声明
差別と排除のない社会にむけて自由に語り、学び合える場を
−横浜市緑区における人権啓発講演会の講師依頼取り消しについて−


2020年2月21日  全国障害者問題研究会常任全国委員会

 朝日新聞2月17日の報道によれば、横浜市緑区が開催した人権啓発講演会で、主催者である緑区は、日本障害者協議会(JD)藤井克徳代表(きょうされん専務理事)に講師を依頼し承諾を得た後、特定政党に偏っているのではとして、一方的に講師依頼を取り消したとされています。

 同区は事実関係を認め、謝罪を行ったとも伝えられていますが、障害のある人とその人権保障に関わる分野での講師の実績と専門性を問題にするのではなく、インターネット上の一部の情報をもとに、一方的に講師依頼を撤回したことは、明らかに行政の中立性を逸脱するものです。
 そもそも、ある個人や、その個人が所属する団体と、特定政党との関係を理由として講師から除外することは、行政みずからが「政治的中立性」を侵すものと言わざるをえません。
 市民が人権を学び、社会の多様性について理解を深めるはずの機会に、行政が思想・信条により個人を差別する対応をとったことは、とりわけあってはならないことです。
 今回の不当な対応は、多様な立場や考えをもつ市民が人権について語り、学ぶ活動を萎縮させ、自由闊達に議論する機会を制限する動きを加速させる恐れがあります。こうした事態を黙認することは、障害のある人たちの抱える多様な問題とその解決のみちすじを、事実に基づいて究明しようとする多彩な学習と研究の活動を阻害し、結果的に、障害のある人の権利保障を遠ざけることにつながりかねません。

 わたしたちは、差別と排除のない社会の実現をめざす立場から、行政が市民の人権啓発に取り組むことを求め、日本国憲法と国際条約の人権規定と精神をふまえて、障害のある人のねがいを中心に、自由に語り合い、学び合える場をつくっていきます。 

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