障害者問題研究 第40巻第4号(通巻152号) |
2013年2月25日発行 ISBN978-4-88134-135-3 C3037 定価 本体2,500円+税 |
特集 中学校における特別支援教育の展望 特集にあたって 生き方をさぐる3年間に伴走するために 奥住秀之 論文 中学校における特別支援教育の動向と課題/橋 智(東京学芸大学)・田部絢子(東京学芸大学大学院博士課程) 本稿では中学生および思春期独自の発達の課題を明らかにしながら、発達保障という視点から、中学校における特別支援教育の動向と課題について検討してきた。中学校の特別支援教育は、思春期という独自の成長過程・発達的課題を抱えた生徒を対象にしているため、また小学校と中学校では教育システムや教育環境が大きく異なり、小学校の特別支援教育が中学校に適合しない場合も多いため、特別支援教育を小・中学校と一括りにするのではなく、中学校独自の特別支援教育のあり方の検討が強く要請されている。 思春期の危機や発達困難を抱える中学校の課題/福井雅英(北海道教育大学) 大津市の中学生いじめ自殺事件をめぐって社会的な関心が高まるなか,その後も,品川区,札幌市などで中学生の自殺が続いた.この悲しい事態は,今日の日本の教育問題の矛盾が中学校に集中的に表れている状況を示すものである.本稿では中学生の自殺に関して設置された調査委員会が出した川崎市と品川区の二つの報告書を手がかりに,中学生の自殺問題から見える現代の思春期の危機について考察し,中学校教育の課題について述べる. 中学生が直面する発達的な課題と発達支援/キ筑 学(中央大学文学部) 本論文の目的は,中学生の生活と行動,心理の発達的特徴を明らかにし,それにもとづいて,中学生に対する発達支援のあり方を論じることであった.中学生の生活スタイルは小学生とは異なり,就寝時間が遅くなるなどの点で高校生に似ていた.部活動や勉強がメインの活動で,それらの時間は中学3年で特に長かった.友人関係をプラスとマイナスの両方で意識し,対人関係に支えられていないことが不適応と関連していた.中学生は小学生よりも,自信のなさや不安の多さを示した.小学校から中学校へと進学過程で,小学校で不適応的な傾向を示していた子どもが,中学校でプラスに転じることがあることも明らかになった.これらのことから,今後の発達支援として,@小学校時代に育まれる有能感を中学生でさらに伸ばしていく,A不安や失敗などのネガティブに見られがちな現象の積極的な意味に着目する,B制約の中から自己の内的自由を育んでいく,の3点を挙げた. 中学校の特別支援教育における教師の指導困難とコンサルテーション/別府悦子(中部学院大学) 中学校の特別支援教育では,生徒が思春期を迎えるとともに,教科担任制など小学校と大きく異なる環境などが原因となり,不適応や二次障害の対応に教師が困難を抱えることを考慮する必要がある.本稿では,中学校教師を対象に行った実態調査と事例検討を通して,教師の指導困難と教師支援のためのコンサルテーションの課題を提示した.教師が困難を抱えるととらえる生徒の情報について,小学校から必ずしも十分に引き継がれず,引き継ぎに専門職の関与も少なく,教師は具体的な助言を求めていることが明らかになった.事例研究において,中学校では特別支援教育の体制づくりに困難が生じやすい問題も認められた.しかし,生徒の心情を聞き取り,発達的理解を広げ居場所を作ることが変化をもたらすと示唆された.中学校では,こうした生徒との信頼関係のもとで発達を保障していく実践への教師の支援とコンサルテーションを充実させていくことが課題である. 私立中学校における発達障害等生徒の支援の実態と特別支援教育の課題 ―全国私立中学校養護教諭調査から/田部絢子(東京学芸大学大学院博士課程、成女学園中学校・成女高校) 本稿では全国の私立中学校(728校)の養護教諭を対象に質問紙法調査を行い,私立中学校における発達障害等の特別な配慮を要する生徒の支援の実態と特別支援教育体制整備の課題を検討した.私立中学校にも発達障害をはじめとする特別な配慮を要する生徒が多数在籍しているが,彼らの困難・ニーズへの対応はきわめて不十分であった.私立中学校における特別支援教育推進の課題として,@同一学校法人内における特別支援教育の体系化,A外部専門機関との連携,B特別支援教育の研修や理解啓発の充実,C国や行政からの財政措置が挙げられる.私立学校の独自性を尊重しながらも,とくに義務教育段階の私立学校における特別支援教育システムを早急に整備していくことが不可欠である. 実践報告 思春期の育ちを支える中学校特別支援学級の実践/小林 徹(東京都羽村市立羽村第三中学校、東北大学大学院教育情報学教育部) 発達障害生徒の中学校卒業後の進路保障の実践/相川賢樹(埼玉県・春日部市立武里中学校通級指導教室) 中学校における学校不適応問題と通級指導の実践/菊地雅彦(いわき明星大学人文学部心理学科) 生徒の声からさぐる中学校生活の困難さと求める支援 ―見晴台学園高等部・専攻科生徒の聞きとり調査から /藪 一之(愛知県・NPO法人見晴台学園学園長) 手記 中学校時代をふりかえって 子ども・親・教師の三者でつくりあげた充実した中学校生活/津川あやこ(現在、高校2年生の保護者) 思春期の暗闇でもがいていた私に寄り添い、私の未来を信じて伴走してくれた大人の存在/澄心(現在、私立高校2年生) 動向 「パーソン論」と障害児者にかかわる生命倫理/谷 清(びわこ学園医療福祉センター) 書評 河合隆平著『総戦力体制と障害児保育論の形成』/吉長真子(福山市立大学教育学部) 40巻総目次 ■障害者問題研究 バックナンバーへ |
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