障害者問題研究 第48巻1号(通巻181号) |
JAPANESE JOURNAL ON THE ISSUES OF PERSONS WITH DISABILTIES 2020年5月25日発行 ISBN-984-4-88134-855-0 C3037 定価(2,500円+税) |
特集 知的障害教育の現在 その固有性と役割 特集にあたって/橋 智(日本大学) 知的障害教育の制度とその今日的状況 /越野 和之(奈良教育大学) わが国における知的障害教育を概括的に振り返ると,養護学校義務制の実施などを経て障害の重い場合を学校教育から排除するという制約は原則として克服される一方,「二つの特別な場における教育」という枠組は今日まで基本的には変わっていない.本稿ではその経過を経年的に整理して上記の概括の内実を跡づけるとともに,特別支援教育実施以後の13年間について,特別支援学校の在籍者の障害種別ごとの動向および学級規模の推移を取り上げてその特徴を検討した.その上で,通常学級における知的障害教育をめぐる問題と,義務教育の前後における知的障害教育の制度整備の課題を指摘した. 戦後の「特殊教育」と知的障害概念 ――「教育上特別な取扱を要する児童生徒」から「障害児」へ /清水 貞夫(宮城教育大学名誉教授) 文部省の「教育上特別な取扱を要する児童生徒の判別について」(1953年,「303号通達」)は,教育学的概念であり,そこには「特別な教育的ニーズ児」の一環として知的障害が説明されていた.そこで示された知的障害は「恒久的遅滞」という状態像であった.1962年に,「303号通達」は廃止され,「380号通達」で「恒久的遅滞」は除去されたものの,特殊学級・養護学校振興の下,特殊学級は促進学級化した.他方,重度精神薄弱,重症心身障害,盲精神薄弱,ろう精神薄弱などへの対応が求められるとともに,失算,失読,失行,自閉性精神薄弱などのケースが報告されるなど,知的障害概念の跛行的拡大と多様化が起こる.こうした展開過程で,特殊教育は「障害児」教育であるという主張が凌駕することになる.しかしながら,特殊教育は,「障害児」教育になるのでなく,「特別なニーズ教育」になるように,“状態としての知的障害”を純化する契機が存在したが,それはなされなかった. 生涯発達支援の視点から見たダウン症候群 ――学齢期の発達課題と支援 /菅野 敦(東京学芸大学名誉教授) 本稿では,ダウン症候群の身体・健康,性格・行動,知能と言語の発達特徴に関して,これまでの研究から明らかとなっている知見をレビューした.さらに,生涯発達支援の視点からダウン症の支援を考えるために学齢期を中心にライフステージ各期の課題を見出し,支援のポイントを整理した. 知的障害者の「権利としての生涯学習」 /國本 真吾(鳥取短期大学幼児教育保育学科) 国による障害者の生涯学習推進政策が始められ,これまで取り組まれてきた学校教育修了後の学習機会を実現する場や,その必要性を求めてきた運動に注目が寄せられている.しかし、行政による「政策としての生涯学習」は、先行して積み上げられてきた運動や実践の成果を部分的に解釈し、学習の主体である障害者自身の発達の姿は意識されていない。そこで,行政による「政策としての生涯学習」を超えて,「権利としての生涯学習」の実現が求められている.本稿では,知的障害者にとっての生涯学習を取り巻く現状を整理し,青年期の知的障害者の姿をもとに学校教育修了後の学習機会の必要性を明らかにする。そして、学校教育修了後の生涯学習という発想ではなく,人間の一生涯にわたる学習機会としての生涯学習の意味を、“life-wide”の視点から再考する. 報告 当事者のニーズから考える知的障害教育の機能・役割 /日本大学 橋 智、東海学院大学 池田敦子、金沢大学 田部絢子 実践報告 理科・社会科の授業を通して子どもたちに伝えたいこと ――知的障害のある生徒に教科学習を /塩田 奈津(京都府立与謝の海支援学校) 実践報告 自・他の大切さを学び合い,自己を育む ――性と生の授業「うまれるよ いのち」 /桜井 佳子(東京都・小学校特別支援学級) ◆連載/実践に学ぶ @特別支援学校の訪問教育の実践 訪問教育で届けたい「ひと」と「文化」 /宮城県立名取支援学校 八反田 史彦 【八反田実践に学ぶ】人間はおもしろい NPO法人ささゆり会 原田文孝 A青年期の学びの場 青年らしい主体的学びを求めて “まなびキャンパスひろしま”の取り組み /まなびキャンパスひろしま 支援員 小西 寛之 【小西実践に学ぶ】何が主体性を引き出すのか 京都教育大学 丸山啓史 ◆連載/ワイドアングル 知的障害者にとっての学び ――みんぱくSama-Sama塾の試み /信田 敏宏(大学共同利用機関法人 人間文化研究機構国立民族学博物館) 動向 ILO暴力及びハラスメント撤廃条約(190号条約)と日本の課題 /棟居 徳子(早稲田大学社会科学総合学術院) 書評 堤 英俊 著『知的障害教育の場とグレーゾーンの子どもたち──インクルーシブ社会への教育学』 評者 河合 隆平(東京都立大学) ◆48巻1号 紹介チラシ(PDF) ■障害者問題研究 バックナンバーへ |
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