デンマークの確信<2> 夢は夜ひらく スカンジナビア政府観光局(デンマーク、ノルウェー、スウェーデン) http://www.visitscandinavia.or.jp/ が発行している「HYGGE(ヒューゲ)」という冊子Vol5の表紙に見知った顔が二つ。わたしの親戚のような体型のホーカンとガールフレンドのトーリーがツーショットで写っている スウェーデン第二の街・イエテボリで二人のお宅を訪ねたことがある(1993年)。 「私と彼女は恋人同士で婚約者です。二人は朝ベットから起きるだけでも介護がたいへんです。彼女と夜を過ごした朝は、さらにたいへん(笑い)。私と彼女のそれぞれのたくさんの介護人がやってきて、援助します」 と当時32歳のホーカンは言っていた。 「誰もが人間らしく生きる」「安心して暮らす」「自分のことは自分で決める」「社会のなかで生きていく」、、「福祉」って、人々のまるごとのくらしのことなのだと感じたものだ。 それから5年後。デンマーク第二の街・オーフス(28万人)の市営住宅の一角にあったグループホームで、夕方から知的障害者が楽しみに通う、「乗馬クラブ」や「手芸クラブ」があると聞いた。 2001年の訪問では、念願の「イブニングスクール(夜学)」を訪ねることができた。 http://www.nginet.or.jp/~kinbe/SAS/sedk2001/sedk20015.html ○●○ 「夢は夜ひらく」なんて歌があったが、障害者の生活をまるごと知るためには、夜に視点をあててみたいと、コペンハーゲン(80万人)とデンマーク第3の街・オーデンセ(23万人)の夜のアクティビティセンターを訪問した。 Lavuk(ラブック)は(フランス語のような響きでカッコいいだろうと副施設長は言っていた)10歳から25歳までの青年を対象とした余暇クラブだ。 ▲ラブック入口 コペンハーゲン市の外れ、市の補助器具センターや障害者団体の事務所が多いエリアだという。交通の便は良くないが、「ドア・ツー・ドア」の移送サービスがある。マイクロバスは8台。最長の人で45分の移動時間だそうだ。 利用者は一日平均100人。午後から夕方が60人、6時以降は40人くらい活動はスポーツ(乗馬、スキー、スイミング、ボーリング等)やクリエイティブな活動(ペインティングなど)、音楽の3つが中心。キャンプや国内旅行、外国旅行も(昨年は万里の長城にいったそうだ) 「大事なことは指導員を介してでなく、自分で世界をつくっていくこと。トラブルはしょっちゅうだが体罰は絶対しない。226名が登録しているので、気の合う仲間はだれかみつかる。友達づくり、ネットワークづくり、恋人さがしも不可能ではない」 「すべての人が同じことができるとは思っていない。なるべく選択肢が多くなるようにしている。なるべく安く、すべての人が参加できるようにしている」 と副施設長のゲアスは語っていた。 運営費は市が負担(「社会教育」予算として年間5億円。フルタイム職員が24名、総勢スタッフ100名)。根拠は「社会サービス法」の「障害があることで特別な負担をかけてはならない」。会費は、14歳以上は月50KR、それ以下は250KR(1KR(クローネ)は19円くらい) ちなみにそれぞれの旅行の費用は自己負担だそうだ(つまりはそれを払える年金がしっかりあるってことだ)。もちろん職員の費用は市の予算だ。 さらに市には重い子のための余暇活動センターもあり、10月1日には近郊のヒレロズ市に、主に精神障害者を対象にしたアクティビティセンターがオープンするといっていた。 問題は25歳をこえたとき。 「グループホームといっしょにイベントを企画したりしているが、公共サービスがないのは問題」「障害者の夜学は2、3あるが、自分で通える子に絞られるし、軽度でないと参加できない」。 ○●○ アンデルセンの生まれ故郷のオーデンセは静かな街だ。ホテル前にあった学校はバレエの専門学校のようで、小さなプリマたちが走っていた。 予定では、カフェ・クレアという障害者が働く喫茶店でひとやすみすることになっていたのだが、案内された海軍の兵舎跡を改造したというその建物(写真)には、驚いた。 コペンハーゲンの余暇センターは、けっして美しいとも広いとも言えず、むしろ汚いからこそ、なんでも遊べるちょっと悪もできそうな空間(わたしはとても好きだが)であったのだけれど、こちらの建物はそのものがじつにイカしている(^^) 「喫茶店」はその建物=新装されたデイアクティビティセンターの喫茶部だった。市が建物を借りて、知的障害者20名が交替で働いているとのこと。 案内してくれるイングリッシュさんの後ろには「ネットカフェ」している男たちがいる。 タバコの煙も頭が痛くなってくるくらい充満している。 ミニ映画館がある。ジャスバンドの練習スペースがある。このバンドのメンバーは8名。街や仲間のパーティで演奏する。ディスコのホールがあり、別室には学校が終わってからの「学童クラブ」もあった。 きわめつけは、ペインティグルームで、それぞれ個室のアトリエで絵に集中するそうだ(写真) ○●○ コペンハーゲン県の作業所を見学した日。 織物に熱中する女性に、「仕事が終わったらどうしてるの?」と聞くと、 「(視察した)3時過ぎには、ラブックに行くのよ。たくさん友だちが来るし」 と恥ずかしそうに教えてくれた。 日中の働く場、活動する場があって、夜がさらに輝いている。 わたしの高校の卒業式の歌がふと頭をよぎった。 君の行く道は 希望へと続く 空にまた 日が昇るとき 若者はまた 歩き始める (「若者たち」 作詞:藤田敏雄 作曲:佐藤勝) ▲クロンボー城への道 |