障害者問題研究 第43巻3号(通巻163号) |
JAPANESE JOURNAL ON THE ISSUES OF PERSONS WITH DISABILTIES 2015年11月25日発行 ISBN978-4-88134-435-4 C3037 定価 本体2,500円+税 |
特集 発達保障と実践研究 特集にあたって/河合隆平(金沢大学人間社会研究域) 教育実践の市場化・商品化の動向と教育実践研究の課題/越野和之(奈良教育大学) 保育領域における新自由主義市場化路線は子ども・子育て支援新制度以降「保育の商品化」の段階にあるとみられ,人件費コスト圧縮衝動の下でベテラン保育士を駆逐し「保育崩壊」の状況を生み出している.「商品化」の指標である直接契約制とサービス利用料補助方式は障害児者支援の分野にも全面的に持ち込まれており,実践への影響を把握する研究が求められる.学校教育も新自由主義に親和的な教育政策の下で教育実践の「疑似商品化」に直面しており,障害児教育分野における個別の指導計画・教育支援計画や特別支援教室構想にもその反映を見ることができる.以上を前提に,教育実践における,子どもとの関係形成の下での子ども理解の深化と,その担い手としての実践者の成長について論じ,実践者の個人的な熟練を否定して代替可能な「人材」と位置づけ,実践のマニュアル化を志向する商品化路線の無理を指摘した. 障害児教育における実践記録と実践研究/川地亜弥子(神戸大学大学院人間発達環境学研究科) 障害児教育における実践記録と実践研究について,教育実践概念について検討した上で論じた.戦前の日本では,教育実践という言葉に実践研究,実践から教育学を立ち上げることが含意され,そのツールとして実践記録があった.戦後には実践記録の主観性に対して批判が起こり,それに対して教師の主体的な表現がむしろ重要であり,その価値を共有するためになかまの中で検討することが提起された.その後,実践記録の科学性を高める方法として,教師以外の当事者を含めた複眼による表現が提起された.現代の実践記録論として竹沢清に注目し,教師の専門性の向上に寄与する方法であることを指摘した.最後に,近江学園の実践記録の検討を通じて,子どもの願いや葛藤を中心にしながら,子どもの要求を育てるような教師のはたらきかけ,教師集団のゆれ,教育条件,労働条件等について書くことの意義について指摘した. 心理学的子ども理解と実践的子ども理解 ――実践者を不自由にする「まなざし」をどう中和するか /川田 学(北海道大学大学院教育学研究院) 本稿では,教育実践における心理学的な認識や方法の過剰な流入がもたらす問題点を指摘したうえで,それらと深い関係にある教師・保育者の子どもへの「まなざし」の変化を取り上げ,心理学と教育実践の関係がはらむ現代的構図を分析した.子ども理解の出発点としての子どもへの「まなざし」は,実践者への評価圧力の下で客観的(第三者的)なものに偏重し,子ども理解が心理学化されている.ここでは,診断的まなざし,手段的まなざし,危機管理的まなざしという3つの観点から議論した.そして,測定における測定者のあり方と,教育における実践者のあり方は,その存在様式の根本が異なっていること,つまり前者は非発達的であり,後者が発達的なものであることを論じた.最後に,心理学的子ども理解と対比される,実践的子ども理解の性質を考察し,実践的子ども理解を育てていくための若干の方法的考察を行った. 授業研究の方法論/窪田知子(滋賀大学教育学部) 授業改善をめざした学校の教師集団による共同の研究としてわが国に根付いてきた授業研究は,今日,レッスン・スタディとして世界的にも注目されている.その方法論は,さまざまに開発されて今日に至る.重要なのは,より有意義な授業研究を進めていくために,授業研究の目的を明確にして最良の方法を選び取り,ときには組み合わせていくことである.一方で,授業研究の新たな視座として,特別支援教育の視点を盛り込んだ授業研究の必要性とそのあり方に関する関心も高まっている.そこで本稿では,授業研究の方法論に関するこれまでの蓄積を整理した上で,事例を取り上げて,通常学級における特別支援教育の視点を取り入れた授業研究のあり方について検討することを目的とする. 【実践報告】 子どもの気持ちを読み解く ――ビデオ解析から分かった友だちへの思い /竹脇真悟(埼玉県立宮代特別支援学校) 園と地域が育ちあう実践検討会 ――「ゼノ」こばと園 療育研修会を通して /神谷さとみ・塩出順子(児童発達支援センター「ゼノ」こばと園) 成人期障害者の実践研究の方法論/田村和宏(立命館大学産業社会学部) 連載/実践に学ぶ @小学校通常学級の実践 通常学級で大切にしてきたこと ――子どもたちとの対話を軸に /越田みなみ(京都・小学校 教員) 【越田実践に学ぶ】子どもの根っこを探り,多様な子どもの姿を把握する/清水貞夫(元宮城教育大学) A障害児放課後活動の実践 「おもらし」から解放された翔平――放課後活動で,「できるまでの力」を培う /星 真理(障害児放課後活動指導員 ゆうやけ第3子どもクラブ(東京・小平市)) 【星実践に学ぶ】子ども丸ごとの人格形成を目指す放課後実践/奥住秀之(東京学芸大学) 連載 発達保障のために学びたい本 第7回 田村一二著『忘れられた子等』 /解説 玉村公二彦(奈良教育大学) 動向 道徳教育と「道徳」教科化をめぐる課題と展望 ――障害者のエンパワメントに向けて /松下良平(武庫川女子大学文学部) ■障害者問題研究 バックナンバーへ |
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