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衆議院内閣委員会
高度情報通信ネットワーク社会形成基本法案
参考人意見陳述

インターネット中継画像から IT戦略会議議長 出井伸之 君
慶応義塾大学教授 村井 純 君
慶應義塾大学大学院教授 国領二郎 君
全国障害者問題研究会事務局長 薗部英夫 君
横浜美術短期大学講師 福冨忠和 君

参考人に対する質疑
自民、民主、公明、自由、共産、社民(各15分)

2000年11月7日 午前9時〜12時 各15分


IT基本法と障害者
                      薗部英夫@全国障害者問題研究会

 まずはじめに、こうしてパソコンの画面を液晶ビジョンでスクリーンに投影することができるようにしていただき、委員長はじめ委員のみなさん、昨日からお手間をおかけした事務局のみなさんにこころから感謝申し上げます。
 さて、私は、障害者の権利が守られ、「ああ生きていてよかった」と実感できる社会の実現をめざす立場から、IT基本法について意見をのべさせていただきます。
 発言はスクリーンの画像といっしょにさせていただきますが、みなさんのお手元にはすでにプリントアウトした資料もお配りしていますので、のちほどご参照ください。

まず、現状と問題点です。
ITは、障害者には「無が有になる」希望の道具です。
しかし、やっかいなのがパソコンで、インターネットも同様です。テレビのようにはすぐには使えない。何もしなければただの箱です。
さらに、障害があることで、さまざまなバリアーが山積します。
障害種別や程度のちがい。日常生活の状態のちがいも大きく、さらに相談、習得の場がほとんどありません。
つぎに具体的に現状を紹介させていただきます。

足でタイプしている場面です。
「論文一つ書き上げると疲れで1週間は歩けなくなってしまう」
「それでも自分で原稿が書けるってすばらしい」と言う大阪のある研究者です。タイプの際の足首にかかる負担は手首の数倍です。

くちびるで電子メール
「お父さんとメールで話ししたよ」と多摩地区の高校生
彼はくちびるの先でキーボードをタイプします。エンジニアで出張が多く会話の機会の少なかったお父さんもうれしそうでした。

ヘッドギアで入力作業
 もっと働ける場が欲しい  江東区の障害者作業所にて
 筋ジストロフィーという筋力が低下していく病気の彼ですが、できる力で入力します。でも、重度の障害者を受け入れる企業は少数です。月収5000円という小規模の障害者作業所が圧倒的です。

ピンディスプレイと音声合成があれば
 画面のテキスト文字を指先にピンが上下して「点字」で伝えることができます。画面のテキストを音声合成装置が読み上げます。すると働けます。全盲のエンジニアの職場進出のうれしいニュースが続いています。

知的障害者のテクノロジー活用
スウェーデンは1991年から研究プロジェクトにとりくみ、わが国でも最近実用化しました。お札や硬貨などの絵や写真を見ながら、一対一対応させたすることで、簡単に釣り銭がわかります。
ただし値段は、一台110万円です。

自作の補助具もそれぞれ工夫しています。
割り箸に指サックをつけた「補助具」でマウスを操作します。
しかし、ワープロでインターネットしますが速度は遅すぎます。
在宅の彼の期待は「インターネット授業」の受講です。

しかし、マウスの操作は不随意の動きがあるとつらい
40歳あたりからの「二次障害」といわれる、不随意の動きの無理の重なりによって、新たに生じる障害の不安もあります。
医療など専門機関との連携がとても大切なのです。

新潟の鈴木正男さんからメールで意見をいただきました。
「30歳頃、足で文字を書けなくなったので、足でキーボードを打ってワープロを使いはじめました。
42歳で障害が重度化して、座ることができなくなり、寝たきりとなりました。もうだめかと思いましたが、科学技術の進歩を思うと、どんな障害でも入力できる機器は開発できると信じることにしました。いまは、あきらめるのではなく、人を介してもいいからと考えて、介護人と二人三脚て自分のホームページをつくり、介護情報を発信しています。」

 事例の最後は福井の長谷川清治さんです。重度の脳性まひ者です。からだの緊張が強く、歩行は困難で、重い言語障害もあります。わずかに動く一本の指でパソコンを操作します。ベッドが生活の場です。
 長谷川さんは、「インターネットを使いたい」と願いましたが、近くに彼が学べる場はありません。そういう意味では、教育も福祉も医療もみんな必要なんです。彼は各地に出かけていって学び、インターネットの使い手になりました。
 すると、教えられるばかりでなく、「自分も何かの役に立てるかもしれない」と、気持ちが変わりました。
 「助けて!から助け手へ」と、この夏、長谷川さんの介護ボランティアや先生、施設職員やエンジニアなど10名ほどで「パソコンボランティア福井」を発足させました。長谷川さん自信が「助け手」となったのです。
 こうしたたくさんの人たちの願いや希望に、IT基本法はどう応えているでしょうか? 

情報バリアーフリー 4つの課題 

1)情報・コミュニケーションは人権 です。
「同年齢の市民とおなじ人権を保障する」とした「障害者の権利宣言」1975年
1993年には、国連は、「どのような障害の種別をもつ人に対しても、政府は、情報とコミュニケーションを提供するための方策を開始すべきである」と「障害者の機会均等に関する基準規則」で明確にしました。以後アクセスの保障は、世界のメインテーマです。
わが国では、「情報アクセス、情報発信は新たな基本的人権」と郵政省電気通信審議会が指摘しました。
 それは、身体障害や知的障害、精神障害など、すべての障害者を対象に、権利として位置づけると、高齢者はじめ「すべての人々」が利活用できることにつながるからです。人間はITから恩恵を受ける受け身の存在でなく、よりよく生きるためにITを道具として活用するものだと思います。この視点が基本法は明確ではありません。

2)緊急改善の3事項
○日常生活用具に「コミュニケーション機器」を。ITの時代に「パソコン」がNOは時代錯誤でしょう。現行では、重度障害者に「電動タイプライター、ワードプロセッサ」給付はありますが、パソコンは認めません。「パソコンは多機能だから」が理由とのことですが。科学技術の日本だからこそ最高のものを障害者にと発想を変えてほしいです。

○公的機関にいつでも利用できる通信環境を
 筋ジスの患者さんたちなど病院でくらす人たちがいます。携帯やPHSは病院では使えません。数日入院しただけでもたいへんなことなのに、そこでくらす人たちをわすれてはなりません。
 また、北欧では図書館がインターネット利用の拠点でした。
 さらに養護学校ふくめた学校に通信環境は必須です。公民館も施設も、地域の公的な資源に通信環境を徹底することで利活用は飛躍します。

同時に人的サポート体制です。
 通信環境が整備されても、相談できる人のサポートが必要です。そのため、障害がわかってテクノロジーもわかるという専門家の養成が急務です。公的機関に、だれもが使える通信環境が整い、そこに専門家が行政の責任で、配置ないしは養成されるならば、ボランティアも力を発揮しやすくなります。

3)国の責任
 通産省の、情報処理機器アクセシビリティ指針は力作といえます。しかし、「連邦政府が購入、用いる機器は、障害者でも使えるものでなくてはならない」という米国リハビリテーション法に比して、強制力がない。企業まかせでなく、国のリーダシップをみせてほしい

 郵政省は、この5年間調査研究会を組織し、@地域での人的支援、Aホームページのアクセシビリティを強調しています。これも同様です。

 公的情報のアクセシビリティは徹底してほしい。
 中・長期的整備目標と財政計画をつくり、しっかり総括が必要です。
 IT補正で60億円分のパソコンを福祉施設にくばると聞きますが、障害者の願いは、いつでも使える通信環境の整備と人的サポートこそ国としてやってほしいことなのです。

最後に最大のポイントは、
 調査・研究・開発・決定への当事者参加です

 以上、ITはすばらしい可能性をもっています。それ故に、どんなに重い障害があっても「人生は自由ですばらしい」と実感できるように、もっと本格的な、「すべての人のための」IT基本法を希望します。



衆議院のホームページ
 (薗部の発言は平成12年11月7日内閣委員会 午前9時45分ごろからです)

○ITと障害者問題資料(国会議事録から)

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