2002年3月号 FILE.12 情報アクセス保障は世界のメインテーマ ー「もの」と「ひと」による支援をー |
「二次障害がさらに進行して右手もぜんぜん使えなくなり、パソコンはおろか新聞や本のペ―ジもめくれなくなりました。このメ―ルも妻に打ってもらっています。しかし、落ち込んでばかりもいられないので、なんとか最善の策をとりたいとがんばってみるつもりです」。 つらい電子メールを千葉のFさんからいただきました。脳性まひの人たちの「二次障害」は深刻な問題です。大阪の肢体障害者500人の内77%が不安を感じているという調査もあり(『二次障害ハンドブック』文理閣)、本格的な研究や対策が切望されます。 希望であるはずのパソコンの利用でも、仕事や作業に追われたり、ついつい楽しかったりで時間を忘れ、肩や腕の痛みやしびれで、キーボードが打てなくなるなど残念な話を聞きます。それぞれの障害の状態をよく把握し、適切な補助器具の利用と作業姿勢や作業時間、休息時間など自己流ではない専門的なアドバイスやトレーニングが求められます。しかし、そうした「ソフト」面での制度的施策はこの間のIT予算では皆無です。 * 政府予算の半分以上を占めるのは「行政の情報化」という機器や環境整備のハード部分のみの予算です。IT先進国のスウェーデンのハードではなくソフト面、教育や人材育成の重視とは「光と陰」のような大きな違いです。 そうした中で注目される2つの障害者関連の施策を見てみましょう。 ○障害者情報バリアフリー設備整備事業 「在宅の障害者の情報バリアフリーを促進する」目的で、「障害者パソコン」を5000施設に配布。費用は62億円。 ○障害者情報バリアフリー化支援事業 重度の視覚障害者や上肢不自由者に限定し、パソコン本体以外の周辺機器やソフト購入の3分の2を補助。 前者は「在宅」の障害者のために「施設」にパソコンを配る。いったい配られたパソコンはどう活用されているのだろうか。後者は、多くの障害者が日常生活用具として希望しているパソコンそのものではなく、それ以外の周辺機器に限定し、対象者も狭め、さらに3分の1の自己負担を強いる。また、自治体負担も3分の1と大きいため「自治体任せ」の感が否めないのです。 * 昨年の障害者の日、12月9日。国会議事堂側の新霞ヶ関ビルでパソコンボランティア・カンファレンス(PSVC2001)が開催され250名がつどいました。 「つながらない」「設定できない」「どうしたらいいかわからない」。ITの活用には障害ゆえのさまざまなバリアが山積しています。パソコンボランティアは、障害者の「助けて」の声に応えて、パソコンの利用やインターネットへの環境設定の手助けをする活動の総称です。 現在、40数団体が確認されていますが活動や形態はさまざま。日々の多忙さや団体運営の煩わしさもありますが、「できた!」という喜びを共有できる嬉しさ、支えているはずの自分が支えられていることを実感できる喜び。人との出会い。そんな小さな喜びが活動の原点、とりくみの源泉ではないかと確認していました。「だれもがITを活用できるための提案」として、「もの」と「ひと」による支援の必要をアピールしました。 * 障害者の機会均等に関する基準規則(国連、1993年)は、「どのような障害の種別をもつ人に対しても、政府は、情報とコミュニケーションを提供するための方策を開始すべきである」と述べています。情報アクセスの保障は、世界的な障害者運動の大きなテーマです。 (薗部英夫・全障研事務局長) |
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PSVC2001 全国的な交流、研修の場となっているパソコンボランティア・カンファレンスは1997年から毎年開催されている。メーリングリスト参加者は500名を越える。 (写真提供 日本障害者協議会) |
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