陽はまた昇る<5> フィンランドの養護学校事情 雑誌「教育」2006年10月号(国土社)は、特集「フィンランドの子どもの学力とその社会的土壌」を企画し、森博俊(都留文科大学)が「スペシャル・エデュケーションの展開」を論じている。 その「表1」を読むと、2005年で、 フィンランドの全児童生徒数=58.6万人 内、
森は :フィンランドでは、「特別なニーズをもつ子ども」の教育の場は、 :可能な限り、通常学級を基本に考えられている。 :これが困難な場合にのみ、特別クラスや特別学校等、 :特別なグループで学習することになっている。 :この意味で、原則的には、通常学級を軸にしたインクルーシブな教育を :志向しているといえる。 とのべつつ、 :ただし、現実には(略) :1.6%にあたる9663人が特別学校に就学している。 :日本の場合、盲・聾・養護学校小中学部への就学者は0.5%であるので :その比率だけみれば必ずしも総合学校(日本の小中学校に相当)中心とはいえない。 とも言っている。 今回の旅では、フィンランドで普通小学校を、デンマークとフィンランドでそれぞれ養護学校を視察した。「現実」を直接見てみたかったからだ。 ◆ ◆ ◆ ヘルシンキ中央駅から北へ1駅目のパシラから西4キロにある、機能障害児のための国立ルスケアスオ学校(Ruskeasuon koulu)。設立120年という学校(国立移行は1986年)だ。 教師のサイラ(SAILA・TEINLA)のレクチャーによれば ・生徒は113人。6歳から17歳の脳性マヒの子どもたちが、南フィンランドエリアから通って来ている。 ・内30人は、週末だけ帰宅する(寄宿舎を利用する子だ) ・以前は筋ジスの子らが15〜20人いたが、いまは10人いない。 ・国立の養護学校は8つあり、ここは運動機能障害児の学校で、知的と肢体の子らがいる。 同様の養護学校はクオピオ市とオール市にもある。視覚、聴覚の学校もそれぞれある。 ・フィンランドは、普通教育を受ける権利がだれにでもある。 どういう障害があってもその子に応じたカリキュラムでとりくまれる。 住んでいる地域の学校が基本だが、そうではない子らをここで専門的な対応をしている。 ・ここでは「オールインクルーシブ教育」にとりくんでいる (質問で確認すると、「学業」や「トレーニング」とバラバラでなく 「統合、総合的」な概念としてそう言っているとのことだ) ・カリキュラムは普通の教育と同じシステムで、6〜8名のグループで行っている。 ・それぞれの子どもに視点をあてて、教師、アシスタント、セラピストの連携でとりくんでいる。 ・リソースセンターの役割も果たしており、サポート内容は、自治体の普通の学校内の障害児クラスへの相談で、ここの先生が出向くこともあれば、子どもたちがここにやってくることもある。 ・先生たちのスクリーングの場でもある。 <質問>普通学校とはどんな交流をしていますか? ・近くの学校訪問などを過去にしたことがあるが、いまは行われていません。 <質問>卒業後の行き先、進路先は? ・1番多いのは特殊職業訓練学校。単純作業ができ、保護雇用ができそうな子らは作業所やワークセンター、仕事の可能性が少ない場合はデイサービスです。 各教室や温水プール、寄宿舎も案内された。 子どもたちと先生たちの様子は、教室に貼ってあった写真を撮った写真を参照してほしい。 全体として、じつに自信にあふれた学校だった。 ◆ ◆ ◆ 週刊「東洋経済」が1月27日特大号で「ニッポンの教師と学校」を特集している。 「ひと目でわかるニッポンの教師」という資料をみると、 ○労働時間は1日11時間、休憩時間はわずか9分 ○減少する公立学校数 ○学校運営の予算は校長の年収以下! がすぐに目についた。 ○「GDPでみた教育費の公私負担比率」に目がとまった。 2003年の場合
そして ○約8割の教師が「もう続けられない」と 日本の文部科学省は、障害者権利条約の採択を前に、今後「インクルーシブ教育をめざす」と表明した。 しかし、「ぼちぼちね」ではすまない根本的な変革、専門的教員(育成!)と教育環境づくり(!)が根本であることを、財政はまったく裏付けていない。 ▲市場のサーモン |