障害者問題研究  第42巻1号(通巻157号)
  
JAPANESE JOURNAL ON THE ISSUES OF PERSONS WITH DISABILTIES
2014年5月25日発行 ISBN978-4-88134-275-6 C3037 定価 本体2,500円+税

特集 高等部教育をめぐる今日的論点

特集にあたって
/佐藤比呂二

特別支援学校高等部をめぐる近年の諸問題/越野和之(奈良教育大学)
要旨=1980年代後半からの養護学校高等部希望者全入運動の意義と到達点を踏まえて,特別支援学校高等部の教育が直面している今日的状況について吟味した.まず在籍者の著増傾向をとりあげ,その内実として相対的に「軽度」の層が増加している可能性を指摘,それに由来する実践上の「新しい」課題について述べた.また,そうした状況に対する行政側の対応として,高等部設置校,とりわけ高等部単独校などの新増設と設置形態の多様化,職業自立などを目標とする学校の増加といった点を概観し,高等部単独校等の量的規模ならびに教育目標設定における問題点を指摘した.

選抜式知的障害特別支援学校高等部の現状/伊藤修毅(日本福祉大学子ども発達学部)
要旨=近年,特別支援学校の過大・過密化が課題となっており,特に知的障害特別支援学校の高等部生の増加は顕著である.この課題を解決する方策として,高等部単置型の知的障害特別支援学校を設置することは有効と考えられるが,そうした学校の多くが入学者選考の段階で能力による選別を行っている.本論では,全国の2014年度の特別支援学校高等部の入学者募集要項等を調査し,選抜を行っている知的障害特別支援学校高等部の現状を明らかにした.選抜によって選ばれる知的障害児は全体の約1/4であり,高等部単置校や一般的な特別支援学校に設けられた特別な学科等に入学している.また,高等学校内分校や分教室の形態をとるなど,選抜式高等部にも多様性が見られること,その多くが専門学科であることなども明らかにしている.加えて,以上の現状をふまえ,競争的制度,教育条件,そして,教育内容に関する課題を提起している.

障がい者の青年期教育が提起した課題の検討/船橋秀彦(茨城県立水戸飯富特別支援学校)
要旨 “障がい者の青年期教育”という考え方は,高等部への希望者全入運動の中から職業教育に偏重する高等部教育に対峙する考え方として提起された.その青年期教育創造の取り組みから実践的理論的に深め提起された諸点(めざす青年像,人格発達,社会への移行,授業づくり)を紹介し,新自由主義教育下での意義と課題を示した.@“権利の平等”という観点からめざす青年像を描き,その依拠する能力観(能力の共同性)と自立観(支え合いの自立)を示した.A知的障がいのある青年の人格発達像を仮説的に示し,有効性と課題を述べた.B社会への移行を,青年本人が自己決定するプロセスを通して,個性化と共に社会化する営みとして示した.C授業づくりでは,夢やあこがれを教育的に組織すること,青年の内面理解の大事さを示した.

実践報告
東京の知的障害教育高等部の変遷と現状/妹尾豊広(東京都立王子特別支援学校)

高等部での「自分づくり」が青年期を支える ――仲間と見つける自分らしい生き方
 /古日山守栄(滋賀県立草津養護学校)

「わたしにであう・障害を知る」授業 ――心を繋ぐ性教育,「心」の単元より
 /間賀田清子(神奈川県立保土ケ谷養護学校 横浜平沼分教室)

“不登校”の隆介が「自立」をめざすとき ――高等部で生徒が仲間に出会い「再生」する
 /浅野真司(愛知県立佐織特別支援学校)

誌面刷新と新企画の開始にあたって/白石正久(本誌編集委員長)

新連載 実践に学ぶ
@放課後の活動の実践
放課後での“ごっこあそび”を通して「かけがえのない自分」に出会っていったA君
 /深谷弘和(大阪発達支援センターぽぽろ)
【深谷実践に学ぶ】
 自然な展開で楽しく遊ぶ/丸山啓史(京都教育大学)

A障害の重い子どもの訪問教育の実践
ボク書きたい―病院訪問における重症児の伝えようとする力を育てる
 /鈴木輝子(茨城県立水戸特別支援学校)
【鈴木実践に学ぶ】
 子どもの現在を過去・未来とつないで理解し,展開した実践
/茂木俊彦(桜美林大学)

新連載 発達保障のために学びたい本
糸賀一雄著『復刊・この子らを世の光に――近江学園二十年の願い』
 /河合隆平(金沢大学)

動向
障害者権利条約批准における障害者運動の意義と今後の課題
 /薗部英夫(全国障害者問題研究会事務局長)

編集後記


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