デンマークの確信<6> バリアフリーの街の人びと 10月第一週の週末はこの夏開かれた全障研全国大会の総括会議で信濃路へ。 車窓に流れるのは黄金色の田んぼ。ときどき見える白色はそばの畑だろうか。 帰国後、熱帯夜が続いていた。 身体にけっこうこたえたのは、10数度の温度差でも、7時間の時差でもなく、湿度差。 あちらでは、手洗いした下着が翌朝には乾くほど乾燥している。カミサンは、のどを守るためと、バスタブにお湯はりして、部屋の湿度を高めていた。こちらではつきあい以上の酒は飲まない私にも、ビールがめちゃくちゃうまいと感じたのは、身体が乾くからなのだろう。 日本の湿気。そして稲作による田園風景。 数年の単位ではなく民族としての長い歴史の単位のDNAには、そういうことがすり込まれているように感じる。工業国のスウェーデンよりも、農業国って感じのデンマークの方が私にはなじむように感じるのもDNAの関係なのかなあ しかし、デンマークの食糧自給率は115%(穀物120%、豚肉485%などなど)、日本はこの40年間で激減していまやたったの28%だ。農耕民族の末裔だなんてとてもいえない。 出生率をみても、デンマーク1.82(1995年の数字。ちなみに83年は1.37だった)。 日本は1.3(1973年に2.08の人口置き換え水準を割ってからずっと下がる) (湯沢雍彦「少子化をのりこえたデンマーク」朝日選書、2001) エネルギー自給率は、5%以下だったのが、1973年のオイルショックを契機に政策転換。風力(世界一の風車数となり20%に)やバイオマスなど再生エネルギーを推進し、現在はなんと137%!!(もちろん原発なし)日本は、、、、、35% (ヨアン・S・ノルゴー「エネルギーと私たちの社会 デンマークに学ぶ成熟社会」新評論、2002) ○●○ コペンハーゲンに新しくできた地下鉄の車内の写真を見てほしい。 自転車が車内に2台ある。これは地下鉄に限らずデンマークの常識らしく、自転車は市民の足なのだ。市内には貸し自転車のターミナルがたくさんある。 だから電車に乗せるのはあたりまえだ。(たしかに国民学校の障害児学級の前にも改造した自転車が置いてあって、自転車に乗る練習をしているといっていたなあ)もちろん、それは車内のことだけじゃなく、駅の改札も、入口も、自転車を乗せられるようでなければ、乗せられないのだ。 ▲地下鉄の入口 乳母車も車いすも自転車も乗れる 次の駅で、乳母車が2台乗ってきた。それぞれ若いカップルで、一組は女性が、一組は男性が乳母車を押していた(ともかく、街のあちこちでこの乳母車が目立った。3年の間で、出生率はさらにのびてる感じだ)。 かの国の乳母車は、きゃしゃなつくりではなく、どっしりとしていて、ちょっとやそっとではこわれない「装甲車」風。けっこう場所もとるのだけれど、車内の一番いいとことを平気で確保し、乗りあわえせた人たちも何事もないように平然としている。 これならば、高齢者も障害者も車いすで乗るのはあたりまえだ。かなり巨大な電動車椅子でも平気で地下鉄が使える。 バリアーをなくすのは、障害者のためだけではない。市民がわがこととして自転車や乳母車を使うにも便利だからだ。しかし、それは、まさに障害者のためになっている。 コペンハーゲンは古い町並みだ。古い建物はもちろんバリアフリーではない。石畳の道路も多い。でも、みんなは古いものが好きだから、それを守ろうとするし、その建物がバリアフリーでなければ、必要な人にはみんながすぐに手助けをするのだそうだ。そして必要な人にはパーソナルアシスタントのヘルパーが保障される。 対岸に新設されている国立のオペラ座は、バリアフリー思想が徹底されている。どこかの国の「ユニバーサルデザイン」とはちがって、けっして「安上がり」施策ではない。 この市営地下鉄は、人件費削減ねらいとかで無人自動運転。キップを売る駅員もいない。でも、無賃乗車損失は予想より低いのだそうだ。ここでも合理主義は徹底されている。ちなみに抜き打ち車内改札は1万円の罰金とか。 しかし、初めて利用する異国人には、このキップを買うのがじつにたいへん。乗る路線、エリア、時間帯によって値段が変わる??(^^;)。 自動券売機の前にしばらく立って、チケットを買う人のやり方を眺めていたが、よくわからない。 けっきょくおろおろしている東洋人をみるにみかねたのか、素敵な学生風の女性二人が、小銭入れを預かりキップを買ってくれた。 お礼をいうまもなく来た地下鉄に飛び乗ると、女性の車掌さんがすすっとやってきて、あなたがたはチケットはあるのか? と心配してくれた(けっして無賃乗車犯として疑われたわけではなく)。 あとで知ったが、地下鉄の回数券は街にたくさんあるセブンイレブンで買うのが便利だそうだ。 ▲歩道と並行して自転車道。市内のあちこちにレンタル自転車。 |