「みんなのねがい」の好評シリーズは、単行本『新版・子どもの障害と医療』
(尾崎望、出島直編、2000年、全障研出版部)になっています。
「みんなのねがい」2002年10月号では、つぎの特集(監修・尾崎望)を企画しました。
詳しい内容にはふれられていませんので、不明な点や、さらに詳しく知りたい点は
かかりつけの医療機関や医師にご相談ください。 (「みんなのねがい」編集部)



摂食


●食べる機能は身につけるもの
 食べる機能は、生まれてからの学習によって発達し、獲得されるものです。赤ちゃんは、生まれてすぐに乳首から母乳を飲めるように胎児期から準備しています。しかし固形物を口に取りこむ(捕食)ことや、噛んで唾液と混ぜたり(咀嚼)、飲みこんだり(嚥下)する機能は、後で身につけるものです。上手に摂食するためには口唇・下顎・舌の運動能力の向上が欠かせません。
 摂食障害で典型的なものは誤嚥です。誤嚥は、食べ物が送られる口腔、咽頭、食道のどの段階でも起こる可能性がありますが、とくに注意が必要なのは咽頭です。咽頭では、食べ物が通る道(食道)と息が通る道(気道)が交叉しており、食べ物を安全に食道に送るためには非常に精密な協調運動が必要になります。

●食べる前から始まっている介助
 以下、摂食障害のある人の介助の留意点をいくつかあげます。
食べ物の認識から始まる食事
 食べ物を見たり、匂いを嗅いだり、私たちの摂食動作は食べる前から始まります。介助する際にも、言葉をかけながら、どのような食べ物か、認識することを援助します。
コップで水分を飲む
 コップの縁が歯にのるほど深く差し込むと、水分はうまくとれません。下唇でコップが支えられるように援助しながら、上唇に水面があたるようにコップを傾け、自分で吸うのを待つようにします。
固形物を食べる
 
固形物は、下唇を支えに前歯で噛み切り、舌で臼歯に運んで、くりかえし臼歯の上ですりつぶします。つまり、頬と舌で臼歯の上に食べ物を留めて、くり返し噛みます。前歯で食べ物を噛み切れない場合には、食べ物を臼歯の上にのせるようにします。
スプーンで食べる
 スプーンで介助するとき、大きく口を開けるように要求することがあります。しかし、口は必要なだけ開けて、スプーンが入ったら、しっかり閉じることのほうが大切です。大きく開けた口の口蓋や歯にスプーンをあてて食べ物をこそげ取るようなやり方はよくありません。
食事はコミュニケーション
 待っているのに口に運んでもらえなかったり、せっかちに口に押し込まれたり、思うように食べさせてもらえないと、食事が苦痛になります。介助者からの一方通行にならないように、信頼関係のなかで楽しい食事場面をつくりましょう。
       

葉

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