障害者自立支援法で子どもの支援はどうなる
障害乳幼児の療育に応益負担を持ち込ませない会/編集
子どもの権利と障害者自立支援法 国連に障害児の声を届けよう を刊行しました! 障害乳幼児の療育に応益負担を持ち込ませない会 茂木俊彦・近藤直子・白石正久・中村尚子・池添素 編 全障研出版部 定価1575円 「子どもの権利」をキーワードに、障害者自立支援法によるさまざまな問題を解き明かし、子どもたちの健やかな育ちをねがう保育者の声もたばねた一冊。この間の全国集会の浅井、茂木記念講演、9.30シンポ内容も掲載。 詳細はここに。 障害者問題研究(35巻3号)が 特集 障害者自立支援法と乳幼児療育の課題 特集にあたって/近藤直子(日本福祉大学) 障害者自立支援法施行後における障害児福祉の課題/中村尚子(立正大学) 発達支援の視点に立った障害乳幼児療育体系の検討/近藤直子(日本福祉大学) 障害乳幼児の療育を受ける権利と児童福祉法/白石正久(大阪電気通信大学) 地域に根ざした療育システムと地域療育等支援事業/藤林清仁(名古屋経営短期大学) 生活と訓練を統合的に保障する療育/坂野幸江(全障研大阪支部) 保護者の声/浅野美子(よかネット愛知) 施設・事業者からの報告 ◎児童デイサービス事業/加藤淳(全国発達支援通園事業連絡協議会) ◎知的障害通園施設/田村智佐枝(宮崎市総合発達支援センター)・脇本俊之(都北学園) ◎肢体不自由児通園施設/岸良至(全国肢体不自由児通園施設連絡会事務局) ◎難聴幼児通園施設/塩出順子(「ゼノ」こばと園) ■第3回国連に障害児の声を届けよう全国集会9.30 に100名こえる参加! 国連に障害児の声を届けよう全国集会、3回目の舞台は大阪。たて長の会場にいっぱい、13都府県100人を超える人びとがつどい、障害者自立支援法を子どもに押しつけることの問題点を討論しました。 今回のテーマは「自立支援法と児童福祉法『改正』を考える」。最初に、中村副代表が、現在、自立支援法と児童福祉法にまたがって実施されている障害児の福祉の問題点と、今後の児童福祉法「改正」の動向について基調報告を行いました。08年度のまとめられる予定の障害児施設再編等、障害児福祉のあり方は、保育・子育て支援策や児童養護施設や児童虐待対策との関連で方向付けられるので、幅広い視野をもつことが重要です。 シンポジウムでは4人の方が報告しました。 ○杉山隆一さん(大阪保育研究所):民間企業も参入できる保育所、定員の125%も可、正規保育士が半分以下でもOK。「小泉改革」が推進してきた規制緩和策によって公的保育制度が危機にさらされています。さらなるねらいは、保育所利用の契約化と利用料の応益負担化にあり、認定こども園を軸にして保育制度の再編がもくろまれています。 ○八田良子さん(鹿児島・児童デイサービス):県の数値目標を上回って現在31ヵ所の児童デイサービス事業が、離島でも早期からの地域療育を可能にしています。しかし、自立支援法になって「休園」も。児童デイに子どもを通わせている親やその他の障がい児・者の親の会がアンケート調査や県、市に対する要望書を提出するなど、途切れることなく運動をしてきた結果、鹿児島市では児童デイの利用料を「恒久的に無料にする」という公約を発表しました。 ○佐々木将芳さん(愛知・放課後):愛知県はそもそも放課後施策がなかったために支援費制度のとき児童デーサービスを利用して放課後活動事業所がたくさんでき、その連絡会も結成されました。児童デイの見直しにより児童デイUになったり日中一時支援事業に移行して事業の継続が危うくなっています。行動援護も実施する事業所が減少。事業内容も市町村による違いも大きくなっているので、現在実態調査をしてます。 ○阪口 興さん(知的障害児施設):今回の「改正」によって全国の知的障害児施設が混乱しています。原則として利用契約制度になったとはいえ、その判断は各児童相談所に任せられたため、すべての子どもが契約となった県、96%も措置制度が適用された県と大きな違いがあります。新規に入所する子どもは契約が多くなる傾向にあります。保護者の負担は平均3万円台。運営上も8割の施設が減収です。私たちは、子どもの権利を守るために、格差のない都道府県の事業で、公的責任をもつ措置制度を継続するべきだと要望しています。 ○海老原功さん(大阪・全障研大阪支部):大阪障連協などと一緒に、府下の障害児通園施設利用児の保護者の負担実態を調査しました(現在324名からの回答を分析中)。大阪では自治体ごとの軽減措置がとられていますが、それでもなお、通園に必要な費用を「捻出するために工夫している」と答えた人が39.5%でした。その内容は「節約」などの支出の抑制が一番多く7割を超えました。肢体不自由通園や難聴幼児通園では施設利用抑制も。「外食や交際費などゆとりの部分を削ったり貯金からまかなうしかない」「ガソリン代が高いため買い物はなるべく徒歩で」「自家用車を手放した」など、自由記述は本当に切実です。 ■応益負担をなくすしかない 参加者からたくさんの発言がありました。「児童デイサービス恒久的無料」を勝ち取った鹿児島市のお母さんの、「保護者の勉強会、行政の人との話し合いを何回も繰り返してきました。どうしてこんなにがんばらなければいけないんだろうと思うこともありましたが、今では行政の方も『障害児にかんする部局の会議は実態がリアルに話されるので活気づく』といってくださいます。まだ、県内市町村間で格差があるので県で『無料化』が実現するようがんばりたい」という発言に会場からは大きな拍手! つづいて京都の「保育・療育をよくする会」のお母さんも、応益負担をなくすための運動に子どもをもつ立場から参加したいと述べました。 大阪の調査では、難聴幼児通園の負担の大きさが顕著でしたが、広島の難聴幼児施設からは「いま通っている保護者は療育の大切さがわかっているから『工夫して』通園を続けるけれど、今年入ってくる子どもの中に費用や契約による利用抑制が始まっていると実感する」と。また奈良の入所施設からは「契約と措置の保護者が一堂に会する保護者会の場で話がしづらくなった。長期に入所している保護者に理解を得るのがむずかしい」など実態が発言されました。ねばり強く要求してもなかなか独自の軽減策を打ち出さない自治体からは各地の成果を聞き、「もうひとがんばり」という思いになったという声も。 ■児童福祉法「改正」を視野に入れ 最後に白石正久副代表が集会のまとめを行いました。 ・障害児施設再編については、三通園施設の「総合化」で、最低基準などのしばりのない児童デイサービスの水準に合わせた統合が図られる危険性がある。 ・自立支援法による障害児福祉の「再編」は子ども全体の福祉の改変につながる大きな問題であることが明らかになった。その中心にあるのが、応益負担と利用契約制度。 ・障害児の福祉を障害者自立支援法のしくみからはずしていくことは、児童福祉全体の課題であり、保育などの幅広いとともに学習と運動の輪を広げていこう。 ・こうした実態を「障害児の声を国連に届けよう」のとりくみに反映させよう。 「障害児の福祉を障害者自立支援法の枠組みからはずしてください」を一致点に、国に対して働きかけていきましょう。 日比谷野外音楽堂でお会いしましょう!翌日は国会議員要請行動もあります。 ■子どもの療育と福祉への応益負担 NO! の声、とどけよう! 9月13日、障害者自立支援法の改善を求める要望書(word添付)を、国会議員と政党(与野党)に届けました。「安倍辞任」の翌日、あわただしく人が動き回る中、池添素事務局長とともに、衆参両院の厚生労働委員、50人ほどを訪問。会のニュースも添えて要望を説明するとともに、特に民主党の議員には「応益凍結法案」の提出を訴えました。 直接、面談に応じてくれた議員もいました。小池議員(日本共産党)は同党が9月6日に厚労大臣に対し「抜本的見直し」を申し入れたさいに「児童に対して障害程度区分の導入はしないこと」の一項目を加えたことを紹介、与党にもしっかり伝える必要がある励ましてくださいました。山井議員(民主党)は「緊迫した国会の中で凍結法案を提出するために、みなさんの声を議員一人ひとりに伝える活動がとても重要。応益負担の問題点は明らかなので与党も対応を迫られている。ぜひ後押しを」と。 みなさん、国会に出向かなくても議員に訴える活動はできます。地元選出の議員や厚生労働委員宛、郵便やファクスで要望書を届けましょう。 (それぞれの議員のホームページに地元や東京の事務所連絡先が載っています) (中村尚子・記) ■第2回「国連に障害児の声を届けよう」全国集会7.1を開きました すべての子どもは「子どもの最善の利益」(子どもの権利条約 第3条) を保障されなければならない! 7月1日、東京都内の会場には各地から70名がつどいました。 記念講演は、茂木俊彦さん(持ち込ませない会代表、桜美林大学)が、「子どもの権利条約と子どもの権利―その歴史と課題」をテーマに講演。 「子どもに関する国際的な努力とその結実の経過」として、子どもの権利に関するジュネーブ宣言(1924)、子どもの権利宣言(1959)、国際子ども年(1979)を紹介し、すべての子どもを対象としたこれらの宣言の意味を解説。障害者の権利に関する宣言(1975)、子どもの権利条約(1989)、国際障害者年(1981)、国連障害者の10年(1983〜92)、障害者の機会均等化に関する基準規則(1993)、障害者権利条約にふれ、権利条約2条「差別禁止」をとりあげ、「障害児のためだけの特別の場は差別だ」などとする論調を厳しく批判。また障害のある子どもの特別なニーズに目を向けること、特別なケアを行う必要性は国際的に確認されている大事なとりくみであることを強調しました。 ■親、職員が訴える切実な実態 フロアーからの発言では、親、児童デイサービス、通園、放課後のスタッフなどが、それぞれの取り組みや思いを交流しました。 「自立支援法になってお金がかかる。負担が重たい」「担当者変更により通帳を2回も開示させられた。おかしい」「軽減措置で条件改善されたが、職員はたいへん。顔がつかれている」などの親の声。 事業者からは「職員の給料が払えなくなるのではないかと不安」「職員が集まらない」「毎日通っていた子が週3日の利用に。週2日は家でビデオ」など発言がありました。 この日の午前中、集会に先立って、同じく「持ち込ませない会」の呼びかけで集まった「障害者自立支援法施行・児童福祉法改正に関する懇談会」では、入所施設や児童相談所からも切実な実態が報告されました。 厳しい現状のなかで、鹿児島市からは「障害児の療育は恒久的に無料!」となったなど力強い発言もありました。 ■9月30日、大阪で集まろう! 閉会のあいさつで、白石正久さん(持ち込ませない会副代表)は、運動の見通しと取り組みとして以下の5点をあげました。 @自立支援法となって、変化しつつある子ども・家庭の生活実態や療育実践上の困難を、具体的な事例とことばで明らかにしていく。 A自治体独自の軽減策、「措置」制度の的確な運用などを、地方自治の本来のあり方として積極的に追究していく。 B介護保険との統合について、反対の意見表明を行っていく。 C施設の種別を越えて手をつなぎ、「療育を守れ」の声をあげていく。 D「守るべき療育とは何か」を、具体的な療育実践の到達点として自前で明らかにしていく。 そして、次の3点を「行動提起」しました。 @9月30日(日)に、「児童福祉法「改正」を考えるシンポジウム」を大阪で開催します。 A9月30日に、自立支援法とその子どもへの適用にあらためて反対し、引き続き自治体の軽減策の策定や継続を求める新しい署名行動を提起します。 B引き続きブックレット『障害者自立支援法と子どもの療育』(全障研出版部)を普及し、あわせて新ブックレット『国連に障害児の声を届けよう』(今秋出版)も普及します。 ■葛飾区、障害乳幼児施設の利用料無料に 東京都葛飾区は、2007年度予算の中で実施する障害者自立支援法関係の利用者負担軽策の中で、通園施設や児童デイサービスを利用する児童の保護者負担分の利用料を全額助成します。これによって、区内の施設のみならず、区外の施設に通園する子どもの保護者利用料負担もゼロになります。 また、法外の通所訓練事業に対する運営助成と利用者負担軽減も実施することになっています。予算総額1億600万円。 →資料(PDF)参照 ■金沢市、保護者のMさんの「施設利用料と医療費負担異議申し立て」 を棄却(2月22日決定) ○応益負担の不合理さを陳述→金沢市、利用者負担軽減など予算化 Mさんの子どもは肢体不自由児施設に通園しています。 Mさんはお子さんと二人暮らし。無職で、収入は特別児童扶養手当などの子どもの手当だけで、月額104,122円です。10月から、施設利用者負担上限15,000円と施設でのリハビリにも上限15,000円がかかるようになりました。 Mさんは次の2点を訴えました。 @生活保護基準以下の生活なのに、施設の利用料が0円にならないのはおかしい。 A他の医療機関で受診・リハビリを受ければ心身障害者医療費助成制度が使えて無料なのに、施設でのリハビリにお金がかかるのはおかしい。→Mさんの陳述(PDF) 1月30日に行われた「口頭意見陳述」では、Mさんのほか、同じく障害をもつ子どもの保護者(Mさんの陳述の2)、弁護士、保険医などの関係者が、障害児の療育や医療に応益負担を導入した自立支援法の違法性を訴えました。 異議申し立てそのものは退けられましたが、以下のような金沢市は改善をしました。 Mさんは、「利用料を負担すると生活保護以下の生活になる」場合の「境界層減免」を受けるために生活保護受給に意志がないにもかかわらず、保護を申請。これによって、2月からの負担は0円になりました。 金沢市の対応 @1割の利用料と保育料との差額を助成する「障害児通園施設の利用者負担軽減制度」を新設(126万円) A障害児施設(医療型)の医療費部分にも心身障害者医療費助成制度を適用 →異議申し立ての「まとめ」(PDF)と「談話」(PDF)参照 ■国連に障害児の声をとどけよう全国集会を東京で開催 子どもの権利を、人間の尊厳を! 2月18日、東京は冷たい雨。会場の日本教育会館は東京マラソンのコースとなり、交通規制もありました。しかし、障害乳幼児の療育に応益負担を持ち込ませない会がよびかけたこの集会には、宮城・埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨・新潟・愛知・京都・奈良・大阪・広島・宮崎・鹿児島などから父母や関係者約60名が参加しました。 小さなとりくみがたくさんの声を集めて国を動かしています。応益負担が子どもの権利条約に明確に違反することを理論的に深め、政府や国連に障害児の声を集中していくことを決意していました。 翌日は16名の代表団による厚労省との話しあいがもたれました。 ■ロマンをもってみんなと元気をわけあって 進行は「持ち込ませない会」の池添素事務局長。同会近藤直子副代表は、「どんなにひどい法律でもみなさんの声がなかったら見直しはなかった。とりわけ子どものことは行政もなかなか把握できていない。国連に声を届け日本政府に勧告させたり、せっかくやるのだからロマンをもって、みんなで元気をわけ合ってとりくんでいきましょう」と開会挨拶。 ■「人間の尊厳」を強調 記念講演・浅井基文さん 記念講演は広島平和研究所所長の浅井基文さんが「子どもの権利条約と障害児の権利」のテーマで行いました。 浅井さんは、「障害のある孫娘を得ていなかったならば、考えねばならない問題をかんがえることができたのか、正直自信がないが、一生懸命勉強しました」と、外務省で多国間条約の締結事務に携われた経験をもとに、「人間の尊厳」をキーワードに、障害者自立支援法、児童福祉法、子どもの権利条約を整理しながら、障害児の権利についてつぎのように語られました(写真 浅井さんのホームページはここ)。 <普遍的価値・人間の尊厳> もっとも大事なものさしは人間の尊厳で、それを具体化したものが人権。理念的、観念的、歴史理解としてだけではなく、障害のある孫娘・ミクをつうじて、自分のものにしている実感がある。自らを貫徹するものを感じる。 日本の社会、人間の尊厳の価値観を我がものにしている人は少ない。みんなが我がものにすることが、障害者が人間の尊厳を確立するために必要不可欠。人間の尊厳を根底に置くと、ものごとの本質が見えてくる。 発達保障の考え方は発達権を明確に提起している。他領域の人にも理解を広げていくことが大事だと思う。 <条約理解の指針・手がかり> @ユニセフによる分類 ・生きる権利、育つ権利、守られる権利、参加する権利 Aルブランの分類 ・子どもとして生きる権利(生存、発達の権利→発達保障と一致する) ・社会の一員である権利(障害児も) ・保護を受ける権利(外からのあらゆる暴力に) ・見解を明らかにする権利(見解表明と表現情報の自由、情報へのアクセス→障害児の権利としてはとくに重要) B国連の分類 ・保健および福祉に第23条障害児が位置づくが、条約のほかの条文にも目を向ける必要がある。 <多国間条約としての条約> ・欧州が主導性をもってつくられてきたことが反映し、アメリカはいまも子どもの権利条約を批准していない。 <日本国憲法・子どもの権利条約・児童福祉法に違反する障害者自立支援法> 自立支援法は、憲法、子どもの権利条約に違反する。ほんとは無効。 応益負担は、市場原理=利潤を最高の価値にするもので、人間の尊厳とは相容れない。憲法13条、14条、25条に違反する。 子どもの権利条約第3条「子どもの最善の利益」に条約違反する。 日本政府は昨年提出すべき第3回報告書を出していない。障害児に焦点をあてた見解を出すのは意味がある。国連子どもの権利委員会は、NGO見解を非常に重視する。 大きく目をひらいてがんばって。 ■切実な参加者の発言 会場の参加者からは発言があいつぎました。 ○子どもたちが子どもらしく生きるための権利は誰が教え、主張し、守っていくのか。それに気づいた人が声を出し続けるしかない。でも、余暇は主張してよい権利だったんだ!(愛知) ○放課後の児童デイでは、月20万円の収入減で一人分の職員人件費に匹敵(神奈川) ○通園に来られない人がほんとに増えた(奈良) ○補装具は深刻。先日車いすで2万円だった(宮崎) ○自立支援法を知らなかったので保護者有志で、勉強会もち、都に請願した(東京) ○喜界島では児童デイサービスが休園となった。すべての地域にデイサービスをとがんばってきたが、県全体で、子どもに差があってはならない(鹿児島) ○療育に「値札」がついてしまった。子どもの利益が金次第になってしまった(広島) ○補装具と医療の軽減はない。きょうだいの家庭に対する援助ない。たいへんなところがますますたいへん(愛知) ○毎日利用の人が週二回に利用制限している(埼玉) ○安全と危険が背中合わせのぎりぎりの介護をしているが、ここであきらめていはいけない(東京) ○どんな子どもも発達する。障害児という子ども、生まれてから大事に大事に育ててきたことにもっとみんなが謙虚にならなければいけない(宮城) ■国連にとっても大きな意味がある 子どもの権利条約で国連に報告書をこれまで2度提出するとりくみを組織してきた世取山洋介さん(新潟大学)もかけつけました。 「国連子どもの権利委員会に、子ども代表団が行って英語でスピーチしたのはインパクトあった。東京都の夜間高校廃止問題では、国連が東京都を名指しで勧告した。 障害児の問題は思っていた以上にひどい。いま国連も新自由主義の影響を受けており、子どもの権利委員会に何といわせるかは世界史的に重要。みなさんの声は大きな意味をもっている」 とアドバイスしました。 今後の運動の提起では、同会中村尚子副代表が、食費軽減、ゼロから18歳までの全体にかかわる費用負担上限改善は、運動の成果であることを確認しながら、今後の焦点として、@障害児施設再編、A障害程度区分、B障害児の福祉サービス全体の再編、C児童福祉法改正をにらみながら、「”子ども”としての施策」を詰めていきたい。また、減免されても境界線の家庭の負担増は大きく、応益負担は矛盾がたくさんでていること、この問題は、すべての障害児の生活と発達に深く関わる問題であることがますます明らかになっているとのべました。 閉会の挨拶で、同会白石正久副代表は、@子どもの権利全体との関係でとらえること、A子どもはやがて大人になる、自立支援法から児童分野を抜けだけでは長い人生を生きていく幸福の問題にはつながらない。子どもの権利の問題として自覚してとりくみましょうとのべました。また、次回を7月1日に開催することが紹介されました。 ■2月19日、厚労省の担当者と懇談しました。 2月19日午後、要望をもって厚労省・障害児関係担当と話し合いました。通園施設の保護者のみなさん、放課後活動のみなさんなど16人が参加。障害児支援係、補装具給付係、厚生労働事務官、児童相談所の4人の係官が対応しました。以下、その内容をまとめます。 【質問事項】 ○障害児施設の再編に向けて、スケジュールや議論になっていることなど、明らかできることを教えてください。 →「3年を目途に」出すことになっている結論は、@都道府県から市町村への「実施主体のあり方」、A施設が実施している事業の整理(「何をするのか不明確な事業、似通っている事業を曖昧にしてきた。利用者が費用を負担する観点からも明確にする必要がある」)。まだ具体的には進んでいない。 Aの検討のための調査を行うプロジェクト事業を実施。[職員の数、開所日数、開所時間]、[直接処遇職員の1週間を追いかけるタイムスタディ。どんな支援をしているのか10分刻みで調査する。各種施設5施設程度] ○障害児を対象とした「障害程度区分」の考え方について、検討していることを教えてください。 →精神障害福祉課の担当だが、具体的にお話しできる内容はない。 @程度区分を「どう使うか」(サービス利用と連動させるのか)、A具体的にどんな尺度になるのか(「0歳と18歳で同じ尺度とはならないだろう」など議論をしているところ) ○新規事業「障害児と親のための『交流の場』」について、具体的な内容を教えてください。 →(通園施設などの)場にたどり着けない人、サービス利用に至らない人を対象にする。既存の場で実施してもよいし、デパートなどを利用することでもよい。利用者負担で通園を断念した人を対象としているのではない。費用は都道府県に降りるので、市町村が手を挙げることになる。 【要望事項】 ○障害児施設の利用者負担の軽減の実施によっても、ちょうど所得区分の境界域の家庭にとって負担増は解消できません。子どもの分野は応益負担ではなく応能負担に戻してください。 →境界域が問題となることは承知しているが、負担上限の軽減策の対象を年収600万円にしたことでカバーできると考えている。 ○補装具について、成長期にある子どもの特性に鑑み応能負担にしてください。また当面、福祉サービス利用との合算制など、補装具の負担を考慮した軽減策をとってください。 →障害児の補装具に関する「取扱規程」を出している。成長等に合わせて、全部作りなおすのではなく、部分的に調整可能な種類のものも開発され、部分的な取り替えも可能になっている。数年に1度の費用負担を念頭においている。 ○通所・入所双方の施設運営に必要な加算制度を設けてください。 →加算は利用者負担にはねかえる。施設の努力を促し、それでも職員が不足して困難であるのであれば、実情をふまえて検討する。 ○「放課後型」児童デイサービスの単価を支援費制度の水準に戻す、地域生活支援事業のなかでの事業を確保できるような方策を行政として示すなど、放課後対策を講じてください。 →地域生活支援事業は、実施する事業の「枠」の取り合いであるが、子どものところの重要性を強調してすすめてほしい。市町村の自由な発想ですすめる部分なので、国が事業内容を指定することは避けたい。 ○障害児施策に十分機能できるよう、児童相談所の業務を改善してください。 →障害の相談などの件数は児童相談所のなかで一番多いが、時間的には虐待への対応に裂かれる。地方交付税対応で児童福祉司を増員する計画(170万人あたり3名増)。 ◆ ◆ ◆ 参加者は、0歳から18歳にいたる間、つまり子どもという大切な時期にある障害をもつ子どもの福祉のあり方を、子どもの権利の無差別平等性と家族を支える視点から見直してほしいと、それぞれに訴えました。特に焦点となったことをまとめました。 ○応益負担による費用負担増は療育の機会を奪う 園では実際に2人の子どもを通園させている人には特別な軽減をしてほしい、「これでは二人目は産めないな」と思ったと、10月からの費用負担増で、たいへんさを実感しているという率直な声が多くだされました。 先の厚労省が発表した「実態調査」でも通園施設で4.77%の利用抑制が生じていることが明らかになっています。この数字の背景には、ほんとうは毎日通いたい、子どものためには通った方がいいと思っても、通園をあきらめている子どもと親の実態があるのです。 「お友だちは、5日通園していたのを4日にしました。負担を少しでも減らすため1日はおうちで母親と過ごすことにしたと言っています。生活を変えることは自閉症の子どものとって納得のいくことではありません」「『子どものためだから毎日通園しよう』としている親がかえって周りから浮いているような気持ちになる」など、「4%の利用抑制」を実態として知ってほしい、実際はこの数字以上ではないかと思われるので、もっときちんと調べてほしいと訴えました。 ○給食は療育の一環 「白いご飯だけしか食べなかった。園の給食を食べない日が1年続いた。2〜3年かけて少しずつ食べられるものが増えていく。食べられなくても650円というのは保護者も納得いかないし先生方も苦しい」「食事で悩んでいない親はいない。給食は療育の一環であるという考え方にたって実費負担はなくしてほしい」「食べるだけではない。コミュニケーションの一環としての取り組み」など、厚労省に考え方の転換を迫りました。 ○閉所する放課後活動も 千葉県の実態が話されました。 県内ですでに3ヵ所が閉所した。厚労省は市町村の主体性に任せると言うが、複数の自治体からの利用があり報酬が異なるので、事業所の毎月の事務手続きはとてもたいへん。「日中一時預かり」という発想の「預かり事業」ではなく、保護者、きょうだい児も含めた家族への総合的な支援であり、誇りをもっていやっている。しかし、事業の維持で追われる毎日だ。 児童デイサービスUの単価が上げられないのであれば、放課後生活を保障の事業を新規で認めてほしいと重ねて訴えました。 ○家族・子育てを支える総合的施策を(この点については係が異なるので回答はありません) 会に寄せられた次のような声をもとに<障害児施設等利用児のきょうだい児の保育所・幼稚園の利用料減免>を訴えました。 今年4月から通園施設に母子通園。通園のため妹(9カ月)は保育所入所予定 保育料月額4万円の予定。「保育園同士だけでなく、幼稚園など就学前の幼児向けの通園施設も含めて2人以上通う場合は、保育料の2人目割引が適用されるらしいという話を耳にしました。市に確認してみると、なんと、子どもが通う予定の児童福祉センターは乳幼児の通園施設から除外されていて、保育料の2人目割引は適用されない、とのことでした。理由は、厚生労働省からの通達で、「福祉センター等は含まない」ということになっていたかららしいです。」 参加者も同様の実態について発言しました。出席いただいた係官はこうした実態はまったく知らなかったとのことですので、強く要望しました。 さらに、通園施設の通園に片道1時間かかるため、小学校1年生のきょうだい児の学童保育入所を申し込んだところ、「働いていないからダメだ」といわれたというお母さんも。障害をもつ子どもを育てていると、かえって福祉から見放されているような実感があるという声も聞かれました。 障害のある幼児をつれて自家用車で施設まで1時間、通園施設のバス停まで1時間といった人もいる。「幼稚園や保育所が車で1時間かかりますか。費用面はもちろん、精神的、肉体的にもたいへんです。『子どもとしての支援』を考えてください」園の保護者会を代表しています! という保護者の訴えでした。 厚労省には、12月26日に費用の軽減策を打ち出したことをもって「終止符」としようという考えがあるのかもしれません。しかし、「応益負担」がもたらす諸問題は、障害のある子どもを育てている家庭への支援策がまったく不十分であることを浮き彫りにしています。子育て支援の担当部局、さらには文科省とも協議して、総合的な施策を打ち出してほしいと要望しました。 (文責・中村尚子) ■池添素「持ち込ませない会」事務局長 国会で意見陳述 12.6衆議院厚労委員会「子ども」の問題が焦点に 12月6日(水)衆議院厚生労働委員会で参考人招致があり、「持ち込ませない会」の池添事務局長(全障研副委員長)、日本障害者協議会の藤井常務理事(きょうされん常務理事)など6名が意見陳述しました。 強行実施後、1年もたたないわずか8か月で、実質見直しのための集中審議は、「異例中の異例」といわれます。 議論では、■福祉と市場原理導入、■応益負担、■「子ども」の問題が焦点となりました。 意見を述べる池添さん 午後2時からは厚労省記者クラブで、池添さんと奈良から上京した篠原さんたち3名のお母さん(1か月で署名を22097筆集めて厚労省に提出)が記者会見(9社取材)を行い、10分間の予定を大幅にオーバーする45分間つづきました。 厚労省記者クラブで会見するお母さんたち 4人は、記者からの質問「国会での手応えはあったか?」に対して、「子どもの問題が、正面にはじめて据えられた感じがした」。「サービスに対してお金を払うことに対してどう考えるか。サービスの質を高めるために費用を払うメリットはあるか?」の質問には、池添さんが、「無償であると申し訳なさを感じて意見が言えない」ではなく、それは子どもたちの権利としてとらえ、子どもが言えないから、その分親はどんどん意見をのべるべきこと。権利の意識の問題ではないでしょうか」とこたえました。報道によれば、午後からの厚生労働委員会で柳沢厚労大臣が「与党側の意向を踏まえ、今年度の補正予算案と来年度予算案で何らかの措置を検討したいという考えを示しました」。小さな小さな障害者・関係者の声が、大きな世論となって、国という大きな山が動き始めました。 ●池添素さんの国会意見陳述 ●衆議院国会中継ライブラリー ■2006年のとりくみの記録 ■2005年のとりくみの記録 |
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