障害者問題研究52巻2号 障害児保育の半世紀-制度と実践の課題/読む会9月27日

「障害者問題研究」52巻2号 特集=障害児保育の半世紀 -制度と実践の課題

 


JAPANESE JOURNAL ON THE ISSUES OF PERSONS WITH DISABILTIES
ISBN-984-4-88134-196-4 C3037 定価2750円(本体2500円+税)
特集 障害児保育の半世紀 -制度と実践の課題


特集にあたって
/井原 哲人 白梅学園大学


こども家庭庁創設・異次元の少子化対策と保育
子ども人口の減少局面における保育政策の動向
/逆井 直紀 保育研究所・全国保育団体連絡会
 1990年代,保育政策は,女性労働力活用のために保育所積極活用策へと転換が図られた.社会福祉基礎構造改革により福祉は利用者と事業者との直接契約方式に切り替えられたが,2015年度からの子ども・子育て支援新制度でも,保育所は児童福祉法24条1項にもとづく公的責任が維持された.その一方で,条件の異なる多様な保育の受け皿が併存した.2023 年度にこども基本法等が施行,こども家庭庁が創設され,2024年からこども未来戦略が始動したもとでの保育政策では,保育士の配置基準の若干の改善があり,子どもの権利保障を拡充する兆しはあるものの,政策の基調は依然,規制緩和中心の新自由主義的な路線である.特に,保護者の就労の有無を問わず柔軟に一定時間だけ6ヵ月~2歳までの子どもを預かる「こども誰でも通園制度」は,一時託児の市場化の恐れがあり,多方面から警鐘が鳴らされている.


子どもの発達を保障する保育目標・保育内容と保育実践の創造
/藤野 友紀 札幌学院大学人文学部人間科学科
 現行の「保育所保育指針」は幼児教育のグローバル・ガバナンスの影響を受けて,小学校教育との接続の視点を明確に打ち出している.その具体化が「幼児期までに育ってほしい姿」である.個人の認知能力や非認知能力の育成を保育目標とし,その達成に向けて保育の「質」を上げていく発想は,子どもを「人材」とみなし,保育から創造性を奪う危険
性を孕んでいる.子どもの発達を保障することは,子どもの「能力」の開発と同義ではない.保育は目の前の子どもの願いを探ることから出発する.子どもの願いを踏まえて保育目標と保育内容をつくりだし,新しい価値を共有する.この保育の創造性が守られてこそ,子どもの発達は保障される.


1970年代の名古屋市における障害児保育制度導入の歴史
/藤林 清仁 同朋大学社会福祉学部社会福祉学科
 1974年に「障害児保育実施要綱」が策定されると,愛知県名古屋市においても障害児保育が制度化されていった.名古屋市では,民間保育所において障害のある子どもの受け入れが行われていた.その実践があったため,民間保育所を対象にした人件費補助制度が先に始まった.公立保育所への障害児保育補助制度においては,労働組合も議論に参加して制度をつくりあげていった.


実践報告
チームで保育をつくる
アシタモ ホイクエンニ イキタイ
/岡本 史子 滋賀県・大津市立 保育園

実践報告
主体性を育む保育
水頭症Yくんのモウイッカイに気づいて
/鈴木琴葉、谷沢昌子 京都府・社会福祉法人 保健福祉の会 洛西保育所

実践報告
職員集団としての力量形成と保育実践の発展
/小林 孝生 神奈川県・社会福祉法人あおぞら理事,あおぞら菅田保育園園長

実践報告
子どもの姿を一緒に考える保育園への施設支援
/寺田 有紀 北海道・社会福祉法人 楡の会


連載/実践に学ぶ
【報告】小学校通級指導教室の実践
互いに課題に向き合う通級の先輩後輩
/桜井 梓 大阪府・小学校通級指導教室

【桜井実践に学ぶ】
働きかけつつ内面に近づく
──子どもたちをつなぐ通級指導教室
/大阪府・小学校通級指導教室 藤木 桂子


連載/実践に学ぶ
【報告】放課後等デイサービスの実践
「堤防がいい!」,自ら意見を変えたカケル
実践しつつ,子どもの内面に近づける放課後実践の魅力
/放課後等デイサービス指導員 花木 正斉 鹿児島県・社会福祉法人麦の芽福祉会 学童支援ゆめの森

花木実践に学ぶ
地元生活に根ざした,人間としての豊かさの追求
/ゆうやけ子どもクラブ 村岡 真治


連載/ワイドアングル 第26回
日本高齢者人権宣言の意義と展望
国際動向を踏まえた高齢者の人権保障の実現を
/鈴木 靜 愛媛大学法文学部


動向
人口問題,人口政策を考える
/友寄 英隆 労働者教育協会


図書紹介
張 貞京著
『高齢期を生きる障害のある人──人とつむぎ,織りなす日々のなかで』
(全障研出版部2023年)
/黒川 真友 滋賀県・社会福祉法人おおつ福祉会

 


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▶ 「読む会」情報
日時 2024年9月27日(金)19時~21時 /zoomミーティングによる開催
■ 障害のある子も含めた地域の保育は今どうなっているのだろうか。
■「こども未来戦略」「10の姿」「誰でも通園」などの政策は子どもの権利を
保障するの?
■子どもの発達を保障する保育実践を創造するには?
【話題提供】こども家庭庁創設・異次元の少子化対策と保育
 逆井直紀さん(保育研究所、全国保育団体連絡会)
【参加者の意見交流】
○参加費無料。お手元に当該号をご用意ください。
○つぎのフォームより参加申し込みをお願いします。
 https://form.run/@shoumonken52-2

2024年09月02日