障害者問題研究
  第46巻4号(通巻176号)

  
JAPANESE JOURNAL ON THE ISSUES OF PERSONS WITH DISABILTIES
2019年2月25日発行 ISBN-984-4-88134-765-2 C3037 定価(2,500円+税)
特集  障害のある人の尊厳と権利保障

特集にあたって/河合隆平(金沢大学)


障害のある人の尊厳と発達保障/河合 隆平(金沢大学 人間社会学域)
 障害の重い子どもの教育実践に焦点を当て,発達保障の実践と理論のなかで障害のある人の尊厳をめぐる問題がどのように認識されてきたのかを整理し,アクセル・ホネットの承認論を手がかりとして,障害のある人の尊厳を実現する社会を形成するための課題を論じた.障害のある人の尊厳は,その人と周りの人とのあいだに立ち現れる.重い障害のある子どもの内面への共感と人格を承認する関係は,対象理解と教育実践に対する反省的な契機がなければ成立しない.障害のある人の存在が確かめられ,社会的承認を獲得する主体となるためには,障害のある人に合った生活と教育が具体的に保障されなければならない.


労働に基づく社会的承認をめぐる問題/丸山 啓史(京都教育大学)
 労働は,障害者の社会的承認の基盤として考えられることが少なくない.しかし,「障害者も労働している」と主張することで社会的承認を求めることは,「労働する人間にこそ価値がある」という価値観を強化する危険性がある.また,労働にともなう自信や喜びも,「労働することで経済的自立を果たす人間こそが望ましい」「労働を通して他者や社会に貢献する人間こそが望ましい」という価値観に基づいている可能性がある.そうした問題の構造を,ホネットの承認論を参照しながら示したうえで,人間の存在を無条件に肯定することについて述べる.人間の文化的主体性の形成における芸術・芸術教育の役割と意義


障がいのある人に対する強制不妊手術と国際人権基準
/棟居 徳子(金沢大学 人間社会研究域法学系)
 1948年に成立した旧優生保護法の下では,1949年から1996年までの間に,障がいのある人に対する強制不妊手術が約1万6500件実施されたと言われている.そして現在,旧優生保護法下において優生手術等を受けた被害者たちが全国の地方裁判所で被害の損害賠償を求める裁判を起こしている.本稿では,このような近年の強制不妊手術に関する議論を手掛かりに,国際人権基準等を参照しながら,障がいのある人の人権保障のあり方について検討していく.具体的には,旧優生保護法下で実施された強制不妊手術の被害実態とその人権侵害性について概説した上で,「同意」の捉え方と障がいのある人に対する構造的差別の関係性について検討するともに,同様の人権侵害の再発防止と構造的差別の撤廃に必要ないくつかの観点,つまり「障害の社会モデル」,障がいのある人の主体性,差異と多様性の尊重,人権の不可分性について論じる.


報告
鈴木航氏自死裁判にみる障害者雇用における障害者の尊厳

/橋 智(東京学芸大学)、堀田 らな(一橋大学法科大学院)


報告
安永健太さん死亡事件の裁判と運動 問われるこの国の人権規範
/増田 一世(NPO法人日本障害者協議会常務理事,公益社団法人やどかりの里)


報告
障害のある者としてやまゆり園事件を考える
/小森 淳子(岐阜経済大学非常勤講師)


報告
津久井やまゆり園の再生と障害福祉に問われている課題

 /荒井 忠(神奈川県・社会福祉法人偕恵園 偕恵いわまワークス施設長)


◆連載/実践に学ぶ
@定時制高校の教育実践
高校生・障害者の貧困に立ち向かう夜間定時制高校の現場
/飯塚 忠(高等学校教員)

【飯塚実践に学ぶ】
/京都府立高等学校特別支援・進路支援教員 谷口 藤雄


A児童福祉施設の実践
そうなんや,ぼくらのからだはミラクルボディ
 子どもたちとともに育ちあう私たちのいま2018
/看護師 吉田 良恵

【吉田実践に学ぶ】
/日本福祉大学 伊藤 修毅


◆連載/ワイドアングル
障害者の読む権利とマラケシュ条約/野村 美佐子(日本デイジーコンソーシアム事務局長)


動向
放課後等デイサービスにみる2018年報酬改定の問題点
/立正大学社会福祉学部 中村 尚子

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