九州鹿児島大会アピール

アピール 国民のみなさんへ

 21世紀を人間的復権と発達保障の世紀に
  ーこの街で、育ち、学び、暮らすためにー

 7月28日から3日間、私たちは第35回全国大会を鹿児島市で開催しました。全国各地からの参加者、要員、ボランティアなど2600人が参加し、新世紀の幕あけにふさわしい熱気あふれる大会となりました。

 開会全体会では丸木政臣さんの記念講演をききました。丸木さんは学徒出陣で陸軍に入り、ここ鹿児島で終戦を迎えた体験を語りつつ、今日の子どもと教育をめぐる深刻な実態を分析し、どの子も発達する権利があること、人間らしくあることの核心は希望があることだと強調し、希望の灯をかかげながらがんばろうと呼びかけました。
 構成詩「南風」は、全障研鹿児島支部27年の歴史をつづり、「時代を創っていくのは、政治家や偉い人たちと考えていたけれど、私たちでも時代の創り手になれる」という親たちの確信を生きいきと表現しました。
 また、坂口真平さんの二胡の特別演奏にはじまった閉会全体会では、ダウン症という障害のある岩元綾さんが障害があるといって負けるわけにはいかない、生きてやろう、そう自分に言いきかせてきたことを語りました。また、自分の英訳した『マジックキャンディドロップ』 の読みきかせもして参加者に勇気と感動を与えてくれました。

 50の分科会では各地の実践、学習、研究の成果を交流し、深めました。「障害乳幼児のための制度づくりと運動」の分科会では、「身近なところで療育を受けたい」「安心して相談できる機関が地域にほしい」というねがいの実現めざす運動が、各地で起こっていることが報告され、今年5月に開所した鹿児島沖永良部島の和泊町療育センターをはじめ、いくつもの成果があがっていることが明らかになりました。
 また、「共同教育、統合教育・交流」の分科会では障害児と健常児との直接のふれあい、共同のとりくみ、健常児にたいする障害理解の教育などが多彩にとりくまれており、ともに生きる社会の建設に向けた教育実践がゆたかに蓄積されていることがたしかめられました。
 「地域での自立生活と支援」の分科会では、在宅重度障害者の介護者が疲れはて、子殺し、無理心中事件があとをたたない実態があらためて出されました。家族を介護から解放し、絶望的なまでの孤立化を防ぐ方向で、公的責任において介護保障を充実させること、あわせて親と子の関係のあり方を問い直しつつ、親が元気なうちに勇気をもって介護を地域と行政にゆだねるなど、介護の考え方や社会システムを変えていくことが重要だという問題が提起されました。
 
 この九州鹿児島大会を準備するにあたって、地元の仲間たちは昨年秋から「わくわくリレー21」というとりくみを開始し、大きな成功をおさめました。これは「この街で暮らしたい」という願いをもとに鹿児島県全域をカバーする15地区のほか九州各県で障害者問題を考える集いを開催したものです。
 各地のつどいでは、療育センターがない、放課後に子どもたちを預かる学童保育になかなか障害児を受け入れてもらえない、養護学校が遠い、作業所がないなど、乳幼児期、学齢期、青年成人期の各ライフステージので障害児者、家族は多くの悩みを抱えていることがはっきりしました。環境整備が遅れている離島や山村部などは、学校に通うために引っ越ししなければならないという例もあります。
 「地域の中で安心して学び、安心して働き、安心して暮らす」。障害を持つ子どもたちも、親も願いはひとつだということも明らかになり、親の会が結成された地域もありました。
 私たちはこのとりくみに深く学び、全国各地で「地域から立ち上げる運動」を組織し、研究運動をさらに広げていきます。障害者問題を解決するための地域の計画づくりも発展させていきたいと思います。
 
 国民のみなさん。私たちの現在の生活はますます困難を増し、将来の展望にもまことにきびしいものがあります。しかし、本大会に持ち寄られたとりくみとその成果、地元、九州・鹿児島の底知れぬエネルギーに励まされ、私たちはこれからも力づよく前進します。みんなの力をあわせてとりくめば、道は必ずひらけます。ともにがんばりましょう。

     2001年7月30日
        全国障害者問題研究会第35回全国大会

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