障害者問題研究  第44巻1号(通巻165号)
  
JAPANESE JOURNAL ON THE ISSUES OF PERSONS WITH DISABILTIES
2016年5月25日発行 ISBN-978-7-88134-475-0 C3037 定価(2,500円+税)

特集  特別支援学校における現状と教育要求

特集にあたって/猪狩恵美子(福岡女学院大学)


特別支援学校における教育要求の組織化とその今日的課題
河合隆平(金沢大学人間社会学域 学校教育学類)
 特別支援教育制度化以降の特別支援学校の現状を整理したうえで,在籍数の急増にともなう特別支援学校の過大・過密化,総合化,センター的機能について考察し,特別支援学校における教育要求の組織化について述べた.特別支援学校の方向性として,多様な教育要求に応じた教育・支援を最適化する仕組みとして総合化を模索すること,地域を単位とする教育・支援システムのなかにセンター的機能を位置づけながらインクルーシブな地域社会を創出することが課題である.特別支援学校の教育実践と専門性を地域に開放していくこととあわせて,私事化されやすい教育要求の集団化と組織化が求められる.


重症児教育からみた特別支援学校の動向と評価
猪狩恵美子(福岡女学院大学)
 本稿は,重症児教育の視点から,特別支援学校のあり方として打ち出されてきた「複数障害に対応する併置化」「重度重複学級と教員の役割の見直し(外部専門家の活用等)」について検討した.障害の重度・重複化は特別支援教育への転換のひとつの背景とされたが,教育予算削減によって特別支援学校増設ではなく併置化と大規模化が進み,教育条件が後退している.さらに学校マネジメントの強化と一体となって,専門性を標榜する分業と教職員の階層化が始まっている.重症児の学びと発達を支える学校・教師の役割に確信をもって,命と安全,豊かな教育を保障する多職種連携を学校の新たな文化として根づかせていくことが必要である.教員の能力・専門性にすりかえるのではなく,重症児教育をすすめる教育条件整備についても検討する必要がある.


視覚特別支援学校における教育の専門性とセンター的機能
星 祐子(前筑波大学附属視覚特別支援学校,国立特別支援教育総合研究所)
 視覚特別支援学校が直面している「少人数化」と「多様な重複児童生徒への対応」という現状と課題の中で,教育実践の中で培ってきた視覚に障害のある幼児児童生徒に対する配慮事項と教育活動,専門性について考察した.これらを踏まえ,インクルーシブ教育システムの中で,視覚特別支援学校の果たすべき役割について,就学する子どもに対する教育保障,センター的機能の充実の2側面から検討した.センター的機能の充実については,保育園・幼稚園・小学校・中学校等の教員に対する支援,障害のある幼児児童生徒および保護者への支援,特別支援教育に関する相談・情報提供,他機間との連絡調整等の側面から考察した.


【報告】
聴覚障害児教育をめぐる環境の変化とろう学校の課題
武居 渡(金沢大学人間社会研究域学校教育系)


育ちにくさをかかえた子どもとこれからの病弱教育
――疾病・健康問題の変化の中で
有本香織・橋爪巳希・畑 香織(特別支援学校教員)


肢体不自由教育における教育実践と介護職導入
肢体不自由教育を良くする会(東京の肢体不自由教育をめぐり教員の増員や介護職員導入の問題について検討する例会などの活動を行う)


子どもを真ん中に保護者と教師がつながるんだ
――滋賀からの発信
小阪 一三(滋賀の障害児教育をよくする会 事務局長)


◆連載/実践に学ぶ

@特別支援学校の実践
教員としての25年の歩みと育ち ――子ども,保護者,同僚,自分との出会いの中で
鈴木こずえ(埼玉県立浦和特別支援学校)

【鈴木実践に学ぶ】教員として生きることとは 教員として育つこととは
土岐邦彦(岐阜大学地域科学部)

A地域の障害者運動
盲学校理療科教員の新規採用実現に向けて
不破伸一(全国障害者問題研究会石川支部,石川県視覚障害者の生活と権利を守る会)

【不破実践に学ぶ】伝わらない「もどかしさ」を越えていくために
渡辺 譲(全国障害者問題研究会兵庫支部,元盲学校教員)


◆連載/発達保障のために学びたい本 第9回

加藤直樹著『障害者の自立と発達保障』
解説/竹内謙彰(立命館大学産業社会学部)


◆動向

戦争法の推進と成長する市民運動
石川康宏(神戸女学院大学文学部)


◆書評

佐藤久夫著『共生社会を切り開く ――障碍者福祉改革の羅針盤』
評者/鈴木 勉(佛教大学社会福祉学部)


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