金額とは言えないと思っております。
 インターネットの普及ということでは先行しております米国で、九二年ごろに、NII、全国情報基盤整備構想というのがありまして、この中でも、ユニバーサルサービスの実現として利用者へのインターネットの無料公開といったことが施策としてうたわれておりました。これは、例えば公共図書館などコミュニティーアクセスセンターに無料のインターネット端末を置くというような方法でした。それにもかかわらず、商務省の電気通信情報局の昨年の報告書では、都市部、郊外、地方、人種、所得、年齢などそういう条件差によってかなりの情報格差が生まれているというふうに言っております。この段階でデジタルデバイドという言葉を使いましたので、一気にデジタルデバイドという言葉が使われるようになったという経緯があります。
 この段階で、米国世帯の四〇%以上がパソコンを所有しておりまして、二五%がインターネットに接続しておりました。日本では、同時期に大体一三%ぐらい、半分ぐらいのインターネット普及率でした。
 日本の方でも、生涯学習審議会の報告書で「図書館の情報化の必要性とその推進方策について」という報告書があります。ここで、公共図書館を地域の情報化拠点にしてそこでインターネットを利用してもらおう、そういう方針が述べられているのですけれども、日本のこの段階での公共図書館のインターネット開放率は全体の三・五%、日米比較でいいますと二十分の一ぐらいのものでした。
 かつ、この報告書では、インターネット利用というのは図書館法で言う「図書館資料の利用」には当たらないので、無料ではなくて有料で提供して構わないというふうに言っております。つまり、政府の方でウエブ、ホームページを通じて情報公開を推進していらっしゃるのですけれども、これを公共図書館から利用する場合は有料になってしまう可能性があるという非常に皮肉な事態になっております。
 ともあれ、企業や学校などでコンピューターやネットワークの利用環境にかかわることができない、かつ高額な機器を購入することができない退職者、低所得者層などの国民に情報格差が広がってくると思いますので、ここには早い時期に、例えば図書館など地域の施設に情報ネットワーク設備の無料利用といった整備を行っていく必要があるのじゃないかと思っております。
 それから二つ目に、コンテンツの推進と人材育成が必要ではないかと思います。
 コンテンツという言い方は難しいのですが、法案の方でも、高度情報通信ネットワークの拡充、「高度情報通信ネットワークを通じて提供される文字、音声、映像その他の情報の充実及び情報通信技術の活用のために必要な能力の習得が不可欠であり、かつ、相互に密接な関連を有することにかんがみ、これらが一体的に推進されなければならないものとする」とあります。これは読み解きますと、ネットワーク、いわゆるインフラや技術の向上だけではなくて、そこで配信される情報の中身、それを活用する能力というのも同時に向上させていかなければならないということだと思います。
 インターネットがここまで発展した背景には、初期の利用者たちが質の高い、比較的技術寄りの情報を無料で提供してきたという経緯があったと思います。また、国内で利用者を広げておりますiモードのようなものも、当初から魅力あるコンテント、サービスではなくて情報の内容を提供したということが重要なポイントだったと思います。
 しかし、こういうコンテントの制作、情報の中身を制作する人材というのは、法案、推進策の方で、はっきりとその育成に関して手法や指針が感じられません。
 例えば、電子商取引を行う場合も、実際の商品やサービスを直接見せないで物を販売するわけですので、そこを広く訴求していくために、文章とかデザイン、画像、音声といったものを美しくつくり上げる必要がありますね。これは情報技術という分野の能力ではありませんで、芸術表現を含めた別の専門性を持つ人材です。技術人材とは言い切れないわけです。
 何が言いたいかといいますと、既存のメディア産業で比喩して言いますとわかりやすいかと思います。例えば出版産業の場合ですね。出版産業というのは、印刷会社と本屋さんだけで成立はしないわけです。きれいな印刷ができるとかうまく売れるということでは出版産業は成立しないわけで、出版社というところに、情報を編集する編集者であるとか作家であるとかそれを装丁するデザイナーといった人がいて初めて成立する。この人材が最も重要ですね。
 また別のメディア産業でいいますと、映画産業の例でいうとわかりやすいのですが、六〇年代に日本人の大半というのは邦画のロードショーを見ておりました。日本の映画を大体ロードショーで見ていたのですけれども、現在、日本のロードショー館の五割以上はハリウッド映画をロードショーしております。これはどういうことかというと、日本映画がテレビとかビデオなど新しい技術に対応できなかったということもありますけれども、ハリウッドの方で多くの大学などに映画関連学科や学部が設立されておりまして、関連人材の厚い層というのができてきた、そういうことが大きいと思います。
 つまり、こういうコンテントの人材育成というのを怠りますと、高度情報通信ネットワーク環境というのが整備されたときに、日本人が見るのが海外のものばかりである、日本人が受けるサービスが海外のサービスばかりであるということが起こり得ると思っております。実際に、タイム・ワーナー・グループのような企業は、もともと映画産業ですけれども、映画、出版、音楽の産業がCNN、ニュース専門テレビ局、音楽専門テレビ局と合併しまして、さらにアメリカ・オンラインというネットワーク接続業者まで一つの企業にしてしまっております。ですので、こういうところの競争力というのはばかにならないものじゃないかと思っております。
 日本の独自のコンテントといった場合、アニメとかゲーム産業を挙げる向きというのが多いのですけれども、今までパッケージメディアで提供してきましたゲーム産業というのはネットワーク環境についてはまだ未知数であると言えますし、また、アニメ関係では人件費が非常に上がっておりまして、今ではIT関連技術の導入ということも考えられておりますが、近隣アジア諸国であるとか欧米に制作を発注するというケースが目立っております。アニメーション映画などを見ていただくとわかると思いますが、日本人以外の方のスタッフのクレジットが並ぶということが多いと思います。
 こういうコンテントレベルの人材育成が重要だということと、こうしたコンテントを受容してそれを活用していく能力、いわゆる情報リテラシーの振興というのも国民的なレベルで必要になってくるだろう。これは提供される情報の価値や真偽というのを読み解く能力でありまして、パソコンの操作方法といったこととは違います。これを情報リテラシーというふうに言っております。
 それから三つ目ですね。では、そのパソコンの操作方法などはどうやって習得していくんだという話になると思いますが、これはNPOとの連携を通した国民運動化ということを推進していく必要があるのじゃないかと思います。
 基本法案の十七条にも「教育及び学習の振興」ということが定められているのですけれども、パソコンの普及に関しましては、一九七〇年代に日米中心に、マニアであるとか技術者、専門家によるボランティア的な情報であるとかソフトの提供ということが行われまして、また同時に、社会的弱者がパソコンを利用することができるようにサポートする市民活動というのが底辺に存在して、これがパソコンの普及というのを推進してきた経緯があります。
 インターネットについても同様でして、こちらにいらっしゃる村井先生のような技術者たちによるボランタリーな貢献というのが、現在のあり方を実現していると思います。何よりもインターネット自体が、それを統括していますISOC、インターネットソサエティー、先ほど話に出ましたICANNなどの組織自体、地球規模で利用者の総意をもとに非政府組織、NGOとして運営されているという経緯があります。これはインターネットガバナンスなどという言い方を現在はしておりますが、そういう意味で、ネットワーク社会というのは、こういうNGOやNPO活動などと極めて親和性が高いということが言えるかと思います。
 現在も、中古パソコンを企業などから寄附してもらって、これを学校とか福祉団体に提供する活動であるとか、インターネットを活用した情報レベルのボランティア活動、あるいは災害情報を提供する情報NPOと言われるようなもの、それからボランティア関連情報を交換するホームページを運営しているような団体とか、そういうIT関連のNPO活動というのは既にかなり存在しております。税制優遇などNPO法人への支援政策が別途NPO法の方で議論となっているわけですけれども、IT革命を国民運動として進めるのであれば、民間という言い方を関連産業という範囲で定義していただかないで、NPOやボランティア活動、市民活動と役割を分担して進めていく必要があるのじゃないかと思っております。
 最後に、幾つか細かい点ですけれども、一つは、IT革命は産業構造の転換をもたらすという言い方をされているわけですけれども、これは同時に、デジタルデバイドの解消と同様、例えば中間管理職の方の失業とか旧来の特定産業の急速な後退ということをもたらすのは間違いないわけですね。そういう意味で、ITを進める反面、そこで衰退していくようなものに対するセーフティーネット機能というのは必要だろうと思います。
 それからもう一つ、ネットワーク利用に関して、多くの調査で、プライバシー侵害の可能性が利用者の感じる不安の多くを占めている。これに対して個人情報保護法の整備というのは行われているようなんですけれども、同時に、インターネットなどは双方向のネットワークですので、利用者みずから表現とか情報発信の機会を提供していくものですね。そういう意味で、個人情報保護のための施策が言論、表現の自由をくれぐれも侵害しないように、注意深い議論が要請されると思っております。自由な情報流通とITの発展というのは、ほかの国を見てもわかりますように、相補的なものですので、そういった点を御理解いただいて、IT推進ということに取り組んでいただきたいと思っております。
 以上です。(拍手)
 

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