「みんなのねがい」の好評シリーズは、単行本『新版・子どもの障害と医療』
(尾崎望、出島直編、2000年、全障研出版部)になっています。
「みんなのねがい」2002年10月号では、つぎの特集(監修・尾崎望)を企画しました。
詳しい内容にはふれられていませんので、不明な点や、さらに詳しく知りたい点は
かかりつけの医療機関や医師にご相談ください。 (「みんなのねがい」編集部)



障害の見方


障害の見方 -- 1980年、2001年の国際障害分類から

 障害の原因、症状、診断、治療など、医学的に障害についての認識と技術を深化発展させる基礎的・臨床的な研究や実践は、日々積み重ねられています。その成果は、医療だけでなく、子育て、保育・療育、学校教育、福祉、その他の分野での、障害のある人の生命と生活を支える取り組みに欠かすことはできません。
 医学との関わりを念頭におきながら、基礎的な障害の見方についてふれたいと思います。

●1980年の国際障害分類
 障害の見方が、個人に帰属する特性であるとするものから変化してきたのは、1970年代以降です。
 この新しい動きに大きな影響を与えたのは、WHO(世界保健機関)が1980年の「国際障害分類(試案)」で提起した障害の理論モデルです。これは障害を、インペアメント(機能・形態障害)、ディスアビリティ(能力障害)、ハンディキャップ(社会的不利)の、3つのレベルに分けて考えようとするものです。
 このモデルは「障害は、生物学的レベル、個体(個人)的レベル、社会的レベルという階層からなる」という障害観を提示し、社会的不利を含めることで社会のあり方との関わりで把握する必要性を明確にした点に特徴があります。
 しかしその後、実際に活用されるなかで、社会的不利の分類項目が少ない、環境との関係で障害をとらえるべきだ、機能障害に医学の進歩が反映されていない、障害者の内面の重要性が位置づいていない、などの批判が生まれました。そして2001年、新しい国際分類が発表されました。

●2001年の新しい障害分類
 
新しい分類では、機能障害、能力障害、社会的不利に代わる言葉として、心身機能・身体構造、活動、参加の三つが採用されました。そして、それぞれにおいて問題を抱えた側面を「機能障害」「活動の制限」「参加の制約」として、その程度を示します。
 つまり「〜ができない」「社会において不利をこうむる」といったマイナスイメージで能力障害や社会的不利を規定することをやめて、健康という目安で整理し、障害をもつ人の運動機能や精神活動、コミュニケーションや動作などにどんな制限があるのかに注目するようになったのです。
 この背景には、世界的な障害者の人権保障運動の成果が反映していることはまちがいありません。ここで注意しておく必要があるのは、新モデルでも「機能障害」は障害の基礎レベルで位置づけられていることです。障害を環境などとの関係において理解することは大切ですが、そのあまりに医学的な側面などが軽視されることがあってはいけません。
       

葉

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