直線上に配置
バナー

2001年4月号
FILE.1
借りられる手が世界に広がった
  高橋玲子さん(視覚障害者)の場合

高橋さんのデスク
  「男はつらいよ」で有名な東京・葛飾区は玩具メーカーの街です。京成立石駅の総菜屋さんが並ぶ駅前通りが切れると「(株)トミー」の本社がありました。社員は約500名。イギリス、香港、タイ、フランスにも支社は広がっています。

  高橋玲子さんは、目や耳の不自由な子どもたちにも楽しめるように工夫された「共遊玩具」(注)に携わっています。主な仕事は、共遊玩具開発のための配慮ポイントの検討や普及活動、カタログやパンフレットの作成、おもちゃを紹介する通信誌「げんき」の発行などで、これは希望する家庭や学校などに届けています。また、さまざまな製品やサービスのバリアフリー化に役立つノウハウを国際基準化するための翻訳をしていて、国際会議へも出席します。

  全盲の彼女の机には、電話、パソコン、スキャナーと点字プリンターがあります。他にパソコンのデータを読み上げる音声合成装置とそれを聴くイヤホン。点字が表示されるピンディスプレイがあり、通常のディスプレイの場所には、熊のぬいぐるみが置いてありました(写真)。

                      ・
--ITで仕事の何が変わりましたか?
高橋 電子メールの役割が大きいですね。FAXの内容も電子メールで受け取れます。もらったメールはそのまま自分で読めて、読める形で残せて、必要があれば点字に変換できる。自分で正確に読んで、正確に返事が書ける。それが、いつでも、どこでも、だれの手も借りずにできることは大きな変化です。
 また、人の手を借りることもメールでできます。先日、国際基準に関連した翻訳で行き詰まったときも、海外駐在の方がメールで助けてくださって。自分でできるようになったというより、援助を得やすくなったというんでしょうか。目が見えないから特別の援助というのではなくて、自然態で力を借りることが気軽にできるようになった。借りられる手が圧倒的に広がった。

--膨大な量の点字辞書も、ずいぶんコンパクトになり、検索も簡単になりましたね。
高橋
 いままでは何か調べたいと思ったとき、図書館に行く。でも、必ずだれか見える人の手を借りて図書を調べなければならなかった。いまは、インターネットで検索すれば、おおよそのことはわかる場合が多いです。CD-ROMや電子ブックでも辞書が引ける。わからないままあきらめてしまうことが劇的に減りました。

--働き続けるために、特に大切なことは?
高橋 仕事の能率は晴眼者におよばないところがかなりあると思います。でも自分の得意分野を構築していけば、以前よりも可能性はずっと広がった。
 それと「ここは私にまかせて」と言えるものが一つでもあること。それがあると自分を活かしてくれようとする上司や仲間が「ここであいつを使ってやろう」と気を配ってくれる。そういう関係が大切だと思います。

--視覚障害者と手の不自由な人に、パソコン以外のソフトや周辺機器が上限10万円まで(行政は3分の2負担)補助されることになりますが、感想を聞かせてください。
高橋
 一般の人ならエンピツ一本ですむことが、私にはパソコンはじめいろいろな機器が必要です。そこには「差」があるのは事実だし、その「差」は行政にできるかぎりうめていただきたいですね。
              (文・写真 薗部英夫 全障研事務局長)


高橋さん たかはし れいこ
4歳頃までは、微かに見える「色」や絵本が大好きな女の子。家族の仕事の都合で、高校時代をニューヨークで過ごし、帰国後、国際基督教大学で学び、93年トミー入社。98年より共用品推進室勤務。「おもちゃが好きな人はやっぱり優しい」と笑顔がすてきです。
 「共遊玩具」
障害のある子もそうでない子も共に楽しめることを願ったおもちゃ。印刷されたマークの代わりに、小さな突起を付けることで、目の見えない子どもたちにも優しいおもちゃとなる。この活動は、「小さな凸(とつ)」と呼ばれ、日本から、アメリカ、イギリス、スウェーデンなど世界に広まっている。

(株)トミー 社会環境部共用品推進室
東京都葛飾区立石7-9-10
 TEL.03−3693−8651
 FAX.03−5698−3736

 E-mail: LDY00131@nifty.ne.jp
 http://www.tomy.com/
盲導犬マークとうさぎマーク盲導犬マーク 視覚障害者用

うさぎマーク
耳の不自由な子供たちと一緒に楽しく遊べるおもちゃ

メール アイコンメール
Copyright (C)2001 SONOBE hideo. All right reserved.
直線上に配置
もどる もどる