障害乳幼児の地域療育 絶版

 近藤直子(日本福祉大学教授・全国発達支援通園事業連絡協議会会長)
 白石正久(大阪電気通信大学教授・全障研副委員長) 編

  
 
  2003年8月10日 発行  ISBN4-88134-131-6 C3036
 
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目   次

はじめに

第1章 早期発見から早期療育につなぐ
  〔1〕 障害がわかったときの早期の支援/近藤直子(日本福祉大学)
  〔2〕 保健所・保健センター/近藤直子
  〔3〕 親子教室 大阪府羽曳野市/黒崎愛子(羽曳野市保健センター)

第2章 地域での生活を支える
  〔1〕 家族への支援は発達の支援/近藤直子
  〔2〕 障害児通園事業/大迫より子(鹿児島子ども療育センター)
  〔3〕 保育所・幼稚園/藤上真由美(大阪府高石市児童福祉課)
  〔4〕 総合的な通園施設―療育センター
      地域療育センター 名古屋市/加藤峯子(南部地域療育センターそよ風)
      心身障害児総合通園センター 広島市/葛城妙子(広島市児童療育指導センター)
  〔5〕 療育実践の創造
      発達のおくれをもつ子ども/白石恵理子(滋賀大学教育学部)
      肢体不自由をもつ子ども/坂野幸江(南大阪療育園)
  〔6〕 生活の主人公になる
      私たちの仲間づくり 鹿児島の経験から
                   東  嘉子(鹿児島子ども療育センター親の会)
                   深瀬好子(よりよい保育・療育を考える会)
                   広瀬英子(鹿児島障害児者父母の会)
      利用できる制度のいろいろ/海老原功(大阪府貝塚市児童福祉課)

第3章 地域のネットワークづくり
  〔1〕 障害児(者)地域療育等支援事業の役割と今後の課題/白石正久(大阪電気通信大学)
  〔2〕 障害児(者)地域療育等支援事業の実際
      民間の通園施設による取り組み 広島県東部地域/塩出順子(「ゼノ」こばと園)
      公立の療育センターによる取り組み
       大阪府寝屋川市/藤本財久(寝屋川市立あかつき園・ひばり園・第二ひばり園)

おわりに


■みんなのねがい 2003年10月号

 手をつなげば地域療育は前進する
       宮崎市子ども発達支援センター 田村智佐枝

 4月から、中核市を中心にした一市六町のエリアで障害幼児の療育に携わり、以前にもまして障害児(者)地域療育等支援事業の具体化の道を探っていた私は、本書を第3章から読み始めました。総合的支援の必要性はまさに職場全体の課題であり、何とか共通の認識をもちたいと願っていたので、広島県福山市の取り組みは示唆に富むものでした。読み終わらないうちに職場のコーディネータや専門職に本を紹介していました。
 本書を読みすすみながら、10年ほど前に同じく全障研から出版された『はじめの一歩を大切に』を思い返しました。当時は「療育とは何か」からはじめなければならず、○○療法という技法や考え方が小さな田舎町にも押しよせ、あれこれを迷う親御さんに正面から向き合い、子どもの発達課題に取り組もうとしました。そのとき同書をおおいに参考にしました。
 そのころに比べると乳幼児の制度は大きく変わりつつあります。その中で、地域に応じた療育のあり方が論議され、ねばり強い要求運動の中で療育の場が確実に広がっていることを本書で知ることができます。都市部と町村部の療育の場のあり様はおのずと違い、運動のすすめ方も一様ではありません。小さな町だからとか、財政基盤が脆弱だからとあきらめるのではなく、知恵と工夫、そして連帯で療育の場をつくりだした鹿児島県大口市の報告、同じく鹿児島の親の会の活動に脱帽するとともに、励ましをいただきました。
 ここ数年は、障害児通園事業への支援費制度導入という事態の中で、これまでこつこつと積み上げてきた地域での障害乳幼児療育が崩れされてしまうのではないかという危機感があります。本書は、この間の障害乳幼児療育の発展についてしっかりつかみ、地域での生活を支えるための課題がわかりやすくまとめられています。障害をもつ子どもとその家族が地域で生活するとき、利用できる社会資源はたくさんあった方がいいし、それぞれがもつ機能の不足分は他の機関が補えばいい。そのための地域ネットワークをしっかりつくることの大切さを学ぶことができます。保健師や自治体職員にも読んでいただきたいと思います。

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