障害者問題研究 第42巻4号(通巻160号) |
JAPANESE JOURNAL ON THE ISSUES OF PERSONS WITH DISABILTIES 2015年2月25日発行 ISBN978-4-88134-365-4 C3037 定価 本体2,500円+税 |
特集 障害児家族の生活・養育困難と学校教育 特集にあたって/丸山啓史(京都教育大学) 障害のある子どもの生活・養育困難と特別支援学校の教育・福祉的機能 河合隆平(金沢大学) 特別支援学校では教育の機会均等の理念にもとづき,障害による制約や不平等を是正するものとして種々の教育条件が整備される一方,保護者の分担・協力を前提に教育指導を行ってきた.近年,特別支援学校の教育・福祉的機能の縮減が進むなかで,貧困や生活・養育困難のある子どもたちが排除される構造が生まれつつある.貧困や生活・養育困難のある子どもと家族に対して学校が組織的に支援していくためには,特別支援学校の既存の教育・福祉的機能を拡充させることで保護者の私的負担を全体的に縮小していくこと,教師が家庭や地域における子どもの生活実態にアクセスしながら,子どもの日常生活を維持・改善させる取り組みが求められる. 障害児家族の困難と支援の方向性 −母親に偏在するケア役割めぐって 藤原里佐(北星学園大学短期大学部) 「障害があることは特別なことではない」という障害観が定着し,障害児者の家族にも,それは支持されていると思われる.ただし,障害児者とその家族の日常生活がノーマルであるためには,社会的な支援が不可欠である.それが不足している限りにおいては,障害児者家族,とりわけ母親は,「特別な困難」を抱えるリスクを持つことになる.障害者が地域での在宅生活を継続できることは,当事者や家族の願いでもあり,共生社会の具現化として評価できる.しかし,その生活が母親のケア力に大きく依存している実態については,事実として認識が広がりつつも,昨今のケア論やケアの研究から疎外されている.家族の中で遂行される子どもへのケアは,ケアの社会化という議論から排除されてきたことを踏まえ,障害児者ケアのありかたを再考する. 学校における障害児家族の生活・養育困難とその対応 −特別支援学校教員へのインタビュー調査から 窪田知子(滋賀大学教育学部) 今日,「子どもの貧困」への社会的関心が高まりつつある中で,障害児家族の「貧困」問題は焦点の1つである.しかし,特別支援教育の学校現場における貧困をはじめとする生活・養育困難の実態は十分に解明されていない.本研究では,特別支援学校の教員にインタビューを行い,障害児家族の生活・養育困難の実態に対する教師の認識,学校教育への影響と対応について調査した.そこから,障害児家族の生活・養育困難として,「一人親家庭」「保護者の障害」「経済的な困難」「虐待」などが見られ,これらに対して教員の努力によりさまざまな支援・対応がなされていると同時に,あらためて教育と福祉の連携のあり方が問われていることが明らかとなった. 子育てとケアの境界 −家計構造からみた障害児ケアの困難 田中智子(佛教大学社会福祉学部) 本稿は,家計簿式調査をもとに,障害児ケアについて一般の子育てとの境界を明らかにし,その困難性を考察することを目的としている.先行研究をもとに,一般的な子育てにどのくらいの費用がかけられているのか,またそれが家計における支出配分のどの程度の割合を占めるものであるのかを確認した.そのうえで,家計における支出配分を決定する動機を,経済額の領域で検討されてきた「消費財/投資財/公共財」としての子どもという議論を手掛かりに考察を行った.家計簿式調査においては,@子どもの年代の小さいころから,障害児優先の支出が行われ,家計の緊張が高まることA障害程度により支出費目・額に違いが生じることBきょうだいの有無・数によって障害児への支出状況が左右されることが明らかとなった.以上の結果をもとに,一般の子育てとは異なる障害児ケアに特有の支出構造があること,社会資源がふえる中で生活の標準化が進行していること,障害児優先の家計構造の中で家族には葛藤が生じていると結論づけた. 【報告】 小学校特別支援学級で困難をかかえる家庭と向き合う/小池えり子(東京・小学校教員) どの子にもゆたかな生活と育ちの保障を −特別支援学校寄宿舎の実践を通して 能勢ゆかり(滋賀・特別支援学校寄宿舎指導員) 相談支援から見た障害児と家族・家庭の困難 平野美佐子・大越千鶴・山本弘志(社会福祉法人信貴福祉会 生活支援センター“あっぷる”) 【連載/実践に学ぶ】 @自己認識を深めることを主体性の育ちに ──「ぼくの電動車いす」の実践から 教員 野津保(島根県立隠岐養護学校) 【野津実践に学ぶ】 ねがいから出発する自分の発見と生活を拓く学び 猪狩恵美子(福岡女学院大学) A子ども達が自分達の家を創る ──知的障がい児施設天草学園の取り組み 建築家 松村正希(莫設計同人) 【松村実践に学ぶ】 家づくりを通して子ども達の発達を保障する 日比野正己(長崎純心大学) 【発達保障のために学びたい本】 清水寛・田村勝治編/群馬障害児教育研究サークル著 『障害児の教科指導』 解説 越野和之(奈良教育大学) 【書評】 田部絢子著『私立学校の特別支援教育システムに関する実証的研究』 評者 吉利宗久(岡山大学大学院) 【動向】 社会福祉法人制度改革の動向 石倉康次(立命館大学産業社会学部) ■障害者問題研究 バックナンバーへ |
■ご注文は、注文用紙(ここをクリッ
クしてください)にて電子メールしてください。
確認しだい発送いたします。送料含む代金は同封の郵便振替等にて10日間以内にご送金ください。