むかし、といっても浪人時代のことです。
上野動物園のゾウアザラシが好きでした。
まわりに比べれば、けっこう大きな円形の水槽のなかを、
わたしが行くと、猛烈な勢いで、ただただ泳ぐのでした。
そのうち、疲れたのか、厭きたのか、水を噴き上げながら、鼻で大きな息をします
ぶわー!
そしてまた、わたしのほうに目をやりながら、
ぐるぐると泳ぐのです。

いつ夜明けが来るのか見いだせない”小さな時代”のなかで、
わたしは水槽の中で健気に泳ぐゾウアザラシに
自分を重ねていたようです。
啄木や漱石のように「時代閉塞」を感じていたのでしょうか。

その後、10年くらいたったころだったか、
ラジオで偶然ゾウアザラシの死を聞きました。
それからまた10数年の時がたっています。
一度、ゾウアザラシのいた水槽を見に行かねばとおもいながら
あわただしく時は過ぎてしまいました。

「けっしてまよわず」と言われた四十路もそろそろ折り返しが近く、
体型はゾウアザラシをわらえず、
鍼の名医に助けられながら、まよってばかりの日々です。
ただ、時代は、
一人一人の大切にしている”小さな時代”をも超えて、
静かに、静かに大きく流れていきます。
その向こうに、夜明けが近づいているのかもしれません。

人と人とのつながりを大切に
さらに、今年は展望を持ちつつ(持とうと努めつつ(^^;))
奮闘努力!!
のつもりになっている 2000年1月1日午前1時台のわたしです。
今年もどうぞ、よろしく、おつきあいください。
                        

しののめ
   しののめ(北欧・イエテボリで)


□ もどる