障害者問題研究52巻1号 特集=在宅医療を受ける子どものトータルケア
「障害者問題研究」52巻1号 特集=在宅医療を受ける子どものトータルケア
JAPANESE JOURNAL ON THE ISSUES OF PERSONS WITH DISABILTIES
ISBN-984-4-88134-166-7 C3037 定価2750円(本体2500円+税)
特集 在宅医療を受ける子どものトータルケア
特集にあたって/細渕富夫(長野短期大学)
地域で医療を受ける子どものトータルケア
/栗山宣夫(育英短期大学)
本論は,自宅等で医療や医療的ケアを受けている,あるいは通院して医療を受けているなど,地域で医療を受けている子どもの多様性に応じたトータルケアとは何か,どのように検討されるべきであるのかについて示した.トータルケアとは多職種による支援ということに留まらない.「トータル」には子どもを丸ごと受けとめるという意味と,支援者同士が互いに補完し合っていくという意味がある.この「2つのトータル」の見地から事例をあげ,その中で「ニーズの高さ」という言葉が異なった解釈をされている状況も示し,この異なる解釈から生じる問題を克服していくためには他職種とのコーディネートの有無が影響すること等,支援の実現に向けた重要なポイントについて述べた.
難病の子どもと家族を支える多職種による支援と連携 ラ・ファミリエの活動より
/檜垣高史(愛媛大学大学院医学系研究科、NPO法人ラ・ファミリエ)・太田雅明(愛媛大学大学院医学系研究科)・赤澤祐介(愛媛大学大学院医学系研究科)・樫木暢子(愛媛大学大学院教育学研究科)・西朋子(NPO法人ラ・ファミリエ)
「子どもたちが,病気を乗り越えて,成長して発達して,自立していくことは,小児医療をはじめ,小児保健・福祉・教育分野・就労分野の関係者など,子どもに携わるみんなの共通の願いです」.慢性疾病や難病の子どもとその家族を支援するためには,多職種による連携(医療,ソーシャルワーカー,地域資源,心理,教育,経済的支援も含めた就労支援などの連携)が必要である.病気を乗り越えながら,成長・発達して自立していくためには,多くのハードルがあるため,ライフステージに合わせた切れ間のない支援体制を構築して,多領域・多職種・専門職が実質的に連携して,支援の必要性を予測し,専門家として積極的に関わっていくことが重要である.その具現化に向けて,認定NPO法人ラ・ファミリエにおける,小児慢性特定疾病児童等自立支援事業の取り組みの一部を紹介する.ラ・ファミリエに相談すれば何とかなるかも…といわれるような「地域子どものくらし保健室」を目指している.
小児がん経験者の生活と復学支援
/瓜生英子(国立国際医療研究センター病院 小児科)
小児がんでは,疾患自体の特性や治療,長期入院が,治療中のみならず治療後の長期にわたり,小児がん経験者の学習に影響を及ぼすリスクがある.小児がん経験者がスムーズに復学を行えるよう,診断・入院の早期から教育に関する課題に取り組む必要がある.復学できる状況となった場合には,退院前に,がんそのものや治療に伴う身体的合併症や心理状態により,学習・学校生活に影響しうるリスクにはどのようなものが予測されるか,復学支援会議の場で情報を共有し,多職種による支援につなげる.復学には,当事者である小児がん経験者が主体的に課題に向き合うとともに,家族と医療者,院内教育を担当する特別支援学校等と復学後の学校が,治療中から治療後,将来の自立までを見通して長期にわたり連携・協働し支える必要がある.
報告
障害が重い青年の在宅支援の歩み
/理学療法士 坂野幸江(大阪府・訪問看護ステーション非常勤職)
報告
地域の病気の子どもの支援 ネフローゼ患者当事者として支援に携わって
/三好祐也(認定NPO法人ポケットサポート 代表理事)
報告
保育所・幼稚園における医療的ケアの実際と課題
/下川 和洋(特定非営利活動法人 地域ケアさぽーと研究所・理事)
報告
小児がんの子どもの退院後へのつなぎとその生活を支えるもの
/佐藤比呂二(元都立特別支援学校教員、都留文科大学特任教授)・白﨑翔吾(東京都立墨東特別支援学校 いるか分教室OB)
連載/実践に学ぶ
【報告】小学校特別支援学級の実践 妙義山とぼく
子ども自身の力で何かをつかむとき
/松本綾乃(群馬県・安中市立安中小学校 教諭)
【松本実践に学ぶ】子どもの事実から実践をつくる
/品川文雄(元 障害児学級教員)
連載/実践に学ぶ
【報告】地域の障害者運動の実践 障害者の家族とともに歩んで50年
川口市民の会の歩みと取り組み
/久遠貞志(埼玉県・障害者の生活を高める川口市民の会 事務局長)
【久遠実践に学ぶ】地域の障害者運動が育ててきたもの
/塩見洋介(NPO法人 大阪障害者センター)
連載/ワイドアングル 第25回
ノーモア・ミナマタ第2次訴訟とその意義 すべての水俣病被害者の救済のために
/ノーモア・ミナマタ第2次熊本訴訟弁護団 中島潤史(はみんぐ法律事務所 弁護士)
動向
文部科学省通知4文科初第375号(4.27通知)が特別支援学級に与えた影響
第1年次としての2023年統計の検討
/越野和之(奈良教育大学)
図書紹介
日本障害者協議会(JD)編『障害と人権の総合事典』
/中村尚子(NPO法人 発達保障研究センター)
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▶ 「読む会」情報です
日時 2024年7月11日(木)19:00~21:00/zoomzoomミーティングによる開催
話題提供 小児がんの子どもの退院後へのつなぎとその生活を支えるもの
白﨑翔吾さん(東京都立墨東特別支援学校いるか分教室OB)
佐藤比呂二さん(元 都立特別支援学校教員、都留文科大学特任教授)
参加者の意見交流
参加申込は https://form.run/@shoumonken52-1
参加費無料です。お手元に本号をご用意ください。