声明=日本学術会議新会員候補の任命拒否に関する声明
日本学術会議新会員候補の任命拒否に関する声明
2020年10月11日
全国障害者問題研究会常任全国委員会
10月1日、菅内閣総理大臣は、日本学術会議が推薦した第25期新会員候補のうち6名の任命を拒否しました。しかも、任命拒否の具体的な理由は明らかにされていません。1983年の国会では、内閣総理大臣の任命について、学術会議の推薦にもとづく形式的な任命であることを確認しており、拒否する性質のものではないことは明らかです。したがって、今回の菅内閣総理大臣による任命拒否は、日本学術会議法に違反して日本学術会議の独立性を侵害し、「学問の自由は、これを保障する」と定めた日本国憲法を蹂躙する行為であり、断じて許すことはできません。政権が多種多様な学術研究の評価に立ち入ることで、学界や社会の分断を誘発し、時の政権の見解・意向にそぐわない知見や意見を排除する空気が醸成されていくことを深く憂慮します。
日本学術会議は、戦前・戦中に国策協力した学術界自らへの歴史的な反省に立ち、政府からの独立性を原則に、日本の平和的復興ならびに人類社会の福祉への貢献を使命として1949年に設立されました。科学研究の立ち遅れや民主主義の未成熟が、障害のある人びとの人間的なねがいを奪い、人権侵害をいっそう厳しいものとすることは、障害者問題の歴史が教えるところです。障害者問題の根本的解決をはかり、障害のある人びとの権利保障と発達保障を期すためには、思想や言論の自由、学問の自由、差別なき人権の尊重を前提とした科学的な認識と批判が欠かせません。不当な権力を行使して学問の自由と自律性を侵害し、自由な言論や対話の機会を閉ざすことは、個人の自由や権利を制限し、ひいては発達保障のための研究運動を制約するものとして見過ごすことはできません。
全国障害者問題研究会常任全国委員会は、菅内閣総理大臣の行為に抗議の意を示すとともに、任命を拒否した6名の候補者について、任命拒否に至った具体的な経緯を説明し、推薦にもとづきすみやかに任命することを求めます。そして、真理・真実にもとづき、科学的な認識にひらかれた自主的・民主的な研究運動をたゆまず進めていきます。