障害者問題研究
  第46巻2号(通巻174号)

  
JAPANESE JOURNAL ON THE ISSUES OF PERSONS WITH DISABILTIES
2018年8月25日発行 ISBN-984-4-88134-725-6 C3037 定価(2,500円+税)
特集  「4歳の節」と発達保障

特集にあたって/川地亜弥子(神戸大学)


発達保障理念の創出と「4歳の節」
白石正久 龍谷大学社会学部

1960年代の発達保障の理念の創出期における発達研究は,当時「精神薄弱児」と呼ばれた子どもたちを対象として,「1歳半の節」,つづいて「4歳の節」「7歳の節」などの発達の質的転換期を見出した.障害の有無によらない共通普遍の発達過程とその法則性の解明は,発達保障の提起とともにあって,不就学を強いられていた障害のある子どもたちの教育を受ける権利,発達への権利の保障を求める理念的根拠と実践の指針となっていった.そして発達研究と実践研究の往還によって,障害のある子どもの発達可能性と,それを導出する教育や生活のあり方が明らかにされていった.それらの研究は,50年余が経過した今日においても,研究と実践に対して基本となる視点を提供してくれている.


自他関係において立ち現れる4歳児の自我の発達的特徴
寺川志奈子 鳥取大学地域学部

本稿では,実際の自他関係において,どのように4歳児の自我が立ち現れてくるのか,保育園児ふたりの共同画制作過程の観察に基づいて検討した.その結果,4歳児は仲間との社会的相互作用において,@「誇り」を持って活動の主体として振る舞い,理由を持って相手に自己主張する,A「時間的に拡張された自己」の共有が図られる,B自他の行為をふりかえり評価し合い,自分の行為を修正していこうとする,4)仲間のよき変化を認め合い,そうして共有された成長の実感が,「自制心」の発揮につながるといった発達的特徴が捉えられた.そして,自制心の発揮にとっての,対等な仲間関係,修正可能な自由度の高い活動と遊び込める場の重要性,および自制心が形成される発達的前提について論じた.


「4歳の節」にいたる過程での行動調整の発達と言葉の役割−手指操作の発達に着目して
松島明日香 滋賀大学教育学部

本稿では,手指操作を主とした行動調整の発達に言語発達がどのように関連しているのかをみていく中で,「4歳の節」において子どもが他者との間でいかなる相互作用を起こしながら行動調整を発達させていくのかについて論じた.最初に先行研究や事例分析から,「4歳の節」をむかえる子どもたちが,他者の働きかけを手がかりにそれをどのように自分なりに意味づけて,取り入れていこうとしているのかについて検討した.次に,行動調整の発達と「自分語」の関連性について紹介し,発達初期からの「自分語」の育ちの重要性について指摘した.最後に,行動調整は大切な相手との関係の中で育まれていくものであることにふれ,それらが育まれるような人間関係と活動の中身を保障することの重要性について指摘した.


知的障害のある人の成人期における「4歳の節」
白石恵理子 滋賀大学教育学部

成人期において,「4歳の節」,すなわち2次元可逆操作期にある人たちは,これまで作業所等での労働集団や自治集団の中心になることも多く,「仕事になかまを合わせるのではなく,なかまに合わせて仕事をつくろう」とした作業所づくり運動において,人間らしい労働のありようを教えてくれた存在と言える.また,グループホーム等のくらしの場づくりを切り拓いてきた存在でもある.本稿では,2次元可逆操作期にある成人たちの労働や生活の姿を概観することにより,集団の意義や自律など,発達保障の課題を明らかにすることを目的とする.あわせて,「自分崩しと自分づくり」として現れる発達の弁証法的否定の過程についても検討する.


実践報告
就学前通園における発達障害児への取り組み
――仲間と共に葛藤をくぐりぬけて育ち合う
高橋良徳 社会福祉法人「ゼノ」少年牧場 児童発達支援センター「ゼノ」こばと園


中学部1年生の夏葉さんの「わたし,かわりたい」に学ぶ
自分で決めたから自分で乗り越えていく
柳生由布子 滋賀県立八日市養護学校


労働の場でゆっくりと成長したAさんの13年間
尾上真由美 社会福祉法人よさのうみ福祉会 夢織りの郷つむぎ


◆連載/実践に学ぶ
@ぶちあわせ太鼓の中で育つ子どもたち
大前 学 京都府立与謝の海支援学校寄宿舎
【大前実践に学ぶ】
和歌山大学教育学部 山ア由可里

A「ホームを出たい」Aさんのゆたかな生活をさぐって
粟野 賢 社会福祉法人あらぐさ福祉会 ケアホームいろどり グループホームサービス管理責任者
【粟野実践に学ぶ】
佛教大学社会福祉学部 田中智子


◆連載/ワイドアングル
色覚の多様性と社会の対応
 伊賀公一 カラーユニバーサルデザイン機構 副理事長


◆動向
生活保護制度の政策動向と生活保護裁判
尾藤廣喜 弁護士・生活保護問題対策全国会議代表理事


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