障害者問題研究  第44巻3号(通巻167号)
  
JAPANESE JOURNAL ON THE ISSUES OF PERSONS WITH DISABILTIES
2016年11月25日発行 ISBN-978-7-88134-515-3 C3037 定価(2,500円+税)

特集  青年期・成人期の余暇と発達

特集にあたって/田中良三(あいち発達障がい研究所)


知的障害者の余暇をめぐる状況と論点/丸山啓史(京都教育大学)
 知的障害者の余暇に関しては、余暇活動の幅の狭さが指摘されてきた。テレビを観たり、音楽を聴いたり、ゲームをしたりして余暇を過ごす人が多い。余暇についての家族依存も問題である。最近ではガイドヘルプの活用もみられるが、余暇のさらなる充実について考えていく必要がある。そのために重要になるのは、余暇活動の質に目を向けることである。余暇活動に参加する本人の思いに着目することが求められるし、消費と深く結びついた余暇への批判的視点をもつことも必要である。また、障害の程度にも関心を払いながら、余暇活動の拠点を確立していくことが大切になる。
キーワード:知的障害者、余暇、余暇活動の質


障害者社会教育における現状と課題/山ア由可里(和歌山大学教育学部)
 本稿は、障害のある人の社会教育(以下、障害者社会教育)について、@国際的な学習権保障および障害者の権利保障の動向を確認した上で、A日本における障害者社会教育の歴史的な経緯、B今後の方向性を示唆すると思われる取り組みに言及し、C今後の課題の一端について明らかにすることを目的とした。障害者社会教育の中核を担ってきた障害者青年学級の端緒は、1964年の「すみだ教室」であった。現在、障害者社会教育の実践は、公民館の主催あるいは自主講座の青年学級や各種講座、オープンカレッジや大学の公開講座など大学拡張、喫茶コーナーの運営など多岐にわたる。加えて、後期中等教育後の学習機会として、自立訓練事業を活用した「福祉型専攻科」のように、教育年限の延長要求を代位する取り組みも看取される。今後の課題として、@特別支援学校高等部卒業後の教育年限延長(進学)という選択肢の保障、A本人主体の活動を支援する具体的な内容と方法の検討、B障害者権利条約の趣旨を社会に広め、学習権保障のための「合理的配慮」の実施を指摘した。


文化・スポーツ活動への参加とその発達的意味――障害のある若者たちの語りを通して
/土岐邦彦(岐阜大学地域科学部)
 子ども・若者の発達を評価するとき、活動への参加の在り様としてその能動性に注目することが求められる。ただし、他者からのはたらきかけを受動的に対処することが困難である障害のある人にとっては、彼らの活動を「能動の相と受動の相との調整」という側面から分析することも必要である。本稿ではそのような視点から、集団的に組織される余暇活動のふたつのタイプ、すなわち「学習の場としての活動」および「趣味や関心に基づく自主的な活動」に参加する障害のある若者たちの発達を、それぞれの活動の特質をふまえながら考察した。最初に「学習の場」として組織された「障害者の演劇集団」に参加する若者たちの、その活動を通して実現した「自己の育ち」の内容を紹介した。さらに「吹奏楽団」および「登山サークル」という「自主的な文化・スポーツ活動の場」に参加する二人の若者を対象に聴き取り調査を行い、彼らの語りの中に見られる「自己の育ち」を分析することを通して、教育的まなざしから自由になることのできる余暇活動ならではの発達的意味を論じた。


【実践報告】
放課後活動で共に過ごした仲間と楽しみながらゆっくり成長する

――青年期・成人期のグループ「ひかり」の活動
/近藤すみ子(特定非営利活動法人わんぱくクラブ育成会)

いのち輝く瞬間を仲間とともに――肢体不自由の青年たちの人形劇活動
/南 寿樹(人形劇団フレッシュ)

障害のある青年たちが作るサークル活動の実践と意義――MMKサークルの余暇活動
/高木伸斉(障害福祉サービス事業所Quocare)

「暮らしの場」から見た重度知的障害者の余暇保障
ケアホームもやい職員研究集団=荒原達也・奥山直廣・木川優子・田中秀典・村瀬智宏・吉野 孝
(社会福祉法人八千代翼友会)


◆連載/実践に学ぶ

@高等学校生徒に対する相談支援の事例
――進路選択に寄り添って
/市位葉子(兵庫県・特別支援学校教員)
 【市位実践に学ぶ】/松原巨子(大津市子どもの発達相談センター発達相談員)

A真理プロジェクトから成年後見制度へ
/岡本美知子(全障研神奈川支部、元特別支援学校教員)
 【岡本実践に学ぶ】/佐々木美智子(志學館大学非常勤講師)

◆連載/発達保障のために学びたい本

世界教育学選集28『ワロン・ピアジェ教育論』
/亀谷和史(日本福祉大学子ども発達学部)

◆事例研究

話しことばのある自閉症児の言語の機能に関する研究
/篠ア詩織(奈良教育大学附属小学校教諭)

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