障害者問題研究 第49巻1号(通巻185号) |
JAPANESE JOURNAL ON THE ISSUES OF PERSONS WITH DISABILTIES 2021年5月25日発行 ISBN-984-4-88134-956-4 C3036 定価2750円(2500円+税) |
特集 乳幼児期の発達保障と児童発達支援の課題 特集にあたって/中村 尚子 本誌副編集委員長 児童発達支援の機能と役割 井原 哲人 白梅学園大学子ども学部 障害乳幼児の支援施策としての児童発達支援は,量的に拡大する一方で質的低下の懸念があるとされたことから「児童発達支援ガイドライン」(2017年)が策定された.子どもの権利条約の視点から検討すると,これらの整備は,依然として医学モデルの障害(児)観を基礎とした支援に傾斜し,家族をその最良の支援者として位置づけている.また,施設の基準は差別的か,合理的配慮が不十分であり,報酬改定による供給体制のコントロールは限界に近付いていると指摘した. 自治体における障害児福祉計画の現状と課題 ――埼玉県下40市の第1期障害児福祉計画の分析 新井 利民 立正大学社会福祉学部 児童福祉法の改正により各自治体は第1期障害児福祉計画を2018年度を開始年として策定した.同計画は障害者総合支援法に基づく障害福祉計画と一体的に,そして障害者基本法に基づく障害者計画と調和を保ちながら策定することが求められている.本稿は,埼玉県下40市の障害児福祉計画を収集・分類・整理し,計画間関係や策定組織・策定プロセス,ニーズ把握の状況等について検討を行った.その結果を踏まえ,@関係者は計画間関係や策定サイクルを十分に把握して計画策定・進行管理の取り組みに関わること,A障害児や保護者のニーズ表出機会を綿密に行うこと,B障害児福祉計画の活動指標や見込量の数値目標の設定に留まることのない議論を策定プロセスに保障すること,C自治体間で比較可能なデータを,市町村・都道府県行政,そして障害者運動としても整備すること,等の必要性を指摘した. 発達支援と地方自治 ――鹿児島県伊佐市を例に 若林 隆泰 奈良教育大学非常勤講師 新自由主義改革のもとで,障害乳幼児の発達支援の領域でも,公的責任を縮小する施策が進められてきた.一方で,社会権の保障を担う自治体が,療育の保障や発達支援システムの構築を進めてきていることは注目に値する.小論では,鹿児島県伊佐市を例に,まず療育と発達支援システムの発展が自治体行政に関わることを明らかにする.次に伊佐市の「発達保障行政」を踏まえて,今後の自治体行政の課題として,政策指針としての人権原理,財政課題の基本的枠組み,自治体行政における「小さな自治」について要約して述べ,まとめとして保護者の社会福祉運動への期待を述べた. 連帯して療育の質を高めあう地域づくり ――広島県東部幼児通園療育機関協議会の取り組み 長谷川貴一 社会福祉法人こぶしの村福祉会 児童発達支援センター 草笛学園 中塚まちい 社会福祉法人こぶしの村福社会 児童発達支援センター ひかり園 1993年に広島県東部地域4市2町にある療育機関によって結成された「広島県東部幼児通園療育機関協議会(幼通協)」の取り組みを振り返った.障害の早期発見や療育に積極的とは言えない地域にあって,乳幼児健診後のフォロー教室,保育所などへの巡回相談を積極的に担い,保健師や保育士などとの連携を確かなものにしながら母子保健事業や療育機関の拡充につなげてきた.また,保健師,保育士,教員などを対象とした研修会や事例検討会を開催し,子どもの行動の意味を発達の側面から捉えていく視点を広めてきた.さらに,加盟療育機関持ち回りでの公開療育や職員の要求に根ざした研修は,職場を越えた学びやつながりによって,とりわけ若い職員の成長の機会になった.つねに子どもと保護者の発達への願いを大切にするために,療育の専門性を確かなものにしようとする思いによってつながり,積み重ねてきた取り組みである. 報告 「安心」「楽しい」「大好き」を大切にした療育 ――“ほんとはやりたい”思いとつながる 安藤 史郎 大阪府・社会福祉法人療育・自立センター 寝屋川市立あかつき・ひばり園 報告 保育園と家庭の間につくるスモールステップ ――並行通園の役割を考える 飯室 智恵子 山梨県・社会福祉法人いずみ会 児童発達支援センターひまわり 政策動向 障害児通所支援2021年度報酬改定の問題点 中村 尚子 特定非営利活動法人 発達保障研究センター 連載/実践に学ぶ 【報告】障害の重い子どもの特別支援学校の実践 今こそドキドキわくわく心おどる学校を 滋賀県立特別支援学校 木澤 愛子 【木澤実践に学ぶ】 みんなで“あぁ楽しかった”と思える授業づくり 鳥取大学地域学部 寺川志奈子 連載/実践に学ぶ 【報告】放課後等デイサービスの実践 集団の中で「一緒にしたい」思いを育んだ子どもたち 放課後等デイサービススタッフ 中嶋麻衣 社会福祉法人おおすぎ 城山れんげの里,立命館大学大学院社会学研究科博士後期課程 【中嶋実践に学ぶ】 放課後になかまと育ち合うことの大切さに気づくこと 静岡県立大学短期大学部 佐々木将芳 連載/ワイドアングル 認知症の人と家族の会のあゆみと介護・福祉の未来 花俣 ふみ代 公益社団法人 認知症の人と家族の会副代表理事 動向 コロナ禍における障害児教育の現状把握オンライン研究会の取組みから 國本 真吾 鳥取短期大学幼児教育保育学科 書評 田中智子著『知的障害者家族の貧困──家族に依存するケア』 評者 藤原 里佐 北星学園大学短期大学部 ■本誌紹介チラシ(PDF)をご活用ください ■障害者問題研究 バックナンバーへ |
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