障害者問題研究  第41巻2号(通巻154号)
2013年8月25日発行 ISBN978-4-88134-206-0 C3036  定価 本体2,500円+税
特集 放課後保障の新展開

特集にあたって
 権利保障のさらなる前進にむけた探究を 丸山啓史 

子どもの放課後問題の到達点と課題 /増山 均(早稲田大学文学学術院)
要旨:子どもの放課後生活は,「労働」「学習」「遊び」によって成り立っているが,歴史をたどると,かつては「労働」が中心であり,次第に「遊び」が中心になっていく.しかし,1960年代以降の経済政策により,子どもの放課後生活が大きく変容した.子どもの遊び集団が地域から消え,子どもたちは室内で電子映像メディアと接する時間が長くなり,いま子どもの発達に劣化が起こっている.こうした子どもの生活と発達の変容問題に注目が集まり,「子どもの放課後問題」への対策が求められるようになった.政府は,2007年に初めての総合的な放課後対策として「放課後子どもプラン」を打ち出したが,そこには原理的な問題点がある.学校が終わった後の生活は,「放課後」ではなく「地域」生活と捉えるべきであり,そこでは,「教育」と「福祉」の課題だけでなく,「文化(余暇)」が重視されねばならない.その視点に立って子どもの放課後問題を考える場合,子どもの権利条約第31条の精神と,社会文化アニマシオンの概念への注目が欠かせない.

障害児の放課後活動の役割をめぐる論点 /丸山啓史(京都教育大学)
要旨:本稿では,障害児の放課後活動の基本的な役割について論じる.子どもにとっての役割に関しては,放課後活動が「第三の生活の場」として考えられてきたことが重要である.放課後等デイサービスの制度においては「訓練」が目的として示されているが,放課後活動の「余暇」「生活」という側面が重視される必要がある.保護者・家族にとっての役割については,家族の役割・責任を強調する議論がみられるなかで,就労やレスパイトのための役割が確認されなければならない.また,放課後活動を発展させていくうえで,障害の重い子ども,障害の軽い子ども,障害ある若者・成人への注目が求められる.

障害のある子どもの放課後活動制度化の運動と放課後等デイサービスの課題
 /中村尚子(立正大学社会福祉学部)、村岡真治(ゆうやけ子どもクラブ)
要旨:改正児童福祉法(2012年4月施行)によって,小学校(部)〜高校(高等部)に在籍する障害のある子どもが利用する放課後等デイサービスが始まった.今後は同事業に則った放課後活動が一般的な形態となっていくと予想されるが,制度設計上の検討が不十分である.本稿では,第一に2000年前後からの放課後活動の広がりとそこにおける児童デイサービスの活用などの経過,第二に障害者自立支援法下における放課後活動の危機と要求運動の果たした役割,第三に自治体施策から放課後等デイサービスに移行するにあたっての問題点を述べた.これらを通して,放課後等デイサービスを改善するためには自立支援法がもたらした問題の解決が求められることを指摘した.

放課後児童健全育成事業における学齢障害児保育の実態と課題 
 〜巡回相談に関する調査と事例から  /三山 岳(京都橘大学人間発達学部)
要旨:専門家が現場を訪問して行う巡回相談では,子どもの特徴に合わせた働きかけが見いだされ,よい方向に保育が変化する事例がある一方で,相談に依存し,問題行動に対する即効性の対処法を求め,結果的に有効な支援に繋がらない事例も珍しくない.背景には障害の診断と特徴にばかり目が向いて,子どもの生きづらさへの配慮に欠ける現状がある.指導員への調査からは,問題への対処と保護者対応に相談の支援ニーズが集中し,障害児個人の問題に関心が向いていた.こうした状況を打開する保育として,異年齢集団という学童保育の特徴を生かした集団づくりのなかで,その環境に応じた個別配慮を行い,子どもの生活を豊かにしていく事例を紹介した.

実践報告

障害のある子の学童保育における生活と集団 /市川ゆかり(学童保育指導員)

“子どもの心(こえ)を聞く”ことの大切さを教えてくれた紀将 〜放課後ならではの自由さを強みに
 /田中祐子(東京・まつぼっくり子ども教室)

特別支援学校と放課後活動の地域連携 〜語りあうなかで見えてくる子どもの願い
 /岡田徹也(全障研滋賀支部、草津養護学校)

被災地・相馬地方における放課後支援の現状と課題 〜子どもから学びみんなでつながりたい
 /加賀八重子(福島・南相馬市立原町第二小学校)

医療的ケアの必要なわが子の放課後・休日 /西村政子(滋賀・大津市在住 保護者)

卒業後のゆたかな人生を求めて /山崎厚子・大谷良美・齊藤朋実(東京・NPO法人未来空間ぽむぽむ)

動  向

障害者制度改革の動向と課題 /佐藤久夫(日本社会事業大学特任教授)


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