障害者権利条約資料集1
目次
資料集の活用にあたって 2
障害者権利条約について旺盛な論議を
2001年12月、第56回国連総会でのメキシコ大統領による提案から4年足らずの間に、障害者権利条約が形をともなったものになろうとしています。たいへん速いスピードですすむ条約化の作業の舞台で、障害当事者団体をはじめとするNGOが連携して大きな力を発揮していることも注目すべきことです。今年1月に開かれた条約草案を起案する作業部会には、27か国の政府代表(日本を含む)、1国際人権機関とともに12のNGOが参加し、積極的な提案を行いました。
作業部会から特別委員会に報告された「草案」(2004年1月27日) は25条から成り、これらの条文にたいして、全部で114項目にわたる註がつき、特別委員会において十分に検討されるべきことが明文化されています。註というのはたとえば、「特別委員会は、この条文(第3条〔定義〕)の検討に際して、ここに含まれている諸概念の具体的な定義に関して、特別委員会及び作業部会に提示された多様な提案を考慮することを望むかもしれない」という具合です。実際、5月24日〜6月4日の第3回特別委員会は、註に記された論点を中心にして討論がすすみ、一致点を見出そうとする努力が重ねられました。
全障研は第3回特別委員会のNGO傍聴団に加盟団体の日本障害者協議会(JD)の一員として代表を派遣し、討論のプロセスをいち早く伝えました。引きつづき第4回特別委員会(8月23日〜9月3日)も同様の活動を行う予定です。
この資料は、障害者の権利の条約化という歴史の歯車にしっかりとかみあった学習研究運動をすすめていくために作成しました。
第3回特別委員会を傍聴した玉村公二彦さんは、現在進行している条約交渉は、今日に至る国連の人権に対するとりくみと障害分野でのとりくみの到達点として進行しており、そのようすを「開かれた透明性のある討議」と形容しています。同じく藤井克徳さんは、今回の審議過程で、NGOの重要性がますます明確になっていると指摘しています。
この資料集に収録した報告やインタビュー、資料から、今回の権利条約がここにいたるまでの世界的な人権保障の成果を十分に取り込んだ上で、障害のある人の特別なニーズにこたえ権利を実質的に保障しようとするものであることを学ぶことができるでしょう。同時に私たちは、条約審議によって、世界の人権保障の水準をさらに発展させるものとなることが展望されていることを理解できます。
しかし「草案」にもとづいた討論が始まったとはいえ、個々の内容の論議は緒についてばかりであり、さらに「一般原則」や「定義」といった条約の基盤にかかわる部分や、「モニタリング」や「国際協力」など国際条約の性格を規定する部分については、国ごとの意見の違いが顕著になっています。草案、討論に関する情報が掲載されているホームページなども参考にして、私たちのまわりに、権利条約実現に向けた大きなうねりをつくり出そうではありませんか。そのためにも、本資料を資料にして、学習の機会を広げていきましょう。
制定に向けて動く、障害者権利条約
/玉村公二彦(奈良教育大学) 5
いよいよ実質審議入り
/藤井克徳(JD常務理事・きょうされん常務理事) 13
第3回障害者権利条約に関する特別委員会概要と評価
/外務省 19
国連・特別委員会の主要な論点 25
障害者権利条約の実現と私たちの課題
/藤井克徳 43
資料
川口外務大臣国連総会一般演説 61
外務省「障害者権利条約に関する国連アドホック委員会における 条約作成のための議論概要」 62
年表 65
権利条約関連データ集 70