障害者問題研究 第31巻第2号(通巻114号) 絶版 |
2003年8月25日発行 ISBN4-88134-124-3 C3036 定価2000円+税 |
特集 発達保障論の諸相と課題 特集にあたって 発達保障論の発展のために(PDFファイル) 加藤直樹 田中昌人さんにきくー今日における発達保障の理論と課題 「発達保障」「発達権」「学習権」論を練り直す視点 渡部昭男(鳥取大学教育地域科学部) 「全面発達の理念」を平等論に加えて自由論にも位置づけ、「個人の自由や自己実現」の社会的保障の重要性を指摘している碓井敏正氏の哲学的な思索から、個々人の全面的に開かれた自由な発想を保障する方向で「発達保障」論を練り直す示唆を得ることができる。少年法の分野では、服部朗氏が「発達権」を社会権と自由権からなる複合的な権利として提起している。日本国憲法第26条の「その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利」も、第13条の「個人の尊重、生命・自由・幸福追求の権利の尊重」の視点を加味して、一人ひとりの全面的に開かれた自由な発達の必要に応じた学習への権利として理解されるべきであろう。 労働権保障と発達保障論 秦 安雄(中部学院大学人間福祉学部) 障害をもった人々に対して、発達保障論の観点に立って「働くこと」を権利として保障する実践・研究・運動は、全国障害者問題研究会の研究運動を契機に発生し発展してきた。 最初の「共同作業所づくり」として発展した「ゆたか共同作業所」の取り組みは、全障研全国大会の労働分科会で報告され検討された。共同作業所の実践を通してつくりだされた知的障害者の「発達の事実」は、全国の共通の願いをもつ関係者に共感を呼び、「共同作業所づくり」運動として全国に広がり、共同作業所全国連絡会(現 きょうされん)が結成され、今日の「きょうされん」の実践・事業(経営)運動の発展がある。 発達保障論の提起が、労働権保障の実践・研究・運動に大きく寄与していることを、初期の「共同作業所」の取り組みを振り返り、また、「きょうされん」運動の発展の現状をみることで、発達保障論の意義を確認した。そして、発達保障の基盤整備の課題について、若干の考察を行った。 国際的視点から見た発達保障の動向 荒木穗積(立命館大学産業社会学部) 発達保障の思想の本質的特徴と関わらせて、子どもおよび障害者問題の国際的視点から論じた。障害者の人権保障、ノーマリゼーション、慈悲に基づくアプローチから権利に基づくアプローチへのパラダイム転換など発達保障の思想の根幹をなす考え方が、第2次世界大戦後の国連を中心とした平和と人権保障の国際的活動の所産であることを論じた。21世紀の入り口にある今日、あらためて「21世紀を発達保障の世紀」とするべき時代状況があることを論じた。 ヴィゴツキー理論から見た発達保障 藤野友紀(北海道大学大学院) ヴィゴツキーは、人間の発達に対してすぐれた理論(方法論)を構築した心理学者として知られている。彼は「内的論理」「超補償」「一次的障害と二次的障害」などの興味深い概念を用いて、人間の「障害」と「教育」の問題について本質的な議論を展開した。その主張は次のようにまとめられる。@「障害」は所与のものではなく発達の過程で生み出される、A「障害」は個人に所属するものではなく、他者や社会との間に立ち現れてくる、B発達を質的に評価するならば、障害児における、一見すると微々たる進歩に見える発達にこそ重大な価値がある、Cすべての人間は能動的生活に参加する欲求と能力をもっている、D教育は、能動的生活への参加の能力が発揮されるような活動のデザインを基盤に据えるべきである。これらは日本における発達保障論の思想的展開の歴史との間に多くの共通点をもつと同時に、心理学理論としての発達保障論の構築に向けて豊かな示唆を与えてくれる。 【教育学・教育実践と発達保障論】 教育課程と発達保障論 加藤聡一(東京理科大学理学部) 教育実践と発達保障論 八木英二(滋賀県立大学人間文化学部) 【文献解題】 人間発達における階層−段階理論にかかわって 中村隆一(滋賀大学教育学部大学院) 発達の階層−段階理論は、障害をもつ人たちの発達保障実践の発達的根拠を明らかにすることを重要な課題として誕生してきた。それは広い意味で障害をもつ人たちの心理学的研究ではあるが、障害の有無や種別を発達理解の第一義的要因とみなして発達の基本的な機制から機械的に区別する研究方向ではなく、障害を発達の基本機制の条件変化要因として位置づけ普遍的な発達機制の解明をすすめてきた。 本稿では、発達における階層−段階理論における方法論上の吟味に焦点を当てて、「可逆操作」「発達における階層」「発達の原動力」についてふれられた論文を紹介する。 [自由研究] 学習障害児のアセスメントと教育指導について 久保田あや子(滋賀大学教育学部附属教育実践総合センター) 教育実践にかかわる理論的問題 あそびB 遊びは発達の原動力/加々見ちづ子(仙台市なのはなホーム) |