1998年9月20日、日曜日、スウェーデン統一選挙の日。
わたしたちはストックホルムの中心地から地下鉄で7つほど離れた
新興住宅地にあるハンマルビイ基礎学校を訪問した。
この学校内に設置された投票所と
政権党の社会民主党の地区会長のアンナ・リーサ・ヨハンセンさんから
投票システムの解説を受ける。
スウェーデンの政治制度については
岡沢憲芙『スウェーデン現代政治』東京大学出版会
が
参加ー開かれた選挙
決定ー見える政治
執行ー機能重視の政府構成
情報ーオピニオン市場の活性化
政党ー政治腐敗と公庫補助制度
市民生活とデモクラシー
の柱で検討しているので参考になる。
しかし、「百聞は一見にしかず」
(団長 曰く「百聞したからこそ、一見が価値をもつのだ」)
しかし、ともかく投票所が明るい。
(子ども連れで投票所へ)
投票する人は、お年寄りだけでなく、若い人も、子ども連れも続々とやってくる。
まるで、地域のお祭りか大規模なバザーの雰囲気だ。
ホームページで写真が見れる方には直感していただけるかもしれないが
(「みんなのねがい」誌1月号の巻頭グラビアでもでますので、ご期待)
玄関で、有権者に最後の訴え、というか最後のカードを渡している
各政党の運動員たちも、これもまた明るい。
これは、日本の
なんというか、カビが生えてくるような、
なんともいえない陰湿な雰囲気と違う。
(投票所前には各党の党員が最後の訴えをしている)
つぎに、驚いたのは、投票の仕方だ。
国会、県議会、市議会の3種類のカードが、それぞれの政党分あるのだが、
自分が支持するそれぞれの議会の政党のカードを
まず、封筒に入れる。
そしてその封筒を投函するのである。
なんてことないような単純なシステムだが
これが、なんのなんの、
じつにコロンブスの卵的システムなのである。
(3種類のカードを封筒に入れる)
日本のように、直接書かせるシステムだと、
たとえば、脳性マヒなどによって手がふるえる人などの場合、
代理人に書いてもらうと、だれに投票したかわかっちゃう。
しかし、書くのでなくて
3種類のカードを封筒に入れればいい。
決定的だったのは、
障害者などの場合、郵便投票によるものが多いのだろうとおもっていたが、
一番多いのは「代理投票」であるとのこと。
つまり、政党カードは、さまざまな政党がそれぞれのカードをくばってるから
自宅で、3種のカードを封筒に入れて、サインして封印する。
それを信頼できる人やヘルパーに託して、「代理投票」してもらう。
「代理投票」が増える理由もよくわかる。
また、各政党も、
社民党なら有名な「紅いバラ」などシンボルを活用して
だれもがより政党を選択しやすくしている。
もちろんスウェーデンは完全な比例代表制度だ。
得票率がそのまま各議会の議席数に反映する。
それと、決定的に予想はずれだったのが、情報保障のシステムだ。
きっと、スウェーデンでは「総理府」みたいなところがしっかりしてて、
キチッと障害者に情報保障してるんだろうなあとおもい、
ご自身、車いすの娘さんを育てたというアンナおばさまに質問すると、
「特別なことはしていない。点字資料もしてない」とのこと。
つまり、こうだ。
障害者には日常生活でパーソナルアシスタント制度があり、
ヘルパーを雇用している。
だから、特別に選挙だからということでなく、
日常のこととして、選挙情報などは自分のものにしている。
さらに、たとえば、視覚障害者ならば、所属する視覚障害者団体から、
さらに詳細な選挙情報がとどけられるのだそうだ。
投票所にしても「選挙だからバリアフリーに」ではなく、
日常使う小学校だから、
公共の建築物は皆、バリアフリーでなくてはならないという法律があり、
当然のこととして、公共建築物が投票所であるならばバリアフリーなのである
ということにすぎないのだ。
日頃の生活、くらしの部分で、何重ものぶ厚い保障がある。
これには歴史の重みを感じてしまった。
また、障害をもった議員についても、
障害のあるなしでなく、その議員としての力量があるかないか
が問題なのであって、
全盲の社会保障大臣も当然のこととして生まれるし、
だからといって、
「障害」だけを「勲章」にして議員している人もいないそうだ。
ちなみに
スウェーデンの場合
県は医療・交通に責任をもち
歳出の内訳は「保健医療サービス」が75%
市は学校や福祉に責任をもつ
歳出の内訳は「社会福祉サービス」が30%
「義務教育」 24%
この予算を分配するのが議員のおもな仕事で、
ほとんどがパートタイムの兼業政治家だそうだ。
職業の内訳は、現職の教員、市役所職員、福祉関係者の順で、
18歳の女子高校生市会議員もいるという。