緊急声明
障害のある子どもと家族の健康と生活を守るために
一律の休校要請は撤回を


2020年3月2日  全国障害者問題研究会常任全国委員会

 安倍首相が2月27日の夕刻に突如表明した小学校、中学校、高等学校、特別支援学校(以下では学校)への「3月2日から春休みまで」の休校要請は大きな混乱を引き起こしています。
 私たちは、@子どものなかでの集団感染の事例は現在のところ顕在化せず、むしろ大人から子どもへの家庭内の感染が主であること、また重症化する事例は大人よりも少ないとされること、A長期休校に伴って生じるさまざまな問題への対応策を検討しないまま、拙速に3週間にも及ぶ休校を強要したこと、Bいまだ感染者、子どもの感染者が確認されていない自治体などにも全国一律の休校を求めたことなど、科学的根拠と十分な検討のない施策であることに強い懸念を表明するとともに、その施策が、学校設置者はもとより、文部科学省、厚生労働省など関連省庁との合意形成すら行われないまま、首相とその周辺のきわめて限られたメンバーの独断に基づいて、事実上強行されたことに対して強く抗議します。
 そして、障害のある子ども、障害のある人の尊厳、基本的人権、発達の保障を目的とする研究運動団体として、今回の休校要請が、障害のある子どもとその家族に対し、以下のような深刻な問題をもたらすことを指摘し、首相による一律の休校要請は、速やかに撤回することを求めます。また、学校の機能を生かす方向で、子どもへの感染を予防することと同時に、障害のある子どもと家族の健康と生活を守る方途を、国民的な英知の結集と議論によって検討していくことを呼びかけます。

1)安倍首相による今回の学校への休校要請、また2月29日の記者会見では、特別支援学校、特別支援学級そして通常学級に在籍する障害のある子どもの実態、家族を含む生活の実態には、まったく考慮が払われていません。
 障害のある子どもたちとその家族の、家庭や地域での生活には、特別な困難があります。通学ができないことによる生活リズムの乱れ、生き生きした活動や集団が保障されない生活のなかでの行動の不安定化などは容易に想定されることです。病気にかかりやすく治りにくい子どもたちのいのちと健康を守るためにも、教育と医療の専門的な知見をふまえた継続的な対応が欠かせません。政府・文部科学省ならびに各自治体は、学校や教育委員会が子どもや家族の実態をふまえた対策を主体的に検討し、柔軟に対応できるような支援策を速やかに講じるべきです。

2)文部科学省は「福祉部局や福祉事業所との連携」「地域の障害福祉サービス等の活用」による「幼児児童生徒の居場所の確保」を、また厚生労働省は、休校への代替措置として「地域の障害福祉サービス」や「放課後等デイサービス」の利用を通知していますが、現状でも充分ではない報酬のもとで職員不足や経営困難にあえいでいます。放課後児童健全育成事業(学童保育)には午前中からの開所に対して1万円余の加算をするとのことですが、これでは十分な体制を確保できないのはすでに明らかです。
 また狭い場所での活動を余儀なくされているこういった「サービス」のもとで、学校以上に感染のリスクが高まることも想定されます。

3)障害のある子どもの保護者も、限られた条件のもとで就労し、生活を支えています。そういった薄氷のうえでの就労が、いっそう困難なものになります。就労が継続できる条件や所得の保障が十分に配慮されるべきです。

4)障害や生活の困難によって施設に入所し、そこから通学する障害のある子どもも少なくありません。その日中の活動が施設に限られることによって、施設の職員体制の確保や活動の保障は困難を極めます。そのことへの対応が早急になされるべきです。

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