特集 権利としての障害者スポーツ 特集にあたって  ／山中冴子（埼玉大学）オリンピック／パラリンピックの現代的意義と課題 内海 和雄 一橋大学・広島経済大学名誉教授 古代オリンピックは約1200年間行われた．そして現在のオリンピックも120年余続いている．その理由は，人類的遺産ともいうべき価値が内包されているからである．それはオリンピックを通してのスポーツの普及であり，世界の交流と平和の促進である．オリンピックは一部の富者の大会から，現在は人種，門地，宗教等を問わず，平等に参加できるようになった．また女性も男性と同数で参加可能となった．さらにパラリンピックも誕生し，それは障害者のスポーツ参加，社会参加を促進している．しかし，肥大化したが故の弊害も出ている．その政治的，経済的利用である．オリ・パラの主要なレガシーは国民のスポーツ参加促進であるべきであり，それとの連結した発展が期待される． 障害者スポーツの現状と課題 ――障害者のスポーツ権の実現に向けて 安倍 大輔 白梅学園大学子ども学部子ども学科准教授 障害者のスポーツを表す言葉は以前に比べると多様化してきている．また障害者のスポーツを取り巻く環境は，パラリンピックでのメダル獲得や競技力向上には多くの予算が費やされる一方で，障害のある人たちが日常的にスポーツを行うための条件整備について十分ではない．2011年に制定されたスポーツ基本法には明記されているスポーツ権を実現していくためには，ヨーロッパでの障害者のスポーツ・フォー・オールから学ぶ点があるのではないか． 障害児体育の現状と課題 大宮 ともこ 日本福祉大学スポーツ科学部 障害児体育に関わる現場の教師や子どもの声をもとに，子どもの障害や認識に合わせた教材を用意せず，主体性を育てずやらせる体育によって体育嫌いの子どもがうまれていること，教師も悩んでいること，特別支援学校等の教育環境の十分でないことを指摘した．背景には体育科についての戦前からの訓練主義的な考え，1960年代の職業教育的な体力づくりの体育観の影響もあり，能力主義的な学習指導要領にも問題がある．しかし，教科として運動文化が内包する文化的，倫理的，歴史的価値を掘り下げ，教育内容を再構成して取り組みをつくっていくことが求められることは学校体育研究同志会などで確かめられてきた．その上で障害児体育では，障害がありつつも自分の身体に意識を向け，ともに競技する他者に意識を向け，パフォーマンスを発揮しつつ運動文化を享受するのであり，そのために子ども理解を深め，教材を工夫し，教師集団を築きつつ授業づくりをすすめなければならない． 実践報告 特別支援学校の体育の授業づくり ――知的障害のある子どもたちに豊かな運動文化を 萬福 庄子 兵庫県立姫路特別支援学校 実践報告 みんなでつくる新しいスポーツ文化とカルチャークラブ 吉田 隆 福井大学非常勤講師 報告 京都障害者スポーツ振興会のあゆみにみる障害者スポーツ 中村 芳道 京都障害者スポーツ振興会事務局長 視覚障害者のマラソン フルマラソン完走500回をめざして 清水 健男 神奈川県在住・ブラインドランナー ◆連載／実践に学ぶ ①小学校特別支援学級の実践 発達障害の子どもたちの学級をつくる 埼玉県・小学校情緒障害特別支援学級担任 児山 和子 【児山実践に学ぶ】居場所となる学級が自己認識の力を育てる 元 小学校特別支援学級教員 森 敦子 ②専門施設による療育の実践 Aちゃんの豊かな生活とあそびから拡がる世界 ――保育者が大切にしたい視点 湧水町子ども発達支援センターみのり 児童発達支援管理責任者 浜田 友紀 【浜田実践に学ぶ】“寄り添う”から，あそび実践の質の追求へ 麦の芽福祉会むぎっこ保育園 黒川 久美 ◆連載／ワイドアングル 中途失聴・難聴者を巡る諸問題 新谷 友良 全日本難聴者・中途失聴者団体連合会 理事長 動向 2011年の学校改革以降のスウェーデンの教育における個への支援体制 サリネンれい子 ニネスハム基礎特別支援及び特別支援学校高校，第一教諭及び特別教員 ウプサラ大学教育科学学部特別支援教育専攻修士課程在籍 書評 清水寛著『太平洋戦争下の全国の障害児学校 ――被害と翼賛』 評者 平田勝政 長崎ウエスレヤン大学 ◆本誌47巻3号 紹介チラシ（PDF） ■障害者問題研究 バックナンバーへ |
