「みんなのねがい」の好評シリーズは、単行本『新版・子どもの障害と医療』
(尾崎望、出島直編、2000年、全障研出版部)になっています。
「みんなのねがい」2002年10月号では、つぎの特集(監修・尾崎望)を企画しました。
詳しい内容にはふれられていませんので、不明な点や、さらに詳しく知りたい点は
かかりつけの医療機関や医師にご相談ください。 (「みんなのねがい」編集部)
自閉症
自閉症 -- 3つの症状がワンセットで現れる ●三つの症状がワンセットで現れる 自閉症とは、生まれつきの社会性の発達の乱れを中心とする臨床的症候群(多くの原因をもっているが同じ行動的な特徴をもつグループ)です。 自閉症は、@社会性の障害、Aコミュニケーションの障害、B想像力の障害とそれに基づく行動の障害、の三つが基本的な障害です。この症状は必ずワンセットで別々に出ることはありません。 社会性の障害は、自閉症の症状のなかでも中核に位置します。親を求めない、目が合わない、平気でどこかに行ってしまうという幼児に特徴的な行動に始まって、双方向の交流ができない、人の気持ちが読めないといった社会的相互反応の問題に展開していきます。 コミュニケーションの障害では、オウム返し、疑問文による要求、比喩や冗談がわかりにくいなどの言語(会話)による気持ちの交流が難しいことが特徴になります。 想像力の障害とそれに基づく行動の障害は、一般的にこだわり行動とよばれるものです。その内容は多彩ですが、最も早く現れるのはクルクル回ったり、手を振ったりする自己刺激行動の反復です。そして、特定のものにだけ著しい興味を示すようになり、さらに順番や物の位置への固執などへ変化していきます。 自閉症を合併する発達障害は、染色体異常、遺伝病、代謝病、感染症、未熟児や周産期障害など、あらゆるタイプを含むことが知られています。自閉症と同じ生まれつきの社会性の障害をもつグループを広汎性発達障害と言いますが、これだけ大きなグループは他にありません。 ●薬も有効な支援手段 自閉症の明確な症状(著しい多動、自傷、パニック、興奮、こだわりなど)が周囲の対応だけでは改善されず、限界があると判断されたときには薬物療法が考慮されます。 使用される薬剤は、過剰な神経の伝達を遮断することによって行動の平穏化をはかる抗精神病薬、中枢神経(脳)を刺激して覚醒レベルや注意力を高め行動をコントロールするための中枢神経刺激剤、自閉症に合併するてんかん発作を抑制する抗てんかん剤、神経伝達物質(モノアミン)の再取り込み阻害作用で抗うつ作用や気分安定作用を期待する三環系抗うつ薬、神経伝達物質の一つであるセロトニンの再吸収を阻害することで作用時間を増加させ脅迫神経症状やうつ症状、パニック障害を改善させるセロトニン再取り込み妨害剤、などです。 薬は、その効果と副作用、限界を知りながら使用すれば、本人の苦痛の緩和と生活の質のアップのための有効な支援手段となります。 |