全国障害者問題研究会
第37回全国大会
滋賀2002 8.1〜3
滋賀県立体育館いっぱいの参加者
Photo 豆塚猛

■平和・人権・発達保障の歴史をつくる主人公に!
全国障害者問題研究会第37回全国大会に、全国各地から参加されたみなさんに、大会準備委員会を代表して、心からの歓迎のご挨拶を申し上げます。
 ここ滋賀は、日本一大きい琵琶湖を抱き、「さざ波や志賀の都は…」と歌われた古い歴史をもつ地です。さらに、戦後まもなく開設された「近江学園」の創設者の一人である糸賀一雄さんが、「この子らを世の光に」との新しい福祉の思想を育んだ地でもあります。その後、近江学園やびわこ学園をはじめとする関連施設での実践や、大津方式と称された乳幼児健診活動等をとおして発達保障の実践と理論を探究し、1965年に京都や大阪の仲間たちと「発達保障研究会」を結成しました。それが2年後の全障研結成へと発展していったことから、滋賀は発達保障運動の源流の地とも言えます。今大会の記念講演は、その中心的役割を果たされ全障研初代委員長であり現顧問の田中昌人さんにお話をしていただきます。
 全障研が結成された36年前の1967年には、米軍の北ベトナム爆撃がいっそう激しくなり、国の内外で「ベトナム侵略戦争反対」の行動が大きく広がった年でした。  第37回全国大会を開催する2003年には、米英軍がイラクヘの無謀な軍事攻撃をおこない、世界中でかってない大規模な「NO WAR」の抗議行動が巻き起こりました。戦争は、人為的かつ大量に障害者を生み出します。私たちは、すべての人の生命と人としての尊厳が保障される世界の到来を強く望んでいます。
 今年の大会テーマは「平和・人権・発達保障の歴史をつくる主人公に」です。滋賀ではこの大会テーマを掲げて全国大会を準備する中で、県内7福祉圏域を中心に県下各地で12回のプレ集会を開催して、各地各職場での発達保障を見据えた実践の検証とこれからの展望を語り合ってきました。合言葉は「集まれば元気、学び合えば勇気、わかれば根気、みんなで行動して覇気を!」です。
 21世紀、だれもが人として生きる権利の保障と、発達の保障を大きく花開かせるために、私たち自身がその主人公となり、地域や職場の中にたしかな基盤を創り出していきましょう。この大会を通じて、参加者のみなさんが大いに学び、交流と連帯を深められ、さらなる全障研運動の前進への確信と展望をつかむ機会とされることを期待いたします。 
                第37回全国大会(滋賀)準備委員長・渡邊 武 (ノエル福祉会理事長・全障研全国委員) 
わたなべ たけし                             

■滋賀県立体育館の開会全体会は、品川副委員長、渡邊準備委員長のあいさつに続き、國松滋賀県知事、山田大津市長などの来賓あいさつがありました。また、妹尾常任全国委員による基調報告は、いのちと平和を守る決意のもと、障害者のくらしを守る視点から内外の動向をつかみ、支援費制度のもとの福祉や「特別支援教育」の教育制度などの大きな転換のなかで、あらゆる角度から総合的な点検、発達保障論の今日的な意義や障害と障害者定義と施策など大きく4つの研究運動の課題を提案しました。
        
■記念講演(8.1 滋賀県立体育館)  
 講師 田中 昌人(京都大学名誉教授)さん
       『発達保障を民主主義の光に』

 1932年生。教育心理学の発達的基礎を生涯発達心理学の立場から研究。
 全障研初代委員長。人間発達研究所所長。
 主著 『発達保障への道』(全障研出版部)『人間発達の理論』(青木書店)
 『子どもの発達と診断@〜D』(大月書店)他多数。


 記念講演では、20世紀をふりかえりながら21世紀を展望し、課題として、教育権保障と共に、憲法27条の「働く権利」を強調されました。

たなか まさと

■文化行事 8.1
 「映像と語りでつづる滋賀の発達保障の歴史と現在」は深い共感と感動を呼びました
 文化行事

■入門講座 (会場 立命館大学びわこくさつキャンパス)
 1)発達保障とはなにか/講師・荒川 智(茨城大学教育学部教授、全障研副委員長) 8月2日午前
 2)介護する人の健康問題/講師・峠田和史(滋賀医科大学助教授)          8月2日午後
 3)施設でのゆたかなくらし/講師・石原繁野(入所更正施設・あざみ寮元施設長)   8月2日午後
 4)発達の扉をひらく/講師・白石正久(大阪電気通信大学教授、全障研副委員長)   8月3日午前

■分科会・特別分科会
 障害者運動の分科会龍谷大学での分科会

■特別企画、閉会全体会など
 特別企画は、「サングループ事件」の被害者を支える会代表の高谷清さん(フリーライター・第一びわこ学園前園長)が「障害者の人権を考える」のテーマで、障害者の「人格権の侵害」を明らかにし、県と国に対して「不作為の違法」を断じた「サングループ事件裁判」判決をもとに、裁判の意義を明らかにしました。
 最終日の閉会全体会では、障害者運動で活躍し自身知的障害児の父であり、スモン病被害者の妻を持つ中西正弘さんが「滋賀の地で学んだことを、逆流を押しとどめる力に」の1時間の特別報告を行い、大きな感動をよびました。
 また、障害児の放課後ケアの運動でも大きな動きが生まれています。大会中日の夜には、関東の3つの放課後グループの呼びかけで、全国的な連絡組織の準備会発足に関する話し合いの場が持たれました。
準備事務局のようす(直前)
 東海道(現在の国道1号)は鈴鹿峠を越えて甲賀の里を抜け、草津宿から大津宿、そして逢坂山をこえて京に至る。中山道(県内では国道8号線)は関ヶ原方面から彦根へ抜け、草津宿は終わりであり始まりである。準備事務所はこの草津宿、旧東海道(いまは狭い一方通行の道)のそばにあります。
 大会直前、準備スタッフは最後の「実務要項」づくり作成と並行して、足りないセクションのボランティア確保と、必要なセクションへの配置連絡に必死の形相。夕方からは仕事を終えたメンバーもどんどんやってくる。2DKのマンションの事務所にピーク時は20名をこえました。外は涼しい夏だけれど、部屋の中は熱気、熱気。携帯電話の着メロは一人として同じものがないから、いろんなメロディがやんややんや。
準備事務局
 しかし、この準備メンバーにはいろいろな方がいらっしゃいます。その筆頭は準備委員長の渡邊武さん。福祉施設の理事長さんで滋賀の障全協会長だったり、平和委員会などなども。聴覚障害児、病弱児の教員生活後の第二ラウンドも熱い思いで老いも若きもリードしてます。「写真で見る全障研20年のあゆみ」のなかで、結成大会の基調報告提案者が30歳代の渡邊さんです。37年後の今、今度は会場確保やさまざまな折衝、事務所の「電話番」などなどマルチパワー全開です(^_^)
 記念講演の田中昌人さんの「特別資料」ということで、滋賀入り前に、映画「夜明け前の子どもたち」の「完成台本」を印刷所に渡してきました。大会当日、お目見えします(^_-)。けっこう価値ある資料になったかなあと自画自賛してますが、映画でみるのとはまた違って、「シナリオで読む」というのも新しい発見があり、「夜明け前の子どもたち」はまさに「古典」だなあとしみじみ感じました。以下、そのチラシに引用させてもらった糸賀一雄さん(近江学園園長)の言葉です。
 「児童の世紀」といわれた20世紀が3分の2をおえたところで、わたくしたちはあえてこの映画に「夜明け前の子どもたち」という題名をつけました。国連が人権宣言をして20年目のことし1968年は「国際人権年」です。しかし障害をうけている人たちの基本的人権は、十分守られているとはいえません。昨年の8月には半月間で4人の重症心身障害児が、親の手で生命をたたれました。施設への入所は50倍以上の競争率なのです。しかもその施設の整備や入手は不十分です。現場はその打開にむけ立ち上がりはじめました。この子どもたちの基本的人権を守る取り組みが、療育の場ではどのように追求されていこうとしているのかを知っていただき、こんごの方向を多くの方々に考えていただきたいという願いで、この映画を制作しました」
 いま、あらためて、一人一人の人権を守ると言うことの意味を考えています。(S)

記念講演特別資料
  「夜明け前の子どもたち」完成台本を作成

療育記録映画・「夜明け前の子どもたち」の台本です。
映画の感動とともに、その問題提起の深さを活字で感じることができると全国大会の会場で評判でした。「特別資料」として限定作成された「完成台本」ですが、少しだけ残部あります
(頒価1000円+送料)。
完成台本
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