発達障害の人たちの ライフサイクルを通した発達保障 別府 悦子 (中部学院大学子ども学部 教授) 定価 本体1700円+税 ISBN978-4-88134-046-2 C3037 2012.7.20 |
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<目 次> はじめに 3 第1章 幼児期の子育て 15 (1)本人のつらさ・不快感を理解する支援 16 服を着ることに抵抗のあるゆうきくん/発達の問題に気づかれない/キーキーと泣き叫ぶことをくり返して/本人の不快感と子育てのしにくさ/幼児期の支援を充実させること (2)「みんなといっしょ」の保育の中での支援 23 新幹線へのこだわりのあるまさるくん/友だちとのトラブル/大好きな電車の話で乗せてみて/保育者の揺れと迷い/言い聞かせる指導/「よかれ」と思うことと「強い指導」の問題 【実践報告①】子どもの思いをくみとる保育を 小川ことゑ 30 四歳児クラスのころのまさるくん/五歳児クラスになって/興味の幅を広げて/保護者・保育士集団の合意をつくって/まさるくんの気持ちを代弁して/チャレンジを支えて/まさるくんの力に必ずなると信じて/【小川実践から学ぶこと】 第2章 幼児期から就学への移行期の支援 41 小学校一年生担任のとまどい/小一プロブレム/保育者と教師のすれちがい/幼小の引き継ぎの問題点/ともに考えていく関係づくり 第3章 学童期の支援 49 (1)「だんだんできるようになる自分」を育てる 50 花◎プリントの取り組み/白黒をつけるのは「特性」か?/ありのままを受け止めてくれる存在 【実践報告②】「手をつなぐ」チャンスを求めて 熊本勝重 57 サニーレタスの絵と枝豆くばり/「けんたの花◎プリント」学習で自信を/初めて描いた「手をつなぐ けんたと先生」/「逆ギレした」と自分で言えた日/オレ、三年の字書く!/「先生なんか大きらいや!」の言葉に、手をつなぐ可能性を求めて/【熊本実践から学ぶこと】 (2)九・十歳ごろの発達の節目と「がんばれない」自分への意識 67 大人に行動をコントロールされている/枝豆の苗植えがきっかけになって/お母さんの思いとのズレとわかり合い/「自分とは何か?」/仲間との多様な生活経験 (3)他者の気持ちに気づきはじめる小学校高学年 74 学校ぐるみでの取り組み/修学旅行の金鎚事件/教師がつなぎ役になる 第4章 中学生・思春期・高校生への支援 81 (1)学校不適応問題と特別支援教育 82 保健室登校をめぐっての意見の相違/保健室での対応/中学校の特別支援教育 (2)いじめによって傷ついた心への対応 89 さやかさんとご両親のつらい経験/登校、不登校のくり返し/高校に進学して/思春期の支援 (3)高校における特別支援教育の充実を 96 ことばの発達のつまずき/高校での取り組み/高校における特別支援教育の課題 第5章 教師の指導困難とコンサルテーション 103 対応に困り果てて/安心できる場所づくり/粘り強くわたるくんのことを信じて/とまどいと試行錯誤の中で 第6章 青年期の支援・ライフサイクルを通じた支援 113 (1)「自分らしく生きたい」という願い 114 幼少期、小中学校時代/高校に登校できず中退に/不登校の子どもをサポートして/誰もが笑って話せるときがくる (2)親ごさんとともに 122 お母さんの心配と傷つき/お母さんを支えた人たち/布団を干して幸せという思い/生命という大きな力と回復力 補 章 人のライフサイクルと発達 129 おわりに 137 文献一覧 141 ◆本書を推薦します こころとそだちのクリニックむすびめ院長 田中 康雄 希望をもち続けた者だけがたどり着く港 この本は、ある偶然のなかで生まれました。この本のもとである連載の第1回目が掲載された月刊『みんなのねがい』(全障研出版部)2011年4月号ができた翌日が、あの東日本大震災が起こった日でした。別府さんが、なんとかなるという希望を伝えようと、書き始めたときでした。 東日本大震災のあと、僕たちはたくさんのことを想い、ひとつのことを願うようになりました。それは、明日へつながる希望とよんでもよいかもしれません。 この本は、発達に何らかの偏りがある方々に向けて、それでも強く生きていこうとエールを送る応援の書ですが、この時期だからこその必然性が根底に潜んでいます。人がていねいに歩んできた、歩もうとする道を描写した本です。 僕は、著者の別府さんに、これまで何度かお会いしています。そのたびに、穏やかな笑顔に癒やされ、忙しく動き回る頭に感嘆し、静かな怒りをもち続けていることに敬服してきました。背景に赦しがあります。 未来を託す子どもたちに向き合う僕たちは、感情のまま突っ走ってはいけませんが、想いと願いをもち続けないといけない、僕は別府さんに会うたびに反省します。 この本は、どうかゆっくりとお読みください。よくある対応のマニュアル書ではありません。表題にあるように、幼児期から青年期に至る人生行旅を、ていねいに描写しています。Aくんにある障害を述べたものではなく、ある特性をもちながらも多面的な才能をもったAくんを、僕たちはどう理解して、どう付き合っていったらよいかを考え続けるための本です。その時その一瞬を一生懸命に悩み、泣き、そしてすっくと立ち歩むための希望の書です。僕は、この本を読んで、とても勇気づけられました。 別府さんは、青年期の章で「誰もが笑って話せるときがくる」と小見出しをつけています。僕は「ときがくる」という文言に心が止まりました。自分が自分を見つけるためには、時間の時熟が必要です。しかし、それは希望をもち続けた者だけがたどり着く港です。 僕は、別府さんがタイトルにつけた「発達保障」という用語を「希望」という文字に置き換えてみました。すると、遠い地平線の彼方の港がうっすらと見えた気がしたのです。 ご家族の方々だけではなく、日々子どもたちと出会うすべての方に読んでいただきたいと思います。 ◆岐阜新聞 2012.8.26 発達障害に寄り添う ◆日本教育新聞 2012.12.17・24 都築学「将来見据えた支援の形問う」 |
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