声明
だれもが安心して生きられる平和でインクルーシブな社会の実現を
−津久井やまゆり園の殺傷事件から1年を前に


2017年7月20日  全国障害者問題研究会常任全国委員会

 昨年7月26日、神奈川県相模原市の津久井やまゆり園で19人のいのちが奪われ、27人が重軽傷を負った悲惨な事件から、まもなく1年がたちます。やまゆり園で暮らしていた人びと、家族のみなさんが、安心できる日常をとり戻せるよう、国と自治体の責任において、本人のねがいや家族の希望、職員や関係者の思いにもとづいた暮らしの場の再出発が求められています。そして、これから始まる裁判のなかでも事件の真相と背景が明らかにされることを通して、障害のある人びとのいのちと尊厳が守られる社会のあり方が、真摯に問われることを望みます。

 この間、国は事件の「再発防止」を掲げ、精神障害のある人の監視を強化する精神保健福祉法の改正を強行しようとしています。「我が事・丸ごと」政策では「自助・互助・共助」を強調し、地域の住民や関係者による助け合いを法律によって強要しています。障害のある人に対する監視と偏見を強め、公的な支援や援助が必要な人たちに”自分たちで助け合いながら生きること”を義務づけるような「弱くもろい社会」では、社会的支援を必要とする人ほど、社会や他人に負担をかける存在として締め出されていくのではないでしょうか。

 今回の事件と関連づけて「脱施設」や「地域移行」が一面的に強調されています。事件の背景と入所施設のあり方を直接的に結びつける議論が、施設での暮らしを希望する人とその家族、よりよい暮らしを実現するために努力してきた施設職員・関係者のねがいを押しとどめてはいないでしょうか。地域の福祉施策や住民の理解が遅れている現実を見すえながらも、障害者権利条約のいう、だれとどこで生活するかを選択する権利を保障し、地域で安心して生きるという視点から、入所施設を含めた暮らしの場のあり方を考えることが大切です。

 事件の根底にある「障害者は不幸をつくることしかできない」という考え方は、人間を経済的な価値や能力で評価し、序列をつけようとする社会のあちこちに深く根をおろしています。事件後、障害のある本人やその家族からは「自分は生きていてよいのか?」「世間に迷惑をかけていないか?」「街の人の視線が怖い」という不安の声が、たくさん聞かれました。

 私たちは、人間のいのちと尊厳を軽んじる社会の考え方や仕組みを否定し、憲法と障害者権利条約の理念を地域の隅々にひろげながら、だれもが安心して生きられる平和でインクルーシブな社会の実現にむけて、みんなのねがいと力を持ちより、発達保障をめざすとりくみをさらに進めていきましょう。
 

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