全国障害者問題研究会

第28回全国大会(京都)基調報告

                            常任全国委員会


 学びたい。働きたい。生き生きと暮らしたい。

 このねがいは、子どもからおとしよりまで、障害者をふくむすべての国民のみんなのねがいとなっています。私たちはそうしたねがいに学びつつ、昨年の新潟大会から1年間、全国各地で障害者の権利を守り、発達を保障するための実践や研究を進めてきました。

1、障害者の人権保障

  ーー国の内外の動きと私たちのとりくみ

(1)「アジア・太平洋障害者の10年」の2年目ー人権、平和を考えるー

 昨年の大会の基調報告は、国連障害者年の10年の成果をふまえ、新10年として設定された「アジア太平洋障害者の10年」の成功に向けて、決意あらたに創造的な研究運動を発展させようと呼びかけました。憲法にたちかえり、国内における、また国際的レベルでの、共同と連帯の重要性も指摘しました。

 この1年、国の内外でどのような状況の変化があったでしょうか。国内では、昨年11月、心身障害者対策基本法が23年ぶりに大改正され、障害者基本法が成立しました。これは、全障研も加入している日本障害者協議会をはじめ、障害者の「完全参加と平等」をめざしてがんばってきた広範な人びとの運動の成果です。

 この法律は、基本理念として「障害者は社会を構成する一員としてあらゆる分野、活動に参加する機会を与えられる」と述べています。またあらたに精神障害を法の対象加えたこと、中央障害者施策推進協議会に障害者および福祉事業従事者を加えるとしたことなど、重要な改善点がいくつかあります。しかし、てんかん、自閉症、各種難病などは依然として法の対象外とし、附帯決議で言及するにとどまったこと、全体として障害者の権利規定、国や自治体の義務規定もあいまいで、権利擁護システムの導入も見送られたことなど、見過ごすことのできない問題点も残しています。私たちは、日本障害者協議会などが追求している、障害者の福祉に関する諸法(たとえば身体障害者福祉法、精神薄弱者福祉法、精神保健法、児童福祉法など)の間の不整合をなくし、総合的な障害者福祉法を制定させる運動への理解を深めるとともに、障害者基本法そのものの改善点も明らかにしていく必要があります。

 「子どもの権利条約」が、ようやく批准され発効したことも重要です。これもまた早期批准を求めて民間団体・グループがいくつもでき、全国で550をこえる地方議会が意見書をあげるなど、広範な国民がねばり強く運動をすすめた成果です。この条約の基本特徴は、子どもを手厚い保護の対象であると同時に、権利行使の主体だと位置づけていることです。障害児に関しては、まず第2条で、人種、皮膚の色、性などとともに、障害による差別の禁止をうたっています。また、障害児のもつ「特別なニーズ」を認め、これに対応する「特別なケアへの権利」を規定しています。

 文部省は批准の発効に先だって、教育にかかわる国内法の改正や学校運営の改善はまったく必要ないという趣旨の通知を出しましたが、子どもの意見表明権、表現の自由、体罰の禁止など、子どもの権利を守るために法的にも運用面でも改善すべきことがたくさんあることはいうまでもありません。私たちも、この条約の精神を日本において具体化することをめざし、障害児の教育や福祉の制度やその運用についての改善点を、あらためて明確にしていかなければなりません。

 国際的にみると、「完全参加と平等」をめざした共同行動、国連障害者の10年の目標は、残念ながら多くの面で未達成であり、とくにアジアなどの発展途上国の障害者は深刻な状況のもとで生活しています。アジア各国では同じ国の中でも、貧困を反映してのいちじるしい格差が残り、とりわけ子どもたちには、生きることさえ保障されていない厳しい現実があります。

 一般に日本のODA(政府開発援助)活動は、日本企業の利潤追求および軍事目的の開発援助になっており、国際的に問題となっている飢餓や貧困の救済など、人道的援助に支出される率がきわめて低いことが特徴です。政府のこの姿勢を改めさせることは、日本が本当の国際貢献をしていくための重要課題になっています。それは「アジア・太平洋障害者の10年」の実践的な課題を考える場合にも重要です。私たちは、日本政府がそこに住む障害者の要求にそったかたちで物質的・人的援助を行うようはたらきかけていく必要があります。同時に、私たち自身もこの地域の障害者との交流をひろげ、その実情を学び、協力・共同を推進していきたいものです。

 昨年の国連総会では、「障害者の機会均等化に関する基準規則」が採択されました。この規則は、国連障害者の10年をひきつぎ、各国政府が障害者の機会均等化の実現のために責任をもって障壁を取り除く行動を起こすべきであることを明かにしたものです。

 全障研もこの間、国際連帯の方向でのとりくみを進めてきました。国際NGO会議・障害者の社会参加に関する沖縄会議への代表派遣、日本の障害者問題を特集した『障害者問題研究』の英語版の発行などです。また、今大会に先だっておこなわれた京都での国際シンポジウム「21世紀の障害者教育を考える」では、韓国、ベトナム、台湾、オーストラリア、日本から障害児教育の研究者を招いて互いの実情を交流しました。

(2)暮らしや、民主主義、平和をめぐって

 歴代政府によって強引に進められてきた農業破壊、減反政策。たった1度の冷害で日本中をかけめぐった「米不足」。ブレンド米もあたりまえとなり、国産米の高値も依然続いています。一般家庭はもとより、施設や学校にも大きな影響を与えました。連立政権による政治は、こういう状況を打開するどころかさらに悪化させました。

 少数意見を切捨てる小選挙区制の強行、国民の生活実感とかけはなれたところで進められてきた政治のもとで、おきざりにされた1994年度の政府予算案は、世界第2位にふくれあがった軍事費をさらに拡大し、公共料金の値上げ、消費税増税の準備、年金制度の大改悪、病院給食費の自己負担化など、自己責任原則に基づく社会福祉、社会保障の切捨てを特徴としています。「生活者重視」「高齢化が活力に結びつく社会構築」などの甘い言葉と裏腹に、国民に痛みを強いる予算案です。

 障害者問題の各分野の情勢を見ておきましょう。医療の分野で1994年度の予算をみると、難病関係でガン、エイズも含め一部に新事業がみられます。ALS(筋委縮性側索硬化症)など在宅人工呼吸器使用患者のための緊急一時入院事業の新設はその1例です。また、人工呼吸器の無料貸出しをする県が、福井県など数県に広がりました。これらは運動の成果です。

 しかし、保険制度の改悪で、入院患者の給食、部屋代、治療材料や薬の保険はずし、患者負担増加の方向が出されています。この場合、長期入院の高齢者では負担が一挙に2倍以上にはねあがります。重症心身障害者施設にも医療費の定額制(いくら治療しても一定限度以上の診療報酬は入らない仕組み)を導入する動きがでています。

 また、保健所は地域の乳幼児の健診、食品公害、アレルギー対策など公衆衛生サービスにも不可欠な機関であるにもかかわらず、これを再編成し、3分の1に減らす方向がとられています。

 社会保障・社会福祉の分野では、無年金障害者を放置したまま、さらに「高齢化社会危機論」を持ち出して年金支給年齢や保険料の引き上げなど行う年金法改悪、措置から自由契約へという公的責任の放棄につながる保育所制度の改悪、電話・郵便・酒税などの公共料金の値上げ、そして福祉の名を語った大増税の国民福祉税構想など、いっそう福祉切捨て攻撃が進められています。国民に「自助努力と応分の負担」を求め、公的責任を否定する見解を出し、事実上の憲法改悪をこの分野で実現しようとする社会保障制度審議会の第1次報告(1993年)は、こうした政策を全面的に展開しようとするものです。

 このような状況のもとで、さらに問題を深刻にしているのが政府の無策によって長期化している不況です。企業の倒産数は戦後最大と伝えられるほど厳しい現実をもたらしています。大企業のしわ寄せは下請けの中小企業に押し付けられ、障害者、高齢者などは解雇の対象にされ生活が圧迫されています。また共同作業所でも仕事の確保が難しくなり、さまざまな工夫で乗り切っているのが実情です。

 教育の分野では、文部省がうちだした「新学力観」が「関心、意欲、態度」を「知識、理解」よりも重視し、生きていくために必要な基礎学力の形成に関して、子ども、親、教師の不安と悩みを大きくしています。多くの教育関係者は、「新学力観」にもとづく教育は、いわゆる「落ちこぼれ」や不登校、高校中退を減らすどころか、逆にますます増大させるのではないかと強い懸念を表明しています。

 障害児教育においても、基礎的な学力をつける努力よりも、子どもの身辺自立や作業学習などの訓練を中心とする教育が、この「新学力観」のもとで再び強化されようとしています。かつて強く批判された学校工場方式などの導入もふくむ職業教育の一面的重視は、その1つのあらわれです。さらに、「日の丸」「君が代」の押し付けが各地で強引に進められています。

 学校5日制の移行とも関わって、放課後の問題や社会教育の問題が重要な課題となっています。京都市など学童保育での障害児の受け入れのための制度化を行う自治体もいくつか生まれるなど、前進もみられます。政府も遅まきながら、国民の要求のまえに学童保育法制化(児童福祉法改正)の検討に入りましたが、いまのところ、こうしたところでの保育は、職員や父母の自己犠牲的な奮闘によって、からくもささえられている状況です。

 障害乳幼児の分野では、地域の療育システムの中核となる療育センターの建設がいくつかの地域で進められています。保育所・幼稚園においても障害児受け入れが進んでいます。しかし、保育設備の改善や、教師・保母の加配などの条件整備が不十分であったり、発達や障害についての研修や学習が保障されていないところもたくさんあります。

 さまざまな困難をかかえながらの障害児保育ですが、自主的な学習の場を切り開くエネルギーは各地で芽生えています。

 科学技術の分野では、ハイテク技術を駆使した福祉機器の研究・開発が進んでいます。またワープロ、パソコン、これらを利用した通信の普及は、障害者のコミュニケーションや生活の質を高めるうえで役だっています。しかし、現状では、各種の福祉機器、通信手段のコストはあまりにも高く、公的財政援助もきわめて不十分であるために、これらを利用できる障害者は限られています。そのうえパソコンなどは、最近、画像表現が中心となってきており、視覚障害者には利用しにくい、高齢者社会にも逆行しているとの声が出されています。大きな可能性を秘めたマルチメディア等の技術が、人の生活とコミュニケーションをより豊かにし、すべての人が平等に恩恵を受けることができるようにするには、ユーザの声、障害者の生の声をあげていくことが大切になっています。

(3)みんなの幸せを追求して,

   ー科学とヒューマニズムで語ろうー

 この1年、障害者の実態や要求を掘り起こし、まとめていく調査活動が積極的にとりくまれてきました。障害者の生の声を聞き、その生活にふれ、悩みや困難をともに語り合い、そこから学び、実態をつかんでいく活動が各地で進められています。精神障害者や、知的障害者を含む多くの障害者が、公の場で自ら堂々と体験と要求を語る姿が目立っています。1000日達成をめざす京都のマラソンスピーチでは、多くの障害者が駅前で発言しています。これらの活動は、障害者問題とつながりの少なかった人の参加も得て、ともに語り合う中で新たな連帯の輪を広げています。

 このような実態把握の活動や障害者の生の声に学びつつ、その切実な願いを実現する運動が前進しています。例えば、すべての障害児の後期中等教育の保障をかかげて進められてきた運動は、兵庫での成果に続き、島根においても教育委員会の方針を養護学校高等部全入へと転換させ、高等部に重複学級を設置させるという成果をあげました。

 障害者の住みよいまちづくりをすすめる運動、交通・情報・通信などアクセス権の拡充をめざす運動の成果もあがっています。たとえばまちづくりや建築の分野では「高齢者や障害者にやさしいまちづくり推進事業」、特定建築物の施設整備のための国庫補助の開始などです。公的施設、交通ターミナルなどにおけるエレベーター、エスカレーター、障害者用トイレの設置など、さらに運動を強化すれば推進できる条件が出てきました。

 銀行の預金残高の点字通知サービスの開始、手話窓口の開設、警察の聴覚・言語障害者のためのファクス110番なども、一部ですすみはじめています。有料道路通行料金の障害者割引制度も、障害者本人が運転する場合に、その対象を拡大する(肢体不自由者以外の身体障害者にも拡大)、また障害者本人が運転しない場合でも、重度の障害児者が乗車する場合に割引対象とすることになりました。

 故・玉野ふいさんのなげかけた障害者の政治参加の問題は、すべての国民の政治参加の権利を認めさせる上でも、積極的な意義を持ちました。

 私たちはともに未来を切り開いていくために、地域のいろいろな分野の人々と積極的に交流し、共にとりくみを進めていくことを提起してきました。全国的にみると、共同作業所連絡会との共同のとりくみや、行政への政策プランの提案などを積極的に進めているところが増えてきました。高齢者問題も基本において障害者問題と深くつながる問題です。京都では昨年の「京都障害者白書」につづいて高齢者白書づくりが進められています。また、学校5日制の実施も2年目に入っていますが、障害児学童保育など、困難な条件の中でも学校教育、社会教育、福祉等の分野で働く人たちの共同でさまざまな実践が進められています。

2.当面の研究運動の課題

 私たちが進めてきた研究運動は、質量ともに大きな発展を遂げてきました。各支部・ブロックごとの独自の取り組みも進み、また問題別研究集会などでも、さまざまな個別課題が取り上げられてきています。こうしたことは今後もさらに追求されていかなければなりません。

 全障研は、3年後に結成30周年を迎えます。この節目に向けて、障害者の人権と発達をめぐる日本の現状の総点検運動を進めていくことなど、いくつかの課題を提起します。

(1)広い視野にたった活発な討論を進めよう

 全障研の各支部・サークルでは、活発に各種のイベントや学習会を開催してきました。

 それらは、会員を中心に多くの人びとが障害者問題の現状を知り、障害者の人権と発達保障の前進に向けての基礎的あるいは専門的な知識を身につけるうえで、重要な役割をはたしてきました。このようなとりくみは、今後もいっそう発展させていく必要があります。

 学習会などの企画を成功させるためには、地域の実態がどうなっているか、会員や周辺の人びとの要求は何かを、しっかりつかむことがだいじだということは、これまでの経験がしめしているところです。

 しかし、学習をとおして参加者が「わかった」という実感をもち、さらに学習したいとか、これからの実践や運動への意欲をかきたてられるようにするには、ただ知識を学ぶ機会を増やすだけでなく、参加者みんなが、どんな疑問でも口に出し、意見を述べ、討論するということのできるつどいにしていかなければなりません。 たとえば教育の分野でいえば、教育課程や集団編成、教育的インテグレーションなどにはさまざまな考え方があります。また遊びや労働のとらえ方、自立の概念、生活年齢と人格発達の関係など、これからさらに深めていかなければならないこともたくさんあります。障害者の権利と発達を保障するという、基本となる理念・目標は一致していても、個々の具体的な問題、具体的な局面では、いろいろな意見があって当然です。

 いろいろな意見が率直に出され、活発な討論が行われ、一致できるところをはっきりさせ、ちがいをちがいとして認め合い、今後の学習と研究の課題を見いだしていけるかどうか、ここに自主的・民主的な研究運動をさらに発展させるための鍵があります。

 今後、さまざまな意見がある問題については、出版物などでもできる限りいろいろな意見を載せ、会員自身が考え、支部・サークルでも議論ができるようにしていく必要があります。国内情勢も国際情勢も目まぐるしく変化していますが、全障研の出版物、とくに「全障研しんぶん」「みんなのねがい」「障害者問題研究」を有効に活用しながら、研究運動をいっそう力強く展開していきましょう。

(2)障害者の生の声を受け止める運動を

   もっと具体的に進めよう

 昨年の大会でも、障害者の生活と意見に学ぶヒアリング運動が提起されました。障害者の生の声は、公的な文書・資料・統計などでは把握しきれない貴重な証言です。

 しかし、話し言葉自体は後に残らず、録音しても文字に起こさないままだと、せっかくの貴重な内容も、直接聞き取りをした一部の人たち以外には伝わらず、それを聞いたときの感動も怒りも、他の人と共有されないままに終わってしまうことが少なくありません。急速に普及しているビデオも十分に活用されているとはいえません。

 青年期を迎えた障害者は、どのような期待と悩みを胸に秘めながら学校や職場に通っているのでしょうか。高齢になった障害者は何を考え、どのようなねがいをもって毎日を暮らしているのでしょう。支部・サークルを単位に、たとえばこうした障害者の日常の生活や生の声を載せた冊子、あるいは文集づくりを進めてみてはどうでしょう。こうした取り組みにより、単に話しっぱなし、聞きっぱなしにすることなく、常に研究運動の原点に立ち返り、あるいは新鮮な視点・発想を吸収していく事が求められています。

(3)一支部・サークルが年間に少なくとも

   一項目の権利保障点検の運動を進めよう

 国際障害者年以降、確かに障害者の人権保障は多くの面で進展をみせました。しかし障害者やその家族の実態・要求は、まだまだつかみきれていないものがたくさんあります。国際障害者年や国連障害者の十年を通して、あるいは昨年の障害者基本法の制定にって、障害者の生活、教育、労働に関する状況は、何が変わり、変わろうとしているのか、改善されたものは何か、何が変わらないままなのか、逆に悪くなったものはないか、これらを具体的に取り上げ、私たちの運動の成果とまだ不十分な点、行政などに要求していくべき点を明らかにしていく必要があります。昨年の大会では、「区市町村を単位とした実態・要求の掘り起こし」が提起されましたが、支部とサークルが協力し、また可能なところでは地域の障全協や共作連をはじめ、諸団体とも力を合わせながら、年間に最低一つの項目について点検活動を行なっていきましょう。そのさい京都の障害者白書づくりなど、これまでにもなされてきた先進的は調査活動も参考になるでしょう。

 会員一人ひとりが、それぞれの条件を生かしてこうした活動に加わっていくならば、お互いの力量を高め合うこともでき、また研究運動としての支部・サークル活動もいっそう強化されるにちがいありません。

 さらに、それぞれが持ち寄った結果を支部全体で、さらには全国レベルで比較・検討していくことにより、全国的傾向や、それぞれの自治体の進んでいるところ、遅れているところが明らかになります。そうした成果は、国や自治体への働きかけのための重要な根拠とすることもできます。

(4)研究運動の輪をさらに広げよう

 全障研の運動は結成当初から、さまざまな職種・階層の人たちによって担われてきました。 30年近い歩みの中で、会員の年齢層もまたいっそう幅広いものとなりました。世代間、職種間の交流をもっと深め、支部・サークルの歴史を振り返り、先達の運動とその成果に学びながら、これからの権利保障の方向性を自覚した運動を展望していきましょう。

 また、全障研はこれまでもさまざまな団体と共同・連帯しながら運動を進めてきました。高齢障害者の問題、学校五日制など、全障研だけでは担いきれない課題もたくさんあります。通常の学級や「通級による指導」の場で学ぶ障害児の人数は今後さらに増えていく可能性がありますが、そうした子どもの発達を保障していくためには、障害児教育の教師と通常の学級の教師との協力体制がきちんと整えられていく必要があります。

 一方、障害者を受け入れている全日制・定時制高校の教師などにも、障害者問題への関心が広まりつつあります。共通の課題をもつ団体・各層と広く提携した研究運動がますます求められています。たとえば神奈川では今年、全障研支部と共作連との共同で実践交流会を行ないましたが、制度上では教育、福祉と普段は別々の分野で活動している人たちが、実践上では多くの点で共通の問題意識や課題を持っていることが明らかになりました。今後とも、会員や関係者の要求・抱えている問題を的確につかみ、学習・研究活動の計画に反映させながらこうした取り組みを積極的に進めていくことが期待されます。国民各層との連携の輪をもっと広げ、さらに大きな役割を果たしていかなければなりません。

 さらに、各種シンポジウム、出版などを通じて、国際的な運動の連帯を強めていきたいものです。世界各国の現状を学び、日本の国際的な位置、到達点をより確かに把握すると同時に、私たちの運動の経験や成果が、どのようにしてどこまで他の国にも生かすことができるのか、国際的役割についても積極的に提起していく必要があります。

 全障研には今、さまざまな方面からの大きな期待が寄せられています。そして全障研も大会に参加されたみなさん一人ひとりの力を必要としています。数年後に控えた結成30周年、そして21世紀にむかって、発達保障の研究運動をさらに前進させるために、ともに歩んでいってくださるよう、ここによびかけます。


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