「みんなのねがい」の好評シリーズは、単行本『新版・子どもの障害と医療』
(尾崎望、出島直編、2000年、全障研出版部)になっています。
「みんなのねがい」2002年10月号では、つぎの特集(監修・尾崎望)を企画しました。
詳しい内容にはふれられていませんので、不明な点や、さらに詳しく知りたい点は
かかりつけの医療機関や医師にご相談ください。 (「みんなのねがい」編集部)
障害の重度・重症化 -- どのような障害の重い人も人間として尊重される。 ●進んでいる障害の重度・重症化 障害が「重度」であるとは、生命と日常生活を保つための介護が継続的に濃厚に必要な状態を言います。「重症」とは毎日の生活に医療的なケアが必要不可欠である状態です。医療によるケアの必要性は少ないけれど、毎日の生活を支える二四時間の人的資源や多くの配慮が必要な人は、重症ではなく重度となります。 近年、継続的な濃厚な介護を必要としながら、医療的なケアも常に行なっていかなければ生活が保てなくなるような障害の重い人が増えていることが指摘されています。その背景には、新生児医療をはじめとする医療の進歩があります。また、障害の重度・重症化が進む一方で、どんなに重い障害のある人も社会の中で一人の人間として生きていける社会をつくりだす動きも前進しています。 ●呼吸・食事の機能と加齢 《呼吸・食事の機能》 重度・重症化を考える時にポイントとなるのは呼吸機能と食事機能の障害です。この二つはたがいに影響しあっており、どちらかが悪化すれば悪循環をおこしやすい状態にあります。唾液や痰がたまる、誤嚥、胃食道逆流現象など予防することが、障害の重度・重症化を防ぐことにつながります。 自力での呼吸や摂食が難しい場合には人工呼吸器の使用、気管切開、酸素吸入、一時間に一回以上の吸引、経管(チューブ)栄養などの方法があります。 《加齢》 加齢(高齢化)も重度・重症化に深く関わります。人間は成長期を過ぎると、加齢にともなって身体機能の低下が見られます。障害の重い人によく見られる加齢による症状として、以下のようなものがあげられます。 体変形の進行 頸椎症、脊柱側わん、胸郭変形、股関節脱臼、関節拘縮など、運動機能の低下を招いて二次障害にもつながります。 易骨折性 重度・重症の障害のある人はもともと骨折しやすい傾向にありますが、急激に体が大きくなる思春期以降、自分の体重が支えきれずに、さらに骨折がおこりやすくなります。思春期以降も日常生活の活動性を低下させず、適切な栄養と運動で骨をじょうぶにすることがなによりの予防策です。 摂食・嚥下機能低下 加齢とともに食べ物を飲みこむ力が弱くなったり、せきこみなどの反射が低下する人もいます。小さい頃から誤嚥を予防して、口から食べる機能や楽しみを長く維持しましょう。 |