北欧=幸せのものさし
  −障害者権利条約のいきる町で−

 薗部英夫 (全国障害者問題研究会事務局長・日本障害者協議会副代表) 

 
定価1700円+税  ISBN978-4-88134-375-3 C3036 初刷2015.5.1  2刷2015.8.9
「小さな町の、そこに生きる障害のある人や関係する人たちから、だれもが幸せに生きられる幸せのものさし≠感 じたい」。月刊「みんなのねがい」好評連載を大幅バージョンUP!こころで撮った本格写真122点とエッセイ
 
 表紙

目次

 はじめに

 住まう
  1 クロンボーフスの20年
  2 なかまと生きる
  3 ダニーとギッテの家庭
  4 大規模施設・スーロンの今
  5 障害と支援 

 学ぶ
  6 オーロラ小学校のインクルージョン
  7 特別学校と統合教育(インテグレーション)
  8 就学前の教育
  9 貧民街の希望の学校
  10 グルントヴィと国民高等学校

 はたらく 道らく
  11 余暇は人権
  12 罪と罰
  13 はたらく 道らく
  14 税と自治と民主主義

 付録  
  障害者権利条約批准と今後の課題

 おわりのはじまり
 スポット1 出生率の秘密/2 放課後の時間/3 ヤマナラシの丘で
 カバー絵=深井せつ子(北欧画家)「幸せの馬と子どもたち」
 写真=薗部英夫
なかまと生きる
インクルーシブ教育
幸福の馬と子どもたち
余暇は人権
はたらく道らく

<いただいた感想から>
●目からうろことは、このことか。障害者への施策が北欧と日本では雲泥の差であることが、よくわかる。文章は簡潔明瞭で読みやすい。くわえてご自身が撮ったと思われる写真が素晴らしい。北欧の人々の生活の豊かさが明るく伝わってくる。特に、笑顔がいい(映画監督・有原誠治さん)

●行ってみたくなる。それは、いつも足元からの視点がキラキラしてるから。行きたくても行けなくても、まず読んで、自分のものさしを持つことではないだろうか(福祉広場理事長・池添素さん)

●「みんなのねがい」連載でも楽しみに読んでいたのですが、単行本にまとまって読むと、障害者権利条約の条文の挿入が適切で、本来あるべき社会のすがたを示している点は、権利条約の解説書と言っても良いと思います(鎌倉 保育園理事長・小林忍さん)

●薗部さんは、20数年前からいち早く北欧の徹底した民主主義・人権保障と障害児教育福祉システムのあり方に注目してきたウォッチャーであり、北欧の窓から日本の障害児教育福祉の課題を追究してきたフロンティアでもあります。 グローバル資本主義のなかで、大変な苦労をしながらも、日本の政権とは対極的な方向をめざして歩む北欧諸国の姿を知ると、心が安らぎ、希望が湧いてきます(東京学芸大学・高橋智さん)

●生き生きとした写真が豊富なのが本著の魅力となっていますが、なかでも冒頭の写真(ベッチーナといっしょ)はいいですね。障害者の眼の奥底を深く暖かく見つめ「あなたといっしょよ!」と語りかけるベッチーナ副施設長の表情は感動的です(東雲堂・鈴木眞幸さん)

●今の新自由主義経済の嵐に翻弄されている世界の中で、何がいちばん人間に大切かを教えてもらうことが、できました。巻末の「障害者権利条約批准と今後の課題」は、今の日本の社会に何が求められているのか、とても参考になりました(プロレタリア文学者・篠原昌彦さん)

北欧で暮らす人々のいきいきとした生活や活動の様子を、あたたかい眼差しで撮られた写真を交えながら、ニルス・エリク・バンク-ミケルセン(N.E.Bank-Mikkelsem)が提唱したノーマライゼーションの真髄を教えられるような思いです(早稲田大学・畠山卓朗さん)

●統合教育も、常に前進中であり、すすんだ型では、特別支援学校が消滅するのではなく、支援を受ける人のニードに応じて、特別学級や特別支援校もあるとの指摘は私の見方と一致します(金沢大学名誉教授・平澤一さん)

●わかりやす!読みやすい!感動した!資料と付録もいい!(全障研元委員長・清水寛さん)

●日本で言えば、中山間地に当たり前のように存在していた共同体が、そのまま国家のシステムになっているような国々の姿を想像しました。問われているのは、そのコミューンを大切にする思想と能力を国家が持って、社会進歩の方向性として生かせるかどうかですね(龍谷大学・白石正久さん)

●何よりも北欧の体制をうらやましく思いました。障害者の親として、いくつになっても子どものことが喉に引っかかった魚の小骨のように感じているものとして北欧の体制は、まさに夢のようです。
 北欧でこのような体制がつくり上げることができたのは、どうしてなのだろう。わが国の民主主義と北欧の体制の違い、もしくは方向付けの違いが何だろうかと考えさせられる。福祉政策は少しずつ進化していくものと思っていたが、反対に少しずつ切り捨てられている。国民の多くは気がついているが、不満は大きなうねりにはならない。これが現実だ。
 だからこそ、薗部さんたちのような活動が大切だ。国民に少しでも気がついてくれるように運動を展開する。それでも、なかなか思うようにはすすまないだろう。それでもがんばってほしい。北国で生活し、りんごを栽培するより、なにもできないがみなさんの活動を応援しています(青森・木村徳英さん)

●各項目の文章のあとに、障害者権利条約が記載されているのがいいですね。権利条約がとっても分かりやすく、ス〜と入って来ます。写真も素晴らしく、その施策を物語っています。なにより写っている人たちが、生き生きと暮らしている姿が、生活を楽しんでいることが伝わってきます(大阪・千住真理子さん)

●目の前の課題や苦情などにふりまわされ、制度の変更や後退に対応していると、詰まってきてしまいますが、こうありたいという未来のヒントを与えてくれる一冊にします(愛知・石川修さん)

●写真がふんだんに用いられ、そこにいる人たちの生き生きとした姿が飛び込んできます。そこにファインダーを覗いている薗部さんの暖かな視線を感じます。表紙も素敵です(やどかりの里・増田一世さん)

●連載中には、サラーッと読んでいましたので、まとまった形でシ゛ックリと読み、勉強になりました。とくに、フィンランド映画「ハ゜ンク・シント゛ローム」の取組みの後という時期でしたので、映画のなかみと重ねながらの勉強としてとても有益でした(映画プロデューサー・中橋真紀人さん)

●今更ながら、北欧の個人の尊重を基点とする政策には、人権の原点を感じます。その政治と政策と実線を正確に伝えることが、重要で、本書はその役割を担っていると感じました。
 ちなみにドイツでは議会の軍隊で人権侵害があった場合にそれの窓口となるオンブズマンが議長の後ろの席に控えており、これがドイツ軍が[制服を着た市民]といわれ、市民社会の中で存在することを担保した制度です。これは北欧の制度を参考に作られました。北欧の人権的先見性は、多様ですね(日本評論社・串崎浩さん)

●薗部さんの文章は、めざす会ニュース等の後書きもいつも楽しみにしていましたが、明快でかつ深く、読者のことを考えられておられるなあ、と思っておりました。この本でもそれが貫かれていて、一気に読ませていただきました。今の「アベ」だけと向き合っていると、気持ちが暗くなる一方ですが、地球の中に、こんな風景もあるのだと思うと希望が出てきます。お母さんたちにもぜひお勧めしたいと思います(中部学院大学・別府悦子さん)

●「余暇は人権」も驚くだろうけれど、「犯罪者に与えられる刑は軽い」という発想は伝わらないかもしれません。「罪を償う」しか、思い浮かばない。その壁が崩せないのです。
 私は、毎年「死刑制度から考える」という授業をしています。意図は、あたりまえを疑うということと死刑制度を学ぶことを通して、日本や自分を考えてみるきっかけにすることにあるのですが。上のような発想は、生徒たちからは出てこないですね。
 ここ数年で、10回以上死刑執行した法務大臣が3人いるのですが、3人とも安倍内閣なんです。今こそ、生きるとか人間とか、考えてもらいたいのですけれど(埼玉・高校教師さん)

●なんだか、ため息が出るな。もちろん、いろいろな問題があるだろうけど、障害者だけでなくみんなが分かち合って生きやすい社会をつくろうとしていることがよくわかる。
 人口が少ないから、日本とは構造や歴史がちがうからといった、できない理由ばかりきかされたけど。北欧を理想化することではなく、人がしあわせに生きていくのに何が大切で、そのことをその国で可能な限り構築していくことではないかと。みんなで理想を持つことではないかと改めて思います。貴重な現場の写真が多くて、力の入った本でした(美術家・中津川浩章さん)

●だいたい精神障害のある人がアフリカの紛争地帯ナミビアの子供たちの里親になっている、なんて信じられない話ではないだろうか。障害者がこうして安定して暮らせる地域は子供や老人はもちろんのこと、健常者にとっても住みやすいところであるのは間違いない。だからこそこれらの国々は国民の幸福度がトップクラスなのだ。
 だけど、これらの国々だって最初から社会福祉が充実した国ではなかったし、今現在も、世界的な市場原理優先の影響を受けつつも、よりよい可能性を求めつづけている。だけどこれらの国の考え方には、人権意識と民主主義に基づいたしっかりとした哲学がある。それは福祉制度だけではなく、社会全体のさまざまな制度に見られる。現在の日本と比べてもただただ切ないだけだけど、こういう国が今、本当にあるのだ、ということで、「希望のモデル」(p.6)として、あるいは表題にあるように幸福度を測る「ものさし」として、もっと知られるべきなんだと思う。(ブログ「惨憺たるアンコウ」のアンコウさん)

●すごい迫力ですね。まず写真でかなりの部分が説明されますね。写真が「記念写真」ではなく、「ふだん」でしかも笑顔が多い。文章の解説と問題提起が端的。
 障碍者支援のあり方の羅針盤を提起する点では『共生社会を切り開く』と同じ。薗部さんの本はその(ほぼ)【完成形】を具体的に分かりやすく 紹介し、私のものは日本でそれを実現するための処方箋(骨格提言)を深く紹介、といったところでしょうか。(日本社会事業大学特任教授・佐藤久夫さん)

●薗部さんの文章はさわやかな説得力がありすてきです(元あざみ寮・石原繁野さん)

●なんだか心地よく読んでいました。写真と文章との対話みたいな、こころがなごんで。そして権利条約が日常の中で生き生きと息づいている(福岡・石松周さん)

●彼の国では、住まうことも、学ぶことも、働くことも、要するに人間一人ひとりを大切にする立場を徹底することから、国づくりをすすめていることがよくわかります。そんな仕組みから、障害がある人も排除されることないインクルーシブな社会。「脱施設」という政策の流れも、障害当事者の自分らしさを引き出すために施設としての空間やケアが必要な人にはそれを保障することに迷いはない。柔軟でふくよかな発展があります。
 政策に人を合わせるのではなく人に政策を合わせるということ、それを保障する徹底した民主主義…。およそ今の日本からは想像できない社会のありようを肌感覚で読み取ることができます。(大阪障連協・塩見洋介さん)
本と人と 2015年5月3日「本と人と」赤旗(クリックで大画像に)

◆井上吉郎(WEBマガジン福祉広場編集長)
  『北欧=幸せのものさし−障害者権利条約のいきる町で−』(薗部英夫、全障研出版部、1700円+税)は、この20年余、10回以上北欧に足を運んだ文章と122枚の写真による報告の書。著者は日本ハムファイターズの大谷選手のような「2刀流」に挑み、どちらも成功を収めている。
 一つは文章と写真が見事に補い合っていることだ。北欧の障害児学校、「施設」を僕らは見たことがない。記述されること少ない障害者への働きかけぶりの文章と鮮やかな「タッグ」を組んでいる。
 もう一つは、わが国の障害者施策の推移と国連の障害者権利条約が、北欧の実践の裏付けを得て紹介されている点だ。そういう点で、この人だけがものにできた著作といえよう。
 <生きていくために必要な住まいの保障は、障害の有る無しにかかわらず、すべての人の権利><日本の障害認定システムは「できなさ」に注目する。「なにができないか」が問題だ。デンマークでは、「必要なことはなにか」が最初にある><「子どもたちは教育を受ける権利がある。大人は教育を保障する義務がある」と校長が言った>
◆高谷清(小児科医) 「現代社会メーリング 第32号」より
 著者は、「全国障害者問題研究会」の事務局長を30年間している。そして、北欧へは毎年のように訪問し、社会で障害者が普通に暮らしている実態をつぶさに見聞きし、実感し、考えている。北欧には、多くの知己・友人があり、表面的な見学旅行と違い、社会や人間の在りようを吸収し、日本に紹介している。読んで北欧をうらやましがるだけでなく、日本もそのようである努力をしたいと思う。
 なお、私が勤務していた、当時の「第一びわこ学園」が移転することになって、日本の中だけの見学をしていては駄目だと思い、何度も北欧を訪れた。ちょうど「ノーマライゼーション」が始まって時期であり、とても参考なり、新しい「びわこ学園医療福祉センター草津」(1991)に生かせたと思っている。
 その頃から、さらに発展している北欧の社会全体の在りようを、これからも紹介してほしいと思う。

◆村端浩(元高校教師) 「安曇野つれづれ日記」より
 写真も豊富。読む人のこころに入り込むような親しみがあります。あらためて写真を見てみると、白黒だからよけいに人々の表情やたたずまい生き生きと活写し、さらに想像力をかき立てる効果があるのですね。
 著者一冊目の『北欧 考える旅 ー福祉・教育・障害者・人生ー』でも感じたのですが、彼の文体は極めて魅力的。豊富な知識を的確かつ味わい深い表現を駆使していること、しかも分かりやすい自らの言葉であることがいちばん。
 この本では、豊富な実例を通して、デンマークでもスウェーデンでも、充実した障害者政策には、個人の尊重や社会的生活の保障、家庭・家族の尊重などを権利として守りぬく確固とした思想があること。そしてそれを実現するのに、行政だけではなく、福祉にかかわるスタッフや市民たちが絶えず話し合いを行い自覚を高めていることなどが明らかにされます。
 日本と北欧との福祉水準の違いだけに目を奪われて、ただため息をついたところで何も生まれない。生まれないどころか、この国のすみずみで日々悪戦苦闘しながらよりよい福祉をめざしたたかい続けている人々の努力を見えなくさせさえする。
 どれだけかけ離れているかを確認することが北欧行きの目的であるはずがありません。むしろ、この世界のかたすみに福祉の思想をめぐって試行錯誤を重ね、実践を重ね、すぐれた福祉の体系を作り上げてきた国・地域が存在する確かさを感じとり、そこから無限の学びを引き出すことができるという「しあわせ」こそ北欧行きを繰り返させる源泉なのでしょう。
 だとすれば、障害者福祉についての北欧の「考え方」を学ぶことを通じて、この国を変えていくみちすじもまた見えてくるはず。その意味で、直接障害者福祉に関わっていない多くの人にこそ読んでほしい本です。

みんなのねがい きょうされんTOMO
  ▲全障研「みんなのねがい」7月号            ▲きょうされん「TOMO」6月号

    ■        福祉新聞
 ▲JD(日本障害者協議会)「すべての人の社会」6月号 ▲福祉新聞 5.18

ろうあ連盟
 ▲ろうあ連盟 季刊「MIMI(みみ)」148号
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 ▲鉄道身障者福祉協会「リハビリテーション」2015年7月号     ▲『前衛』8月号
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 ▲『経済』8月号 評者=丸山啓史(京都教育大学)さん(クリックするとPDF)
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 ▲『ノーマライゼーション』8月号 評者=中津川浩章(美術家)さん(クリックで大画像)

 ■ 「福祉のひろば」9月号

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