「みんなのねがい」の好評シリーズは、単行本『新版・子どもの障害と医療』
(尾崎望、出島直編、2000年、全障研出版部)になっています。
「みんなのねがい」2002年10月号では、つぎの特集(監修・尾崎望)を企画しました。
詳しい内容にはふれられていませんので、不明な点や、さらに詳しく知りたい点は
かかりつけの医療機関や医師にご相談ください。 (「みんなのねがい」編集部)
ダウン症
●原因は21番染色体の過剰 ダウン症は21番染色体の過剰によっておこる障害です。染色体異常のタイプは大きく三種類。21番染色体が三個ある21トリソミー型(約95%)、過剰な21番染色体が他の群の染色体に転座する転座型、正常な染色体細胞と21トリソミー細胞とが混在しているモザイク型です。 特有の顔つき、明るくて人に好かれる性格など、ダウン症の人の特徴点はいろいろあげられますが、ここでは健康管理が必要な身体的な特徴点に目を向けたいと思います。 ●生命と生活に関わる合併症 以前、ダウン症の人は20歳ぐらいまでの命と言われていました。現在では、50〜60歳ぐらいの生命予後であると言われていますが、それでも障害のない人と比較して短命の傾向にあります。このことと関わって指摘されるのは、さまざまな合併症です。 ダウン症の合併症で最も多いのは心臓疾患です。全体の30〜40%の人に見られます。高頻度に見られるのは心室中隔欠損、心内膜欠損、動脈管開存などです。心臓手術は有効な治療方法です。 消化器系では、食道や腸に異常が見られるケースが少なくありません。食道閉鎖、鎖肛、十二指腸閉鎖など、生後まもない時期に手術が必要となることもあります。 眼科系では、斜視、白内障、屈折異常(近視、遠視、乱視)などです。とくに屈折異常は多く、近視・遠視に乱視を併せもっている人も多くいます。就学までには検眼をして、めがねなどで視力を確保することが必要です。 耳鼻科系では、外耳道閉鎖、中耳炎、鼻炎などです。ダウン症は言語発達が遅れ気味ですが、難聴も言語発達の阻害因子です。ダウン症児の半数近くに聴力の問題が見られますが、そのほとんどは滲出性中耳炎です。何回もくり返すうちに鼓膜の可動性が悪くなってしまいます。 その他、内分泌系では甲状腺機能異常、耐糖能異常、整形外科系では環軸頸椎の形成不全などもよく現れる合併症です。 ●栄養コントロールと運動の習慣を 運動発達とそれにともなう肥満も課題となります。ダウン症の人は全体的な筋肉の緊張性の障害があるために姿勢や運動の遅れがめだちます。心臓疾患による運動の制限や加齢による体重増加が加わって、肥満につながってしまうこともあります。学童期の頃から栄養コントロールと運動の習慣が必要になります。 糖尿病など成人病が多いという報告もあります。ダウン症では、知的障害に対応する保育、教育、福祉の支援に加えて、赤ちゃんの時期からおとなまで健康面での支援が欠かせません。 |