150 衆議院内閣委員会 参考人質疑 2000/11/07

○佐藤委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
 (略)

○佐藤委員長 塩田晋君。
○塩田委員 自由党の塩田晋でございます。
 本日は、各参考人におかれまして非常に貴重な、有益な御意見、またお話をいただきまして、ありがとうございます。感謝を申し上げます。
 福冨参考人が、今提案されておりますIT基本法案についての印象として言われましたこと、電子商取引推進法ではないか、また、ゆとりと豊かさを実感できる国民生活の実現はこれによって可能かということを印象として言われたと思うんですが、やはり国民の素朴な受け取り方というものもそこにあるのではないかということを改めて考えさせられるお話でございました。
 それから、薗部参考人におかれましては、身障者の立場から、身障者にとってITというものは希望のツールである、バリアフリー化の努力を非常に熱心にやっておられる、そして成果を上げておられるということ、そしてまた国の責任についても言及されたわけでございまして、新しい分野について目を開かせていただきましてありがとうございます。
 出井参考人並びに村井参考人におかれましては、日本のITの国際的水準というものは非常におくれておる、現状においては非常にレベルが低いんだという認識を話されたわけでございますが、これは共通認識ではないかと思うのです。
 (以下略)

○佐藤委員長 松本善明君。
○松本(善)委員 日本共産党の松本善明でございます。
 きょうは各参考人、貴重な御意見を賜りましてありがとうございます。
 二十一世紀を前にして、コンピューターを初めとした情報通信技術の発展というものは、人類の文化、技術の発展の中でも画期的な一段階を開きつつあるのではないかと私ども思っております。日本共産党は、この新しい技術を社会全体が活用できるように国民の共有財産にして、その成果を国民すべてが受けられるようにするということを特に重視をしております。
 そういう観点から各参考人に伺いたいと思うのでございますが、この法案につきましては、そういう観点から見ますと、民主主義という観点が非常に弱い。言葉としても一言もありません。政府案の目的、理念、基本方針、どこにもそれがありません。これは大変大きな理念上の欠陥ではないかと私どもは見ております。この新しい技術を利用して多くの国民が情報を入手するとともに発信できるという、言論の自由を新しい段階にも広げる、そういう観点がないというのは、これはせっかく基本法をつくるという上で非常に弱点になっているというふうに思うのでございます。この点についてどのように各参考人はお考えかということが一つ。
 もう一つは、この法案の第三条には、すべての国民が情報通信技術の恵沢を享受できる社会の実現ということで規定がなされております。これは当然そのとおりだというふうに私ども思うんですけれども、このことをやはり国民の権利として保障するということが大事なのではないか。この一言があるかどうかによって、これは非常に大きな違いが出てまいります。権利として保障する、そしてその実現を政府の責務とする、そういうことにして初めてすべての国民が成果を共有することができるようになるのではないか。
 この二点について各参考人の御意見を伺いたいと思うのでございます。最初は民主主義の問題、二番目は、権利として保障し、それを政府が保障することを責務とする、この二点について出井参考人から順番にお聞きをしたいと思います。

○出井参考人 お答えを申し上げます。
 IT基本法というものは、基本的には、インターネットをみんなが使うということと、みんなが発言する自由があるということが基本になっておりまして、インターネットそのものの普及というものは、基本的に、民主主義と言論の自由をコントロールしている社会では非常に難しい。要するに、企業とユーザーとの間にもコミュニケーションというのが直接生まれますし、また、政府とそれから国民との間の情報というのも、距離がうんと近くなります。
 インターネットそのものの技術の本質論というものは、基本的には、一人一人に情報が格差なくあまねく広まるという性格を持っておりまして、例えば企業そのものが隠そうとする情報というものは、顧客の方がお互いにそれを広めるというようなところがあって、例えば製品欠陥、そのあたりの通知関係につきましても、情報そのものというのは完全に自由に国民の一人一人に、また顧客一人一人に情報が移ります。
 したがって、インターネットそのものというのは、民主主義と言論の自由というものに立脚している、基本だというふうに考えております。
 それから、あまねく知る権利、使う権利というものは当然と思いますけれども、これは段階的に、今目指しているのは、工業レベルでもってアメリカに非常に立ちおくれたものを優先的にやろうということと、それから、電話料金そのものを常時接続して安くすることによって広く使われることを確保しようというこの二つの側面を、遅くても安い、それから速くて安いということを一年、五年という目標でもって立てたものでございます。
 したがって、基本戦略を民間がやっておりまして、それが十分反映された基本法になるというふうに考えておりますけれども、電話と違いまして、インターネットの必要性というものは、非常に必要性の高いところと、それから必要性の低い方、低い企業というのと、段階的にこれはありますけれども、究極的にはあまねく広くということが考えられますけれども、段階的にこれをやっていくというので五年という目標を立てているというふうに私は解釈しております。
 以上、お答え申し上げました。

○村井参考人 現在、インターネットはグローバルなエンティティーでございまして、インターネットの国際的なコミュニティー、インターネット全体の責任を持っている幾つかの団体があって、私もそこに所属をしておりますけれども、そこでのテーマもインターネット・イズ・フォー・エブリワン、すべての人のためのインターネットというわけで、今先生がおっしゃったような趣旨の中でどういうふうに進められるかということを国際的に議論をしている最中でございます。
 その中で大変重要な側面は、インターネットというのは本質的にグローバルな空間でございますので、これをつくっていくというのは、それぞれの国、それぞれのつくっていく民間、こういったものの力を合わせてその目的を達成していくという方向で進んでいるわけです。その中で、最初に私の御説明のところでも申し上げましたように、インターネットをつくっていく環境を整備していくというのは、民間の力によって基本的には進めていこう、こういうことが大変大きな国際的な意味の挑戦であるということになっております。
 その中で、今おっしゃったような、すべての国民が権利として得ていくということを実現するための方法論というのは、可能な限りの民間での競争でその公益的な空間を実現する、これが第一でございます。そして、そこで手の届かないところ、実現できないところをどのようにするかというのは、各国で個別のさまざまな努力をしている最中でございます。その中で、日本には日本なりの、そして日本としても、幾つかの多様なそれを実現するための方法があって、これを検討しつつ進めていくべきだというふうに考えております。

○國領参考人 今の村井参考人の話とほとんど同じなんですけれども、民主主義の道具である、これはもう本当にそのとおりでございます。第三条にその思想が見えるように思うんですけれども、これが十分かどうかというのは、これは御議論いただければというふうに思います。もう明らかにこれはみんなの声を結集する道具だろうと思います。
 権利化という話なんですけれども、これもインターネット・イズ・フォー・エブリワン、本当に全員のためのものなんです。それで、明らかにその状態をつくりたいんです。ただ、それをつくる主体がだれなのか。国にやっていただくのか。それこそ、国というのはだれなのかというような話で……。
 我々の思想は僕らがつくる、つまり国というのは我々なんだ。我々がつくるから、国にお願いすることは、まず邪魔をしないでということと、それから、制度、ルールなんかの整備でやりやすいような状態をつくってください、それから、国が持っている設備、施設ないしは国の管理下にあるようなものについては、我々にぜひ使わせてください、この辺のようなところであります。ここから以下は別にビジネスだけじゃなくて、NPOも含めて民間イニシアチブでどんどんつくっていく、結果としてその力が結集したところで本当にみんなが使える状態をつくる、それが目的、目標であることは、これはもうはっきりしているというふうに考えます。

○薗部参考人 先ほどの私のお話の中で、国連の中で一九九三年の障害者の機会均等化に関する基準規則というのがとても大切な規則として考えられていまして、そのポイントは、やはり
どのような障害の種別を持つ人に対しても、政府はというところをはっきり出しているんですね、情報とコミュニケーションを提供するための方策を開始すべきであると。これが一九九三年の国連決議で、それ以後、やはり政府はどうするかというのが各国で障害者の分野では考えられています。
 それともう一つ、障害者にとってITが保障されるならば、やはり二つ激しく変わると思うのです。一つは、働くことができるようになる人がたくさんふえる。これは、一般就労を含めて飛躍すると思います。それともう一つは、広く社会、文化に参加できるということだと思います。これが民主主義の基本だと思います。
今まで参加することが大変困難だった人たちが、参加にとどまらず、もう一歩進んで参画できるというところまでいくようになるというのが、社会の厚みというか、社会の希望なのではないかなというふうに思います。

○福冨参考人 まず、民主主義の理念ということなんですけれども、全くそのとおりだと思っております。
 今まで電気通信の分野では、憲法及び電気通信事業法の言論、表現の自由を守る、それから検閲の禁止、通信の秘密、その三つの遵守というのがうたわれてきたわけですけれども、これはどちらかというと行政主導で行われてきた中でうたわれてきたのですが、民間分野に行くときにむしろないがしろになるのではないか、そういう危機感は抱いております。
 ただ、逆に、高度情報通信ネットワークが民主主義の手段になるというふうにも考えられるわけで、そういう意味で、これは後退させるというふうには考えておりません。
 それからもう一つ、アクセスの権利について。これは、日本の法律ではそれをうたったものというのはほとんど見たことがないのですけれども、もしそういうものが盛り込まれれば非常に歓迎すべきことではないかと思います。
 以上です。

 (中略)

○松本(善)委員 時間がありませんので、各参考人に聞きたいところですが、薗部参考人にだけ一問お聞きします。
 今もお話がありました料金の問題ですね。障害者が利用できるようになるということは健常者もみんな利用できるようになるということで、そういう点で薗部参考人にお伺いしたいのですが、料金問題について言いたいことがあればお伺いしたいと思います。

○佐藤委員長 時間をオーバーしていますので、一言お願いします。

○薗部参考人 今の料金はともかく高過ぎるというのが実感です。
 ただ、たまたま北欧に行って聞いたところでは、先ほど村井さんの中でもライバルは北欧系という話も出ていたのですけれども、したたかだなと思ったのは、だれもが使える地域の図書館に本当に最高の通信環境が充実していて、そこを障害者を含めてたくさんの人が使うということで、したたかに利用しているというのは参考になったなというふうに思いました。

 午後二時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午前十一時五十二分休憩
    
 

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