陽はまた昇る<4> フィンランド・オーロラ小学校のインクルージョン ■今年健常児のクラスにダウン症児をインクルージョンした2年生のクラス ■学習障害児や学習に遅れのある子たち(3、4年合同)のクラス ■全校集会(クリスマス休暇明けはじめての日だったので) ■食堂での給食 に参加し、どの場面でも、子どもたちはめちゃくちゃ子どもらしく、元気で、おちゃめで、人なつっこかった。 さて、健常児のクラスに4人のダウン症児を、統合(インテグレート)でなく、一つのクラスとして運営(インクルーシブ教育)しているクラスをこの学校は「テディベア クラス」と呼んでいる。 授業参観すると、ざっと40人近くが、みんなで歌を歌ってる。この日は1、2年生で3クラス(43人)がいっしょになっていたるのだそうだ。他のクラスの子たち30人がクラスに帰ると、残ったのは13名。 4グループに3人のダウン症児がいる。教員は6人いた。一人の男の子は、知的障害も重そうで、絵の様子では発達年齢で1歳くらいだろうか。2本の鉛筆で机をたたいている。ほとんどマンツーマンで先生に手を引いてもらっていた。 「子どもたち同士で学ぶことが多い。それは障害児、健常児どちらの側にもある」 と担当の若い意欲的な女性教師のハンナが言った。 こうしたとりくみは、エスポー市では2つ目のケースで、まだ例外的なケースなのだそうだ。 「このクラスでの配慮点、また受け入れの条件はなにか」を質問した。 ・エスポー市はいままで障害児が普通学級で学べる環境を提供していなかった。 ・去年の1年生の4人の場合、親が4年間アピールして、市に訴え、市が、受け入れる学校を公募して、オーロラ小学校が手を挙げた 翌日訪問した障害児を受け入れている保育園の話と総合すると、 ★健常児の場合は1年(98%の6歳児が利用) 障害児の場合は5歳から2年間、就学前教育が義務づけられている(社会福祉局管理)。就学前教育の「場」は小学校にある場合もあれば、保育園にある場合もある。障害児の場合は、どんな学校、学級などに進学をさせるか、この場で検討している。スタッフは、就学前教育の指導資格をもっていること(特別教育と保育の二つの資格)。実践は保育園の教員1名の他に3名の教員(近くの小学校の教員)のチームで行う。 とのことだ。 つまり、障害を持って生まれたら、すぐに市の職員や保健婦などの訪問、相談、指導があり、親の会が組織され、保育園で専門的に保育される。 そして、就学前教育の場で、保育関係者、教育関係者が集団で2年間、子どもの状態をつかみ、就学の場を総合的に検討するというのだ。 また、就学後困難がある場合には、医師、心理職などの診断を受け、親と校長で話し合って特別な指導をうける資格がある子を認定しているのだそうだ。 その「資格」によって、学習障害児や学習に遅れのある子たちのクラスを利用できることとなる。 さて、校長のレクチャーの話から。 ・インクルーシブ教育はいままでおこなわれてはいなかった ・歩行に困難な子、視覚に障害のある子が通常学級で学んだことはあった ・知的な障害のある場合の普通クラスの形式は新しいやり方だ ・大事なのは教員の確保。そのための経済的な理由で、多くの自治体では断念している。 エスポー市はそこにたどりついた。教員1名、補助3名の体制だ。 ・そうでないと、障害児を入れても教育条件が悪いと、健常の子にとっても、 障害児にとっても、いい効果はなく、悲惨なことになる可能性がある。 ・健常の子どもの両親に対しては、はじめるときは、個別に話をした。 しかし、拒否した人もいる。その場合は、その子は別のクラスにいくようにした。 ・いまの「テディベアクラス」の子の親は、別のクラスにかえてほしいと望む親は 少なく。ポジティブなものとして参加している。 82歳、元教師の上杉文代さんが、いつのまにかクラスの子どもたちに近寄って、優しい、美しいまなざしでほほえんでいた。<写真> ◆ ◆ ◆ 「この学校の給食は質が高い!」と校長先生が強調していたが、食堂で子どもたちといっしょに食べた給食は抜群にうまかった。 不足気味の野菜も豊富で(北欧は野菜はほとんど輸入のハズだ)、焼きたてのパンはおいしく、ジャガイモ煮、肉団子、牛乳も最高だ。山ほど料理を取る子もいれば、ちょっとの子もいる。 赤いカーテンの向こうには雑木林。テーブルには赤いランチマットの上に熊や犬やなどのぬいぐるみがおいてある。先生も子どもたちも思い思いの場所に座る。 給食はもちろん無料だ。(すいません。わたしは山ほど食べてしまいました) しあわせだなあ。 ▲食堂の風景 雪のない校庭では、ブランコをこぐ子、サッカーする子たちがいて、帰りぎわには、みんなが明るく笑って手を振ってくれた。 + + + 帰国後、全面カラーの新聞広告が目に飛び込んできた。 「教育に近道はありません。金融教育に人と時間をかけています」 某銀行と某教育大学との共同研究活動なのだそうだ・・・ |