障害児者を支える人たちの
健康読本
   絶版

垰田 和史(たおだ かずし)(滋賀医科大学予防医学講座助教授)
 
   
  2003年8月1日 発行  ISBN4-88134-121-9 C3036 
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目   次

はじめに 人生を楽しんでいますか

第1章 先生と家族の健康問題

 障害児学校の先生の健康問題
   疲れ果てていた養護学校の先生
   放置されてきた先生の健康問題
   養護学校で起きている健康問題
   全国の先生が腰痛に苦しんでいる
   「楽な仕事」というのは大きな誤解
   学校行事と連動する健康状態
   腰がつらい学校内の仕事
   「運動会」を中止して学んだこと
   理解されにくかった「運動会中止」の理由
   健康に働く権利

 家族の健康問題
   家での生活を支える人たち
   主に介護している人はだれか
   現在の健康状態は?
   家庭での介護者は「元気な人」が多い?
   健康だと思いこまなければ続かない毎日の生活
   介護者の睡眠
   身体の不調について
   腰痛の痛みの程度
   初めて腰痛になったのは子どもが何歳のころか
   腰や腕に痛みを感じる介護内容

 まとめ
   学校の先生も、ご家族も

第2章 介護者の健康障害

 介護者の多くに発生する腰痛と頸肩腕障害
   腰痛や頸肩腕障害が病気として扱われない日本
   骨で支えて筋肉で動かす私たちのからだ
   筋肉の疲れはどうしておこるのか

 腰痛
   主な症状や原因となる動作など

 頸肩腕障害
   どんな症状が出るのか
   発生の原因と発生しやすい職業
   保育士や介護者に発生しやすいわけ

第3章 予防対策

 健康バネ計り
   予防対策は生活や働き方の点検から
   健康限界を考える「健康バネ計り」
   疲労を回復する力/疲労の原因/バネ計りの働き方

 腰痛や頸肩腕障害の予防対策の視点
   介護方法の管理
     介護方法の管理の視点/具体的に考えてみる/負担軽減のための工夫/介護方法の見直し
   介護環境の管理
   健康管理の視点
   自分でできる健康づくり
   冷えは避ける
   健康についての学習
   道具の利用・工夫
     腰痛予防ベルト/ズボン/膝あて着きズボン/靴
   介助補助具の利用

 介護に関わる人の健康や安全に関する法律
   職場の安全衛生体制
   労働災害補償制度

 まとめ
   あきらめずに予防対策を積み重ねましょう

 資料 肩こり、腰痛を予防するストレッチ体操

第4章 介護負担を減らす改善工夫事例

 私が出会った改善事例
  《事例1》車イスにあわせて教室の床を高くしました
  《事例2》棚を高くしました
  《事例3》洗い場を高くしました
  《事例4》汚物洗い漕を高くしました
  《事例5》抱きかかえ介助にクッションを利用しました
  《事例6》食事介助に背もたれやクッションを利用しました
  《事例7》床イスを工夫しました
  《事例8》大人に合わせた子どものイスを利用していました
  《事例9》先生の思いが創った、移動できる座イス

 おわりに
 重度心身障害児施設との出会いから
 「自分の人生を健康で楽しく過ごしたい」

 参考文献

   表紙・本文イラスト 渋谷真理子
■みんなのねがい10月号
 介護する人もされる人も、大きな声で
 「自分の人生を健康で楽しく 過ごしたい」と言っていいのです。
 そのことを追求していいのです。

   岩上嘉恵(東京・八王子養護学校寄宿舎)

 著者は、本誌「医療」でも執筆された滋賀医科大学の垰田先生。
 本書では、障害児・者の介護や教育に関わる人たちに共通する健康問題として「腰痛と頸肩腕障害」を取りあげています。日本ではなかなか病気として扱われませんが、働く人たちの権利保障が進んだ欧米ではれっきとした病気として扱われていることに驚きます。
 障害児学校の職員の健康実態調査でも、腰痛と頸肩腕障害の発生率が高く、最もひどくなるのは、行事が集中する時期と重なっていることが数値で示されています。まわりを見渡すと、前日の疲れを翌日に持ち越し、疲労回復できないまま「気力」でがんばる職員が多いように思いませんか?
 少しでも良い障害児教育をしたいとがんばった結果、健康を害してしまい、めざす教育ができなくなるとは何とも矛盾した結果ですよね。
 また本書は、障害児・者を抱える家族の健康問題にも触れています。学校や福祉施設で働く人に比べて家庭での介護者(家族)は、不健康を自覚している人の割合が低いのはナゼ? 家庭での介護者には特別元気な人が多いのか? いえいえ、とんでもありません!!障害児・者の家庭生活は家族の介護が頼りという状況の中、介護者が自分の健康を振り返る余裕もないことの現れなのでしょう。健康を守る取り組みは、健康の危機を自覚したところから始まります。自分の身体のSOSに素直に耳を傾ける意識やゆとりをもつ必要性を強く訴えています。
 腰痛や頸肩腕障害を予防する対策もまとめられています。とくに負担軽減のための改善事例は身近なものをうまく利用して、すぐに試すことができそうなものが多く参考になります。
 福祉や教育現場で働く私たちの健康や生活を守ろうとするとき、障害児・者や高齢者の権利と自分たちの権利と、どちらを主張するのか二者択一的な決断を迫られがちではないですか? 両者の権利を守らなければ両立できないことを、本書をきっかけに職場の仲間とあらためて確認したいです。
 最後に…本書掲載の「肩こり、腰痛を予防するストレッチ体操」もお試しあれ! 身体も気持ちもほぐれて気持ちいいですよ!!

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