2001年10月号 FILE.7 情報のアクセシビリティを考える ーインターネットからも「段差」をなくしたいー |
台風11号の直撃を受けた、伊豆への休暇の旅でのことです。子ども三人抱えての5時間ほどの乗り継ぎですから、荷物を急ぎ持ったり、大急ぎで買った缶ジュースを抱えてと、どうしても手がふさがってしまいます。そんなときに閉口したのが自動改札。切符を入れるクチが右側にあるため、たまたま左手に切符をもってしまうとダメ。体をねじって無理に突っ込むか、荷物を持ち替える大儀を覚悟しなければなりません。 いつもは、むしろ快適に感じている自動改札が、突然“飼い主に牙を剥いてきた”ようです。唯一、伊豆急だけは自動改札ではなく、駅員に切符を切ってもらう旅の楽しみを満たしてくれました。 * インターネットを使っていても、この駅の自動改札に似た不便さを感じることがあります。なぜかキーボード操作ではたどり着けないところがあったり、どこをクリックしたらほしい情報があるのかわからないなど。インターネットは万人のための便利な道具だということになっているけれど、右手で切符を持つことを強要されているようで、おまけにその難しさは、まるで目の前に立ちはだかった岩壁のようです。先月登場した重森さんなら楽々登りきるのかもしれませんが、普通なら見上げただけでクラクラ、くじけてしまってもしかたがないでしょう。 * 視覚障害者ということになると、いわば暗闇のロッククライミングの困難さです。視覚障害者がキーボードを使ってインターネットがスムーズに使えるようになるには、1年以上かかると言われています。実際はどうでしょうか。この困難にもかかわらず、多くの視覚障害者がパソコンにチャレンジし、インターネットを使いたいと願っています。それは、言うまでもなくインターネットが生活、仕事にとってかけがえのない道具だからです。先日、NHKのラジオ放送の収録でごいっしょした視覚障害者の荒川さんは、こんな例で説明してくれました。 「たとえば、CDを買おうと思って店に行っても、店員にCDのラベルや曲目を読んでもらって買うのは難しい。インターネットショップなら曲目も全部わかるし、試聴できるものもある。だからCDはインターネットで買ってます」。難しいけれど、インターネットが使えれば視覚障害者にはかけがえない便利さ、情報に直接アクセスできる楽しさが待っています。 * 問題はアクセシビリティです。ホームページの「文字」は視覚障害者にも読めますが、「画像」は読めません。しかし、この問題への取り組みは大変に遅れています。日本では昨年から総務省が取り組みはじめ、ようやくホームページのアクセシビリティ基準を明確にしました。各省庁のホームページもアクセシビリティ基準を満たすよう定められました。ですが、まだまだ付け焼刃です。パソコンへの困難な道をわけ入って、ようやくたどり着いたと思ったら、肝心の情報が視覚障害者にアクセスできないものばかりだったらがっかりです。 行政の情報にアクセスできないということになれば、権利保障という面でも大きな問題です。インターネットがすべての人の日常生活に便利さをもたらし、通信の道具として定着しつつあるとしたら、このことに今こそ真剣に大急ぎで取り組まねばなりません。 (文/梅垣まさひろ・ライター) |
総務省がはじめたアクセシビリティ点検・修正システムのホームページ http://www.jwas.gr.jp がこれ。 多くのユーザに利用してもらい、わかりやすく使いやすいシステムにしたい。 |