障害者問題研究 第47巻4号(通巻180号) |
JAPANESE JOURNAL ON THE ISSUES OF PERSONS WITH DISABILTIES 2020年2月25日発行 ISBN-984-4-88134-845-1 C3037 定価(2,500円+税) |
特集 高度成長期の障害者問題と発達保障 特集にあたって/越野和之(奈良教育大学) 高度成長期の発達保障運動における主体形成 河合 隆平 首都大学東京 人文社会学部 1960年代後半に生成された発達保障運動を通して,高度成長期における障害のある人の生存と発達の保障を求めた人びとの主体形成のあり方を論じた.1970年代初めに展開された障害児教育権保障運動は,障害のある子どもの発達・権利侵害をとらえ返しながら権利保障の道を探りながら,運動に参加する人びと自身が障害のある人びととの関係のなかで矛盾や葛藤と向き合いながら主体形成をはかっていく過程であった. 障害の重い子どもたちの「生きる証」と発達へのまなざし――1960年代の記録映像を中心に 玉村 公二彦 京都女子大学発達教育学部 1960年代前半,島田療育園などの重症心身障害児施設の誕生をみるが,障害の重い子どもの発達と療育を支える制度基盤は極めて脆弱であった.障害の重い子どもの生存に関わる問題が社会問題化されていったが,その一端を担ったのが映像である.障害の重い子どもを取り上げた映画ニュースの映像,施設を中心としたセミドキュメンタリー,重症心身障害児の発達を映像として取り出す試みなどを跡づけ,1960年代に重い障害のある子どもの受容や発達を捉える“まなざし”があり,映像として共有されようとしたことを示した. 筋ジストロフィー患者の生活圏拡張運動と「筋ジス運動」 ―――「西多賀ワークキャンパス」の障害者たち 清水 貞夫 宮城教育大学名誉教授 宮城県仙台市では1960〜70年代にかけて,島野武革新市政の下で市民運動が活発化した時代を背景として,二つの障害者運動があった.これらは,「西多賀ワークキャンパス」を拠点とし,一つは生活圏拡張運動であり,二つには筋ジストロフィー患者の筋ジストロフィー研究所設立運動である.生活圏拡張運動は,障害者を障害者にしているのは社会の物理的バリアと理解し,街のバリアの解消を目指した運動であった.ここには素朴な障害の社会モデルがあり,福祉の街づくりは障害者にとって,生活圏ではなく生活権であるとの認識の下,仙台市の福祉都市認証につながった.筋ジストロフィー研究所設置運動は,「筋ジストロフィー患者を救う会」が映画「ぼくのなかの夜と朝」(監督=柳沢寿男)を東北各地で上映するとともに,街頭で署名活動を展開した運動であった.これは,政策医療の下,国立療養所に「収容」された,20歳までに他界するとされた筋ジストロフィー(デュシャンヌ型)患者たちの存在を世間に知らせしめるとともに,生きる勇気を与えるものであり,国立神経センター開設につながった. 全員就学への道程における重度重複障害児問題 ――肢体不自由教育を中心に 中村 尚子 立正大学社会福祉学部 東京都の希望者全員就学(1974年)は養護学校義務制実現を射程にした.障害児の教育権保障における重要な自治体施策であった.ここに至る障害の重い子どもへの教育保障が拡大するプロセスを.親の会の動向と「特殊学級」に焦点をあてて検討した.まず,重複障害児問題と交差する肢体不自由児にとっても教育の場がきわめて限られていたことを明らかにした.その上で,広域を通学圏とする都立学校ではなく,区市の「特殊学級」開設に向かった運動の特徴について述べた.障害の重い子どもが入級するためには.軽度の障害を想定した「特殊学級」を見直す必要があったこと,親が主体となって不就学の実態を明らかにして肢体不自由学級の必要性を訴えていたことなどが明らかになった. 歴史に学ぶ 広島市における療育づくりの出発点――運動と実践の歴史とつなぐ会に学ぶ 全国障害者問題研究会広島乳幼児サークル 塩見陽子 歴史に学ぶ 障害の重い子どもを「実践の宝」に ――1960年代後半から1970年代前半のびわこ学園における教育権保障のとりくみからの学び 能勢ゆかり 全国障害者問題研究会滋賀支部 歴史に学ぶ “自分たちの学校の歴史” ――その教材化の試み 野津 保 島根県教育庁隠岐教育事務所 ◆連載/実践に学ぶ @小学校特別支援学級の実践 「きょう,ずこう,なにする?」―─子どもが思わず手をのばしたくなる授業を目指して 奈良教育大学付属小学校 池田 翼 【池田実践に学ぶ】 鳥取大学地域学部 三木裕和 Aグループホームの実践 一人で生きない!――ひろしさんがグループホームからサテライト型住居を経て結婚に至るまで 山口博之 社会福祉法人夢21福祉会(神奈川県)グループホーム管理者 【山口実践に学ぶ】キーワードは「自分で考えてやってごらん」 ――「一人でできる」から「支えてほしい」に変わる実践の醍醐味 社会福祉法人さつき福祉会 伊藤成康 ◆連載/ワイドアングル 「ひきこもり支援」の危うさと抵抗としての協同 岡部 茜 大谷大学社会学部 動向 天皇制の原点と現点――日本国憲法から考える 清水雅彦 日本体育大学スポーツマネジメント学部 障害者問題研究2019年度(第47巻)総目次 ◆本誌47巻4号 紹介チラシ(PDF) ■障害者問題研究 バックナンバーへ |
■ご注文は、注文用紙(ここをクリッ
クしてください)にて電子メールしてください。
確認できしだい発送作業いたします。送料含む代金は同封の郵便振替等にて10日間以内にご送金ください。
■「全障研出版部オンライン」からもご注文いただけます