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■書評■ ◆WEBマガジン福祉広場=井上吉郎編集長 『北欧 考える旅』(薗部英夫 全障研出版部 本体価格1700円)を読んだ。著者は何回も北欧を訪ねる旅を組織し、加わっている。50代半ばの著者は、この20年ほどの間に数回、彼の地を訪ねているが、本書はその訪問の中間決算であり、棚卸と言ってよい書物だ。訪問先や移動途中の写真が多用されているが、これが面白く、理解を助ける。 著者の頭を占めていることの第1は、福祉の国・地域社会を知ることだ。社会の仕組みを、例えば選挙の投票までさかのぼってわかろうとする。したがって、その社会は、空理空論の社会ではなくて、あくまで具体的で、現実的。例えば、障害者の社会参加のタクシー代だけで1000万円を超える公的支出になるが、そのことに異論を唱えない人々が描かれている。 著者の足と考えは学校に向かう。統合教育をめぐって苦労してきた著者らしく、教師などから本音をひきだしている。誰をも排除しないことと、誰でもを教育の対象とすることを統一して捉えようとの立場が、全編で確認されている。それが学校教育に留まらないで、人生に及んでいる。 第3。著者の考えと筆は、常に日本から離れない。日本を変える、改革する。そのために北欧から何を学ぶか。国を組織し、社会が成立している。例えば、障害者への施策に「負担」を課す国と、「負担」を当たり前のように考える国との違いに著者は驚き憤慨する。法律や税金への考えの違いがなぜ生まれるのか。著者はその回答を求めて、北欧を訪ねる。 本書を、障害者権利条約を知るための本としても読める。また、北欧の教育を知るための本としても読める。成人期を迎える障害者の導きの書としても読める。そして、人生とは何かを語った書とも読める。だからと言って、難しい書ではない。分かりやすい文章にあふれているが、考えさせてくれる作品でもある。 ◆オンライン書店ビーケーワン 人生という名の旅と重なる北欧への旅 wildcat 大学院時代、スウェーデンの障害者関係の本が自宅の本棚の主役になっていた。「この差はなんなんだっ!!」と、読む度に思っていた。この違いの根っこにあるのは何なのだろうと心の底で考え続けていた。その思いをそのまま書評に書いたこともある。今もその思いは、変わっていない。だから、私は、1度しか現地を訪れていないけれど、著者のこの言葉には大いに共感した。 初めて北欧を訪ねたとき、 「日本とは30年くらいの差かもしれない」と感じた。2度目には「3世代くらい経ないと民主主義は育たないかも」とため息をついた。そして、3度目には、「マラソンのトップランナーの背中がもう見えない」。それからは… (全文はここ) ◆障全協(障都連ニュース)5月号 =市橋博障都連事務局長 とかくこうした本は「北欧はいいなあ」で終わりがちだが、本書は、日本の障害者運動に関わる筆者が、観点の違い、制度の違い、生活の違いを素直に表している。じつは私も薗部さんと3度ほど北欧に行っている。ところが私は、ストックホルムなどの素晴らしい街並みと、お酒に目を奪われてしまってまとめていない。今、北欧で出会った人びと、受けたカルチャーショックを思い出している。地球を半周して、改めて日本を考える本でもある。 ◆しんぶん赤旗 5月24日「ほんだな」 PDF 18歳以上は重度障害者も公的な支援を受けて独立。仕事や余暇活動を居場所に人生を楽しみます。知的障害のある人たち対象のパンフレットや、各政党が配る「投票カード」から支持政党を選ぶ「代理投票」で選挙にも参加します。 ◆障害をもつ子どものグループ連絡会ニュース 本の紹介 5月20日 著者が6回にわたり北欧を訪ね、その魅力を紹介する理想的な福祉のあり方を考えるための最適なガイドブックです。 ◆DINF: 障害保健福祉研究情報システム・メールマガジン(第34号) 5月26日 現場からのレポート感覚をそのまま生かしたテキストと随所で紹介される表情豊かな写真。新聞の特集を読んでいるような感覚になる。 統合教育を経て、障害児学校が再評価されている。障害児学校が再評価されているのは、フィンランドでもデンマークでも日本でも同じだそうだ。異なるのは、フィンランドには就学前教育(エシコウル)があり、障害児がどんな学校、学級に進学するか、この場でていねいに検討され、保護者とも話し合われることである。また、デンマークでは、「場の統合」を重視しながら、それぞれの特別なニーズと障害や発達をていねいに検討し、教育実践している。 大規模施設は少なくなっているが必要な人のためには残っていてなくなることはない。大規模住居施設といっても、1棟の単位は「家で自由に暮らす」という感覚を持てる10人以下で運営されている。重い自閉症や知的障害の人達で、8割は言葉でのコミュニケーションは困難で、高齢者も多いという。 ◆全障研神奈川支部ニュース 5月号 デンマークの「仕事・体験センター」の作業療法士・ハーレイさんが、日本の障害者自立支援法のしくみが「理解できない」「デンマークでは障害者の負担がない」「日本の障害者にはまず年金を上げなければならない」と言っていることなど紹介されています。溜息がでるような現実がたくさん書かれつつ、国連の障害者権利条約の方向があらためて大切であることがわかります。 ◆JTBIA(日本脳外傷友の会)メールつうしん NO27 JDの「すべての人の社会」に連載記事に加筆、写真も豊富に読みやすいなっています。日本の現状から、今後私たちはどのような社会をめざすべきなのか考えるのにタイムリーな内容です。 ◆法学館憲法研究所 憲法情報Now 6.1 北欧の福祉が充実していることはよく知られています。ところが、北欧は税金が高いからだ、とよく言われます。国民の税負担と福祉の水準のあり方は経済学・財政学の見地からも慎重な検討が必要だと思われますが、本書は北欧の福祉の現場のリアルな実態を具体的に示しながら、そのあり方を問題提起しています。北欧の福祉を享受している人たち、福祉にたずさわっている人たちの生の声が数多く紹介されています。福祉の本来的なあり方を具体的にイメージさせてくれます。 (全文はここ) ◆全障研「みんなのねがい」7月号 「読み手がいて書き手がある 自著を語る/薗部英夫」 93年から6度訪問。155点の写真とエッセイで優しく希望ある人びとの暮らしを綴りました。いただいた感想が新たな視点と学びの深化を生みだしています。秋には全障研で北欧研修ツアーを企画。発達保障と権利条約の座標軸から考える旅は続きます。 「読みやすいやさしい文章で、本質が書かれています」「心がホッとします」「豊富な写真が良いですね」「歩いて考える文章だがらわかりやすいが、とても弁証法的です」 「インクルージョンをエクスクルージョンとセットで理解することの大切さを感じていたのですが、あらためてそのことの大事さを感じることができました」「あまりにひどい日本の状態を照らす意味でこうした具体的な検証の材料、考える材料を提供してもらえるのはうれしい」「この本のようなわかりやすい形で世界の中にいまある”豊かな暮らし”というものを知らせることはとても大切なことだと思っています。大切に位置づけて普及をがんばってください」 ◆きょうされん ネットショッピングモール「TOMO市場」推薦 「希望が湧いてくる一冊」! ◆しんぶん赤旗日曜版 6月14日号 「本立て」(PDF) 障害者福祉に自己負担という日本のやり方は、北欧では「理解できにくい」と。根底には「みんなは一人のために、一人はみんなのために」という考え方があります。 6月21日号=「応益」の発想自体がありえない ◆障全協新聞5月号「運動に役立つ一冊」 ◆福祉新聞 6月22日「ブックエンド」 ◆飛璃夢FL.C6月号「書籍紹介」 ◆「安曇野つれづれ日記」 6.24 村端浩さん 人間の生活する国・社会の中に、私たちがこうあってほしいと願うささやかでふつうの希望をかなえているところが実在するという確かな希望こそ、この本から受け取った第一のメッセージでした。 彼は「旅すれば旅するほど、民主主義の深さと、個人の思想と倫理と・・・」を痛感すると書いていました。そして、こうした「当たり前のことがあたりまえにできる条件とは何か」という私への問いに「とどのつまりは『教育』(しかし、これが日本では一番困難な課題かも)、そして、民主主義をなす「自治」(これは、身近なところで、つくりあげるしかない)」と書いてくれました。まったく同感です。 ◆「経済」8月号 障害者を「排除しない(インクルージョン)」ことがフィンランドの教育には徹底されていると著者はいいます。 全障研の専従職員として事務局長として長く働いてきた著者にとって、自らの仕事と研究の有り様を捉えかえすための北欧3国、フィンランド、スウェーデン、デンマーク訪問ルポです。障害を持つ人がいきいき暮らす様子が写真と文で紹介されています。 日本の障害者自立支援法について質問されたデンマークの作業療法士のハーレイさんは、「理解できない。デンマークでは障害者の負担はありません」と答えます。重い障害を乗り越えた日本のカップル、正男さんと理香さんの結婚写真の笑顔に、「福祉こそ贅沢」なる言葉の対極にある人間の強さとやさしさを感じます。 ◆「月刊きょうされんTOMO」7月号 評者・立岡晄(きょうされん前理事長)さん 「知りたいことが次々と飛び出してくる」「とことん納得のいくまで見聞し確かめた上で」「カメラマンでもある著者が撮られた多くの現地写真は、読むものを北欧各地に連れて行ってくれる」 全文はここ=PDF ◆「Amazon カスタマーレビュー」 北欧の国々が日本という国のおかしさをわからせてくれる 7.10 なにが自己責任だ。この国はおかしい。絶対におかしい。それはこの本に描かれる北欧の国々の、あまりにこの国とは違う教育や福祉の制度とそれに対する哲学を知るとさらにはっきりする。 個人の人生をどう支えていくかという哲学に基づいた社会の仕組みのすばらしさには眩暈がするほどである。同じ地球上にこのような国があるということはもっと知られて良いはずだ。 全文はここ=web ◆「福祉のひろば」8月号 今月の本棚 日本と北欧の社会福祉には、何故、水準、質にこれほど大きな格差があるのか? 社会保障の財源論議では、必ず消費税増税がセットで語られ、北欧の税金が「高い」ことが引き合いに出される。北欧の福祉を紹介する場合、差違にのみ目を向けるのではなく、日本との差が生まれる背景や考え方に着目しなければならない。北欧が何故、福祉に限らず、高い医療、教育水準の維持に成功しているのか、国民が希望を持てる暮らしを実現しているのか。それは決して高負担がもたらしたものではないことを本書は明らかにしている。 ◆「ノーマライゼーション」9月号 評者・佐藤久夫(日本社会事業大学)さん 数十倍、数百倍の事実と考察がここにコンパクトに集約されているのであろう。 まとめようとすると抽象的になりがちだが、本書は逆。読みやすさと内容の濃さの両立はほとんど信じられないほどである。 本書では、「現場の裁量を認め尊重する」が随所に紹介されている。日本では、それでは公平を損ね無駄遣いになり制度が壊れる、とされる。 日本がこれらから脱却する一つのヒントを見た。(全文はここ=PDF) ◆「月刊ナーシング」9月号 全国障害者問題研究会の事務局長を務める著者は1993年以来6度の北欧視察を経験する。初めは「日本は北欧に30年遅れているかもしれない」と感じたが、訪ねるたびに「とても追いつけない」と感じるようになったという。障害者や高齢者、患者を「弱者or敗者」として切り捨てる国と、公平に遇する国とは、根本的に思想や哲学が違うのかもしれない、と読む側が大いに「考えさせられる」本だ。 ◆福岡県弁護士会 「弁護士の読書」 日本では投票に行かないこと、棄権を勧めるマスコミや文化人が目立ちます。でも、それは結局、現体制を黙って支持しろ、文句も言わずに現体制に従えということなのです。世の中を良い方向に変えるためには、投票所に足を運ぶ手間を惜しんではいけません。 ただ、今のように政権交代、政権交代と中身抜きに叫ばれると、いったい中身の方はどうなってんの、と叫びたくなります。高速道路料金をタダにするとか、1000円にするとかだけが争点ではないはずです。アメリカとの関係をどうするのか、憲法をどうするのか、国の根本についての議論が抜け落ちている気がしてなりません。写真付きの楽しく分かりやすい旅行記でもあります。(全文はここ=web) ◆「福祉のひろば」9月号 薗部英夫「海外社会福祉事情 北欧と日本で考える−なかまといる場(PDF)」 ◆「第一経理ニュース」9月号 「本のひととき」 松村千晶さん これから高齢化を迎える中で、自分ならどう生きたいかを考えさせられるとともに、人の優しさが感じられ、あたたかな気持ちになる一冊だった。(全文はここ(PDF)) ◆「人間と教育」9月号 図書紹介(杉浦洋一さん) 「人間を大切にする社会」「人間を大切にする教育」の豊かなイメージが具体的に膨らむ好著である(全文はここ PDF) ◆「MIMI」125号 MIMIブックレビュー これから障害者権利条約を批准する日本に求められる意識のあり様を考えさせられる一冊(全文はここ PDF) ◆月刊「社会教育」2009.10月号 評者・小林繁(明治大学)さん 福祉の先進国とされるこれらの国々の政策や取り組みについて、いわゆる研究報告書のような形ではなく、筆者が見聞した事柄を具体的にそしてわかりやすく紹介されており、一読して思わずため息をついてしまう。それほど日本との違いをあらためて痛感させられる本である。周知のように、日本は経済的に見れば、いわゆるGDPが世界2位とされるが、本のタイトルにも示されているように、本当の豊かとは、あるいは豊かな暮らしとは何かを否が応でも考えさせられる一冊でもある。(全文はここ PDF) ◆「すべての人びとの社会」2009.9月号 「対抗軸「北欧」を考える」 花田春兆(俳人・JD顧問)さん アメリカナイズからは距離を置いていそうな北欧。そう、タイトルでももうお判りと思うが、本誌出色の連載が、さらに豊富な写真を添えて、より親しめる一冊に纏められた快著 『北欧 考える旅』だった。 愛読者も多かったはずだし、社事大の佐藤先生を始め、克明に読まれて高く評価されている推奨文も、多く眼にすることが出来る。だからここでわざわざ書評など加える必要もないし、やる気も無い。 シンプルで鮮明なカバーが、先ず本書の内容を伝えてくれる。澄んで深く湛えた湖の色を想わせる青の縁どりと、線描きされたやや太目の3人の高校生たちだ。人間万歳(というのはちょっと派手かな?)を象徴するように、頼もしさと、親しさと、優しさをそれぞれに備えた人々の姿だ。それも普段着というより働き着のそれだ。 そして1人でも2人でもなく、3人という数は、社会の構成の原点を示す数ともと取れるし、キャラクターとして表わせる最少数かもしれない。 つまりこれは、思いやりと個性を重んじる、深みを湛えた人々の、飾らない日常生活を通して、誰でもが安心して楽しく、生き続けられる社会を、現実に実感しているという感動が、地味だけれど自然に響きあっている図とも言えよう。 読むというより、開けたページで偶然に、眼に飛び込んで来たものだけでも、結構、刺激にはなってくれる。 ――北欧では、障害があろうがなかろうが、18歳になれば子どもは家庭から独立し、それ以後は社会が責任を持つ―― どうも一見していない者には、信じ難いような基盤が、見事に根付いていればこそ、誰でもが高齢や障害者になる可能性を実感として共有出来て居ればこそ、その備えも共有で築く気にもなれる。それ無しに負担の共有を求めても、世論は流れ去ってしまうだけ。 インクルージョン。場を同じくすることだけが目的では駄目だ、とする明確な指摘に惹かれた。 普通校・普通学級に行けば普通?になれるとばかりの、養護学校反対運動への積年の不満が少し軽くなった。教育の内容を守るために、一番身近な現場限定にしろ、分離は行なわれている。 場よりも、内容・質の重視を意図した教育が、初期の肢体不自由児校では実践されていた。特別支援などと特別に意識したものではないはず。 あちらのパソコンに熱心な校長が、一方で字を書かせることに力を注いでいた。という見学記事が、私に麻布時代の"光明"を蘇えらせた。 全文はここ PDF ◆「リハビリテーション」2009.12月号 小島直子(バリアフリーコンサルタント) 北欧での調査をもとにして、高水準の福祉の実情を事例にして紹介しつつも、日本で常に問題に思っていることは、どこで何をしていても忘れていない。時には日本の事例を取り上げては比較をし、読者に感じている疑問や課題をぶつけてくる。 畑違いの読者への配慮も行き届いている。必要な法律や制度の情報などは、本の下段に注釈として取り上げられており、読者がこの本のテーマに沿った”思考と考察”を始めるための”準備と配慮”は、万全であると感じた。 (略) これから先も、日本に生き続けていく私たちに何ができるか、誰がどのような行動を起こしていけば、状況は変えていけるのか? 読者は知らず知らずに、著者の薗部マジックに掛かり、自然と日本を変えるために立ち上がろうという気にさせる”巧みな技”を持っているようである。私も日が経つにつれて、そんな熱い思いにかき立てられ、思いを行動に変えていこうと気合い十分である。(全文はここ PDF) ●情報 表紙絵の画家・深井せつ子さんが「ラジオ深夜便」で語る “深井せつ子・人生の深呼吸” 2009年10月19日(月)〜22日(木) |
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