障害者問題研究52巻4号 障害のある人のケアする権利/読む会情報

「障害者問題研究」52巻4号 特集=障害のある人のケアする権利

 


JAPANESE JOURNAL ON THE ISSUES OF PERSONS WITH DISABILTIES
ISBN-984-4-88134-226-8 C3036 定価2750円(本体2500円+税)
特集 障害のある人のケアする権利


特集にあたって
 /田中智子(佛教大学)


障害のある人のケアする権利の到達点と社会的課題
 /深谷弘和(天理大学人文学部社会福祉学科)・田中智子(佛教大学社会福祉学部)
 障害のある人のケアする権利については,いまだに差別や権利侵害が存在しており,そこには障害のある人とケアをめぐる交差的な問いがある.エヴァ・キテイは,これまでの政治哲学における平等概念では,私たちが誰かに依存しなければ生きていない存在であることが無視されてきたと批判し,「つながりに基づく平等」を主張する.障害のある人がケアされながら,「ケアする存在」として位置づいた制度の整備が求められる.


知的障害をもつ母親の育児
母子生活支援施設における養育支援を視野に
 /藤原里佐北星学園大学短期大学部)
 子どもの養育者である親に知的障害があり,生活,子育て全般に支援が必要な場合,誰がどのように,その家庭に関わることができるのだろうか.障害者のグループホームに入所しての共同生活や,親族の援助に拠る暮らしを選択する例が散見される.知的障害者のライフステージに,結婚や妊娠,出産,育児というライフイベントがあることをあたりまえのこととし,必要な支援を拡充していく段階にあると思われる.本稿では,母子生活支援施設の調査を通して,障害のある母親がケアを受けながら育児を担い,母子が分離されずに生活する可能性を検討する.児童福祉施設である母子生活支援施設は,様々なニーズをもつ養育者をケアし,子育てを支援してきた実績がある.施設に入所し,生活が安定する中で,母親の障害が顕在化することも想定される.障害をもつ母親が育児支援を得ることは,子どもの福祉の向上にもつながると考える.


強制不妊手術の実態解明は道半ば
 /森 敏之京都新聞記者)
 優生保護法下で少なくとも約 2 万 5 千人に行われた強制不妊手術の実態解明は道半ばである.理由は三つある.第一に,被害者や家族,手術に関与した医療者や福祉施設職員ら当事者の多くが沈黙していること.第二に,病状や生活状況,手術理由が記載された当時の一次資料の大半を都道府県が既に廃棄したこと.第三に,現存するわずかな一次資料について,報道機関や研究者が情報公開請求しても,都道府県が「プライバシー保護」を名目に伏せる必要のない情報まで「黒塗り」で伏せていることが挙げられる.本稿では,最高裁判所が 2024 年 7 月,国に対し,被害者への賠償を命じた強制不妊手術問題の概要を振り返った後,被害者の証言を通して人権侵害の実態の一端を明らかにする.その上で,京都新聞社が滋賀県に情報公開を求めた裁判で「 8 割開示」を命じた一審と二審の判決を踏まえ,都道府県の恣意的な不開示判断が第三者による検証を阻んでいる現状を指摘する.


優生保護法と障害者の子育て
当事者の語り合う会の取り組み
 /小森淳子(岐阜協立大学非常勤講師


知的障害者の結婚と子育て
子どもは未来につなげてくれる
 /尾上真由美(京都府・社会福祉法人よさのうみ福祉会)


障害のある私がしたい子育て
 /岡本幸恵(京都府在住)


聞こえない両親の子育て
 /池田倫子佛教大学 研究員


連載 実践に学ぶ
特別支援学校小学部の実践
“楽しい”を“いっぱい”!要求で踏み出すCちゃんの一歩
 /佐々木 健太(滋賀県・野洲養護学校)

【佐々木実践に学ぶ】
子どもの心に寄りそい,子どもと共につくる実践
 /黒田吉孝(滋賀大学教育学部 元教員)

障害者の暮らしの場の実践
暮らしの場で利用者を見送ること──Aさんの「生きる」に寄り添って
 /松﨑空木(埼玉県・みぬま福祉会 太陽の里)

【松﨑実践に学ぶ】
当たり前に生きる・死ぬ権利,それを支える社会的支援
 /田中智子(佛教大学)


連載/ワイドアングル
暮らしの場の選択の機会は保障されているか 実態調査から考える
 /周 英煥(NHK報道局社会部)


動向
「障がい児及び医療的ケア児を育てながら働く親の会」のあゆみ
 /工藤さほ(同会会長)


書評 清水寛著『詩人教師・近藤益雄 その生涯──知的障害のある子たちとともに』
評者 河合隆平(東京都立大学)


第52巻総目次


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▶ 「読む会」情報   詳細案内はこちら(PDF)
日時=4月28日(月)19時~21時zoom
【話題提供】
障害のある人のケアする権利の到達点と社会的課題 深谷弘和さん
ケアする経験からの報告 岡本幸恵さん
ケアされる経験からの報告 池田倫子さん 
【参加者の意見交流】
参加申込は
 https://form.run/@shoumonken52-4

2025年02月19日