障害者問題研究 第37巻第3号 (通巻139号) |
2009年11月25日発行 ISBN978−4−88134−794−2 C3036 絶版 |
特集 乳幼児期療育の課題と展望 特集にあたって/白石正久(龍谷大学) 障害乳幼児療育システム改正の論点/中村尚子(立正大学社会福祉学部) 要旨:障害者自立支援法施行時において3年後に見直すこととなっていた障害児福祉分野の制度改正と,そのなかで中心的課題となっている施設再編の動向について,乳幼児期に視点をあてて概観し,論点を整理した.関係審議会の議論は,障害者自立支援法の本質的問題点である応益負担制度の廃止等にふれないまま,「通園施設の一元化」という既定の方針に道すじをつけるものであったこと,施設再編に関する議論は,通園施設の不足と偏在という根本的問題の解決を回避したまま,障害種別施設の「一元化」にその活路を見出そうとするものであることを指摘した. キーワード:自立支援法見直し,障害児通園施設再編,療育システム,一元化 1970年代における障害乳幼児政策とその問題構制 −保育要求から問題の再構成へ /河合隆平(金沢大学人間社会研究域学校教育系) 要旨:1970年代の障害乳幼児政策は療育・保育を要求する運動によって拡大されたが,そこには障害乳幼児問題に対する認識枠組みの再構成が伴っていた.従来の政策は「早期発見、早期治療・教育」という段階論的な枠組みのもとで進められた結果,大多数の障害乳幼児が在宅生活を余儀なくされていた.その批判として,1970年代の療育・保育を要求する運動は,保育を軸に障害乳幼児問題を再構成しながら,乳幼児期の発達保障の課題を明らかにし,療育・保育施設の拡大を図ってきた.その問題構制は,今日もなお障害乳幼児問題を検討するうえで有効な枠組みを提供している. キーワード:早期発見,早期教育,保育運動,障害児保育,問題の再構成 アメリカ合衆国における障害乳幼児の早期教育(療育)システム/清水貞夫(尚絅学院大学) 要旨:アメリカ合衆国連邦政府の障害乳幼児対応は,本格的には1970年代に始まり,3?5歳障害幼児への施策と0?3歳未満障害乳児への施策に二分されている.障害乳児施策では「個別家族支援計画(IFSP)」が,また障害幼児施策では「個別教育計画(IEP)」が開発され,それに基づき,無償でサポートが提供される.本稿では,アメリカ合衆国の障害乳幼児への施策を記述するとともに,今日の問題を指摘した. キーワード:障害乳幼児,個別家族支援計画(IFSP),個別教育計画(IEP),移行計画,ケースマネジメント 地域からの療育システム構築の試み/若林隆泰(吹田市こども支援交流センター) 要約:障害別施設と児童デイサービスの一元化など,障害児支援全般に関わる法改正が予定されている.障害者自立支援法の利用契約制度や利用者の応益負担,そして事業者への実績払いの報酬等,一貫して公的責任を縮小する国の方向性に対して,障害のある乳幼児が「どこで生まれ育っても必要最低限の発達支援が身近な地域で受けられる」地域療育システムづくりの実践が積み重ねられてきた.法改正に向けた今後の作業として,これまでの療育システムの成果と課題について,療育システムの構造,療育システムの基本方向,自治事務としての療育システムの3点を取り上げ,社会的共同業務としての療育及び療育を受ける権利という二つの意味をもつ,療育の公共性を視点に検討した. キーワード:地域療育システム,療育の公共性,療育課題,団体事務,自治事務 療育における指導とは何か/白石正久(龍谷大学) 要旨:療育における指導は,人格と能力の発達にとっての価値とは何かを,子ども・親・指導者の共同のなかから創造し,互いを導いていく過程のことである.支援には,このような価値創造のための共同は,基本的には含まれるもの ではない.障害者自立支援法が乳幼児の分野にも持ち込んだのは,この共同の関係と価値ではなく,一方から他方に提供される交換価値としての支援サービスであった.制度改変期の今,発達保障の機能をもつ療育には,いかなる目的性と方法論をもった指導が求められるかを検討すべきである. キーワード:指導,支援,共同,学習・形成・発達 実践報告 生活や遊びの中で力をつけたい−難聴幼児通園施設における発達障害児への実践 /神谷さとみ(難聴幼児通園施設「ゼノ」こばと園) 遊びの主体となっていくことを大切にして−知的障害児通園施設における自閉症児への実践 /宮本成貴(吹田市こども支援交流センター地域支援センター)、池田恵里子(吹田市立杉の子学園) 大島智子(吹田市立杉の子学園) 「生活の主人公」になるために −肢体不自由児通園施設における実践 /竹中亜希子(堺市立第1つぼみ園)、前田多英子(堺市立第1つぼみ園元職員) 身体と心を育む療育 −医療的ケアの必要な子どもたちへの実践 /塩見陽子・大政里美・平尾真理子(広島市こども療育センター二葉園) 地域療育・子育て支援ネットワークを充実させて −鹿児島県の児童デイサービスにおける併行通園児への実践 /大迫より子(鹿児島子ども療育センター) 書評 ■障害者問題研究 バックナンバーへ |
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